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■特典②『花々里の瓶詰め』
元に戻す方法3
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「やるからには……俺は花々里を死なせるつもりはないよ? ねぇ花々里、俺のことを信頼して……少し頑張ってみないか?」
――このままキミの声が聴こえないのは寂しいじゃないか。
ポツンと密やかに落とされた言葉に、私はハッとさせられる。
私だって頼綱に言いたいこと、沢山ある!
このままで……良いわけがない。
私は立ち上がって、ペチペチとガラスを叩いて頼綱の視線を引きつけると、両手を握り拳の形にしてグッと握って見せた。
頑張るっ!のポーズ。
伝わった、かな?
頼綱が「それは頑張るって意味で合ってるかな?」って聞いてくれて、私は勢いよく何度も何度もコクコクとうなずいた。
***
お風呂場から戻ってきた頼綱が、「じゃあ始めようか」って私を見つめてきて。
私は生唾を飲み込んで、大きくうなずいた。
キュッという音がして、瓶の上部にはめられていたコルク栓が抜かれる。
フタがされていても息苦しくなかったところを見ると、あのコルクには空気穴が開いていたのかな?
そんな風に思って見上げていたら、上から頼綱の指が伸びてきて、私の頭にそっと触れる。
指先から、嗅ぎ慣れた頼綱の香りがふんわり漂ってきて、胸の奥が締め付けられるほど切なくなった。
頼綱のこと、信じてます!
私、ちゃんと元に戻って、今まで以上に家事頑張るから!
「掛けるよ?」
頼綱の声がして、私は聞こえないのは承知で、「はいっ!」って大声で答える。
と、頭に乗せられた頼綱の指を伝わるようにして、トロリとした冷たい液体が頭上から流れ落ちてきて。
ああ、この指はそのために――。
てっきりダイレクトに小瓶の中身がザバザバと自分に降ってくると思っていた私は、頼綱の気遣いにキュンとする。
トロトロと全身を伝い落ちる琥珀色の甘い蜜は、冷んやりと肌の上を滑り落ちて。身体全体にプチプチと弾けるような気泡がついた。
気がつけば、私、全身を蜜でコーティングされたみたいになっていた。
「平気かね?」
不意に頭の上に乗せられていた指が離れて、横から覗き込むようにして様子を確認された私は、ドロドロになった自分の姿がにわかに恥ずかしくなって、思わず両手で胸元を隠すようにしてその場にうずくまる。
「大丈夫そうだね」
その様子にクスッと笑うと、頼綱が私を連れて浴室に入った。
バスタブに溜まったお湯の湯温を指先で確認してから、洗面所に置かれていたコップで中のお湯をすくって。
「入れるよ?」と宣言して、私が小さくうなずいたのを視認してから、今度は瓶の側面を伝わせるようにしてそっとお湯を流し入れてきた。
冷たかった蜜の時と違って、今度は温かいお湯が足元から徐々に増えてくる。
全身がホワリと温もりに包まれるのに安心した私だったけれど、段々水位が上がってくるにつれて、スカートが浮力でブワリと持ち上がってしまうことに気がついて、慌ててそれを押さえつけた。
ヤダッ、下着見えちゃうっ。
思ってスカートの裾をぎゅっと両ももの間に挟むように固定してから、ハッとした。
さっき頼綱、下着は買えなかったって……言ってなかった?
私、大きく戻れた後、どうなっちゃうんだろう!?
そんなことを考えている間にも、どんどんお湯嵩は増して行って。
とうとう私は瓶の中で甘ったるい香りのする生暖かいお湯に完全に浸されてしまった。
頼綱がそんな私を確認して、「花々里、俺がついてるからね」って言いながら上のコルク栓をもう一度閉めて。
その瞬間、スカートを押さえていなきゃ!とか、そんな心配は全部どこかに飛んでいってしまった。
そんな瑣末なこと、どうだっていいの。
私、絶対無事生還するんだ!
――このままキミの声が聴こえないのは寂しいじゃないか。
ポツンと密やかに落とされた言葉に、私はハッとさせられる。
私だって頼綱に言いたいこと、沢山ある!
このままで……良いわけがない。
私は立ち上がって、ペチペチとガラスを叩いて頼綱の視線を引きつけると、両手を握り拳の形にしてグッと握って見せた。
頑張るっ!のポーズ。
伝わった、かな?
頼綱が「それは頑張るって意味で合ってるかな?」って聞いてくれて、私は勢いよく何度も何度もコクコクとうなずいた。
***
お風呂場から戻ってきた頼綱が、「じゃあ始めようか」って私を見つめてきて。
私は生唾を飲み込んで、大きくうなずいた。
キュッという音がして、瓶の上部にはめられていたコルク栓が抜かれる。
フタがされていても息苦しくなかったところを見ると、あのコルクには空気穴が開いていたのかな?
そんな風に思って見上げていたら、上から頼綱の指が伸びてきて、私の頭にそっと触れる。
指先から、嗅ぎ慣れた頼綱の香りがふんわり漂ってきて、胸の奥が締め付けられるほど切なくなった。
頼綱のこと、信じてます!
私、ちゃんと元に戻って、今まで以上に家事頑張るから!
「掛けるよ?」
頼綱の声がして、私は聞こえないのは承知で、「はいっ!」って大声で答える。
と、頭に乗せられた頼綱の指を伝わるようにして、トロリとした冷たい液体が頭上から流れ落ちてきて。
ああ、この指はそのために――。
てっきりダイレクトに小瓶の中身がザバザバと自分に降ってくると思っていた私は、頼綱の気遣いにキュンとする。
トロトロと全身を伝い落ちる琥珀色の甘い蜜は、冷んやりと肌の上を滑り落ちて。身体全体にプチプチと弾けるような気泡がついた。
気がつけば、私、全身を蜜でコーティングされたみたいになっていた。
「平気かね?」
不意に頭の上に乗せられていた指が離れて、横から覗き込むようにして様子を確認された私は、ドロドロになった自分の姿がにわかに恥ずかしくなって、思わず両手で胸元を隠すようにしてその場にうずくまる。
「大丈夫そうだね」
その様子にクスッと笑うと、頼綱が私を連れて浴室に入った。
バスタブに溜まったお湯の湯温を指先で確認してから、洗面所に置かれていたコップで中のお湯をすくって。
「入れるよ?」と宣言して、私が小さくうなずいたのを視認してから、今度は瓶の側面を伝わせるようにしてそっとお湯を流し入れてきた。
冷たかった蜜の時と違って、今度は温かいお湯が足元から徐々に増えてくる。
全身がホワリと温もりに包まれるのに安心した私だったけれど、段々水位が上がってくるにつれて、スカートが浮力でブワリと持ち上がってしまうことに気がついて、慌ててそれを押さえつけた。
ヤダッ、下着見えちゃうっ。
思ってスカートの裾をぎゅっと両ももの間に挟むように固定してから、ハッとした。
さっき頼綱、下着は買えなかったって……言ってなかった?
私、大きく戻れた後、どうなっちゃうんだろう!?
そんなことを考えている間にも、どんどんお湯嵩は増して行って。
とうとう私は瓶の中で甘ったるい香りのする生暖かいお湯に完全に浸されてしまった。
頼綱がそんな私を確認して、「花々里、俺がついてるからね」って言いながら上のコルク栓をもう一度閉めて。
その瞬間、スカートを押さえていなきゃ!とか、そんな心配は全部どこかに飛んでいってしまった。
そんな瑣末なこと、どうだっていいの。
私、絶対無事生還するんだ!
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