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■特典②『花々里の瓶詰め』

元に戻す方法2

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「さて花々里かがり久遠くおんさんの話ではね、キミが飲んだ百花蜜ひゃっかみつの発酵飲料の残り全量をキミに注ぎかけてから、その小瓶の縁ギリギリいっぱいまで40度ぐらいのお湯を入れれば……キミは晴れて元の大きさに戻れるんだそうだ」

 言って、頼綱よりつなが過日あのお店で見かけたアンティーク風の牛乳瓶くらいの小瓶を見せてくれて。瓶の中で半量程度の液体が揺れていた。

 40度というとお風呂のお湯ぐらいかな。
 あ、でも小瓶の中身を先に掛けるって言ってたから……もしかしたら冷たいかも。

 でも〝危険〟と言うほどのことではないよね?


 ソワソワと色々考えて、はたと気がつく。

 あのトロリとしたのを頭から注ぎかけられるってことは…服も身体もきっとドロドロになっちゃう。

 だから頼綱、途中で着替え、用意してくれたんだ。

 年上だからかな。
 本当に思慮深いところがあって感心しちゃう。


「先に風呂に湯を張ってくるから待っておいで」


 40度のお湯も、ホテルの給湯温度をそう設定してお風呂に湯はりすれば解決するよね。

 頭いいなぁ。

 それに――。
 多分処置後の私には入浴が必要だろうし、一石二鳥だ。


 テーブルの上、瓶が転がって落っこちないよう、頼綱のスーツの上着に包まれて置かれた私は、花畑の中に座り込んであれこれ想いを巡らせる。

 と、浴室から戻ってきた頼綱が、私を真剣な眼差しでじっと見つめてきて言うの。


花々里かがり、実はさっきの方法にはもう少し続きがあってね、それを言うときっとキミは不安に感じると思うんだけど」

 頼綱よりつなにしては歯切れの悪い物言いに、私はにわかに不安になる。

「さっきこの瓶を湯で満たすって言ったよね?」

 頼綱の指が瓶の側面に触れてきて、私は思わずそこへ中から手のひらを重ねるようについて、小さくうなずいた。

「満たしたあとでね、フタを……上のらしいんだ」

 その言葉に、私は瞳を見開いた。

 フタを……し直す?
 お湯がの状態で?
 空気のない環境でフタなんて閉められて、私は溺れ死んだりしないんだろうか。
 元の大きさに戻れたとして……その時の私、生き延びているのかな?

 そう考えたら、すごく怖くなった。


 ガラス越し、ヘナヘナとへたり込んだ私を見て、頼綱が言葉を重ねる。


花々里かがりが不安なら……俺は無理にやらなくてもいいと思ってる。小さくなってたって花々里は花々里だし、それを理由に俺はキミを手放すつもりはない。ただ――」

 そこまで言ってコツコツ、と小瓶を爪先でノックすると、私が頼綱の顔を見たのを確認してから続けるの。
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