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6-4.焼けぼっくいに火はつくか?

明らかにおかしい

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 そんなことを懸念しながらそこまで話して、通話口を押さえながらくるみの耳元。「俺、鏡花きょうかを捕まえて家に帰して来るけん、くるみちゃんはここで良いええ子して待っちょってくれる?」とささやいた。

 今鏡花に話した言葉で、てっきり一緒に行けると思っていたんだろう。
 くるみは一人にされると知って、一瞬だけ不安そうにギュッと実篤さねあつの服を握って。
 それでもすぐに気持ちを切り替えたみたいに気丈にもコクンとうなずいた。

 それを見た実篤は、胸がギュッと締め付けられて、急きょ路線変更を余儀なくされる。

「やっぱり一人にしちょくんは不安じゃわ。外に出るん、今は怖いかも知れんけど俺が守るって誓うけん。ごめんけど一緒に来てくれる?」

 小声で落とされた実篤の言葉に、くるみがパッと瞳を輝かせた。

(俺が一緒にりゃあ、もし途中で鬼塚やつ出会でおーても何とかなるじゃろ)

 とりあえず、今は一刻も早く鏡花を捕まえることを優先しよう。
 鏡花さえ無事だと分かれば、きっとくるみも心から安心出来るはずだから。

 くるみと手を繋いで、たったいま入室したばかりの一三〇一号室を後にしながら、実篤はそう思った。



***



 兄の指示通り電話を繋げたまま、周りに気付かれないよう、心の中で密やかに小さく吐息を落とした鏡花きょうかだ。


 と言うのも――。





 くるみから離れて御手洗いに行って、さぁ戻ろうと思った矢先、見知らぬ――いや、どうやら名札から察するに同窓生のようだから本当に知らないわけじゃないかも知れないけれど――男三人に取り囲まれた。

 これが、三人ではなく一人ならば「きゃ~♥ 言い寄られる予感⁉︎」とか喜べたかも知れないけれど、三人一気に、は明らかにおかしい。

 鏡花だって馬鹿じゃない。
 すぐに意図的に足止めされていると勘付いた。

 自分一人だけなら強い態度に出て振り切るのも有りなのだが、会場内にくるみを残してきている。

 下手なことをしてくるみに何かあったら、実篤さねあつに合わせる顔がないではないか。

 それに、(もしかしたらくるみちゃん目当てでの足止めかも知れん)とも思った鏡花は、何とか会場に戻ってくるみと合流したくて堪らなかったのだけれど――。

 敵も、三人ともなるとさすがに手強くて。
 何とかして、どこかで忠犬よろしく「待て」をしているはずの愚兄と連絡が取れんもんじゃろうかと歯痒い思いの鏡花だ。

 それにしても――。

 栗野家くりのけの男たちは一八〇センチないからそんなに威圧感がないけれど、コイツらみんな一九〇センチ近くない? デカすぎじゃろ!と、壁のような体躯にイライラが募る。
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