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15.甘やかしと言う名のお仕置き*
火に油
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***
修太郎に突然肩を掴まれた日織は、その手の力強さに思わず眉をしかめる。
「しゅ、たろぉさっ、痛いです」
抗議の声を上げたら「あっ、すみません」とすぐに力を緩めてくれたけれど、離す気はないらしい。
「あ、あの……」
たかだか呼び名ですよ?と続けようとして、ジロリと恨めしげに見つめ返された日織は思わず言葉に詰まって。
「こ、子供の頃からそう呼ばれていたので……えっと、ぎゃ、逆に違う呼び方で呼ばれることが……その、そ、想像つかないのですが……」
言葉を選びながら恐る恐る言えば、「彼は日織さんが結婚されたことはご存知なんでしょう?」と畳み掛けられて。
「……はい」
と答えたら「でしたらこれを機に〝塚田〟で呼んでもらえばいい」とどこかで聞いたことのある提案をされてしまった。
(あ、これ、十升が一斗さんに言ってた言葉なのです)
そう思い出した日織は、思わず「羽住くん、すごいのです! 修太郎さんのこと、よく分かっていらっしゃるのです!」と感嘆の声を漏らしてしまって。
修太郎に「何故ここで彼?」とジロリと睨まれてしまう。
(ひゃわわっ。火に油を注いでしまいましたっ!)
慌てた日織は何とか現状を打開しようと模索して――。
「わっ、私は修太郎さんが大好きなのですっ」
言って、自分のすぐ目の前にひざまずいた修太郎の頬にそっと触れる。
話をぶった斬っていきなりそんなことを言ったのだ。
いくらその内容が修太郎にとって舞い上がってしまうぐらい嬉しいものだとしても、さすがに戸惑われるのは当然なわけで。
「な、何をいきなり――」
日織の肩から手を離すと、彼の頬に触れた手を包み込まれて、探るような視線でじっと見つめられてしまう。
「あ、あのっ、私……、一斗、えっと……は、羽住くんのお兄さんと一緒にお仕事をさせて頂いて実感したのです。雰囲気は何となく似ていらっしゃる気がしたお二人ですが、私が大好きなのはやっぱり修太郎さんお一人だ、って」
そこでそっと身を乗り出すと、日織は修太郎の唇に軽く自分の唇を触れさせてみる。
「修太郎さんは……私が他の男性に頭を撫でられたりしても平気ですか?」
口を開けば吐息が皮膚を掠めるぐらいの至近距離で、日織は大好きな修太郎の眼鏡越しの黒瞳をじっと見つめた。
「平気なわけないでしょう!」
修太郎はそんな日織の質問に即座にそう返してから、ハッとしたように「まさかあの男に頭を撫でらせたりしたんですかっ⁉︎」と日織を見つめ返してくる。
「――ご、ごめんなさい、一度だけ」
言ったら修太郎の顔がみるみるうちに歪んだのが分かって、日織は慌てて言葉をつむぐ。
「あのっ! でも嫌だったのでやめてくださいってすぐにお願いしたんです。それで――」
日織はそこで修太郎におでこをコツンとすり寄せて、
「同じ質問を彼にもしてみたんです。そうしたら――」
修太郎さんとは全く違うお答えが返ってきてホッとしたのです、と話したら修太郎から「意味がわからないのですが?」と言いたげな視線を送られた。
修太郎に突然肩を掴まれた日織は、その手の力強さに思わず眉をしかめる。
「しゅ、たろぉさっ、痛いです」
抗議の声を上げたら「あっ、すみません」とすぐに力を緩めてくれたけれど、離す気はないらしい。
「あ、あの……」
たかだか呼び名ですよ?と続けようとして、ジロリと恨めしげに見つめ返された日織は思わず言葉に詰まって。
「こ、子供の頃からそう呼ばれていたので……えっと、ぎゃ、逆に違う呼び方で呼ばれることが……その、そ、想像つかないのですが……」
言葉を選びながら恐る恐る言えば、「彼は日織さんが結婚されたことはご存知なんでしょう?」と畳み掛けられて。
「……はい」
と答えたら「でしたらこれを機に〝塚田〟で呼んでもらえばいい」とどこかで聞いたことのある提案をされてしまった。
(あ、これ、十升が一斗さんに言ってた言葉なのです)
そう思い出した日織は、思わず「羽住くん、すごいのです! 修太郎さんのこと、よく分かっていらっしゃるのです!」と感嘆の声を漏らしてしまって。
修太郎に「何故ここで彼?」とジロリと睨まれてしまう。
(ひゃわわっ。火に油を注いでしまいましたっ!)
慌てた日織は何とか現状を打開しようと模索して――。
「わっ、私は修太郎さんが大好きなのですっ」
言って、自分のすぐ目の前にひざまずいた修太郎の頬にそっと触れる。
話をぶった斬っていきなりそんなことを言ったのだ。
いくらその内容が修太郎にとって舞い上がってしまうぐらい嬉しいものだとしても、さすがに戸惑われるのは当然なわけで。
「な、何をいきなり――」
日織の肩から手を離すと、彼の頬に触れた手を包み込まれて、探るような視線でじっと見つめられてしまう。
「あ、あのっ、私……、一斗、えっと……は、羽住くんのお兄さんと一緒にお仕事をさせて頂いて実感したのです。雰囲気は何となく似ていらっしゃる気がしたお二人ですが、私が大好きなのはやっぱり修太郎さんお一人だ、って」
そこでそっと身を乗り出すと、日織は修太郎の唇に軽く自分の唇を触れさせてみる。
「修太郎さんは……私が他の男性に頭を撫でられたりしても平気ですか?」
口を開けば吐息が皮膚を掠めるぐらいの至近距離で、日織は大好きな修太郎の眼鏡越しの黒瞳をじっと見つめた。
「平気なわけないでしょう!」
修太郎はそんな日織の質問に即座にそう返してから、ハッとしたように「まさかあの男に頭を撫でらせたりしたんですかっ⁉︎」と日織を見つめ返してくる。
「――ご、ごめんなさい、一度だけ」
言ったら修太郎の顔がみるみるうちに歪んだのが分かって、日織は慌てて言葉をつむぐ。
「あのっ! でも嫌だったのでやめてくださいってすぐにお願いしたんです。それで――」
日織はそこで修太郎におでこをコツンとすり寄せて、
「同じ質問を彼にもしてみたんです。そうしたら――」
修太郎さんとは全く違うお答えが返ってきてホッとしたのです、と話したら修太郎から「意味がわからないのですが?」と言いたげな視線を送られた。
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