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*触れてみても構いませんか?
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もっと修太郎さんがいっぱいいっぱいになられているお姿を拝見したい。なのに、私は彼に触れたままの手をどうしたらいいのかさえ分からなくて、情けない気持ちになる。
とりあえず手を退こうにも、下手に動かせば、もしかしたら修太郎さんに痛い思いをさせてしまうかもしれないと思うと怖くて動かせなくて。
「日織さん、大、丈夫ですから……。怖がらないで?」
切なげにそうおっしゃると、修太郎さんは私の右手を御自身の両手で包み込んでいらした。そうして私の手の中に、彼のものをギュッと握り込ませると、
「このまま、動かしても……構、いません、か?」
耳許に彼の低く掠れた吐息混じりの声を注ぎ込まれると、私はそれだけで全身が熱く火照ってしまう。
「日織……さん」
ほわほわとした浮遊感の中、熱い吐息とともに彼に名前を呼ばれた。その途端、身体に甘くとろけるような電流が走って。
「……ふ、あっ」
彼の声に、背筋がゾクリと粟立って、気がつけば私も鼻にかかった吐息を漏らしてしまっていた。
身体の奥の方がキュンと疼いて、私は思わず両足をすり合わせるようにして脚をギュッと閉じた。
「日織さん、これ以上……僕を、煽らないで?」
耳元で重ねられる修太郎さんの切なげなお声に、
「あっ、耳も、とでっ、そんなっ、されたら……無、理っ……ですっ」
何とかそう言ったら、耳朶を優しく食まれた。
その刺激に思わずギュッと手に力が入ってしまって。
「――あ、日織っ」
初めて彼に呼び捨てられたことが切なくて、くすぐったくて。
私は身体中の血液が沸騰してしまうんじゃないかと思うくらい、熱くなった。
「……日、織さん、……すみ、ませんっ」
修太郎さんが荒い息の合間、途切れ途切れに謝罪なさるのへ、私は思わず思い切り首を振って「よ、呼び捨て、嬉しかったのでっ。――すごくドキドキしてしまいましたっ」と必死にお伝えした。
修太郎さんは私の言葉に瞳を見開いて驚かれると、私の手をそっとご自身から放された。
そうして私の手をティッシュを何枚も使って丁寧に拭ってくださいながら、「いや、そこではなく……」と恥ずかしそうにおっしゃると、「その、僕だけが達してしまったので……」と申し訳なさそうに俯かれた。
私は修太郎さんの言葉に、初めて彼の謝罪の真意を知って、途端ドギマギしてしまう。
ひゃー。言われてみれば私、手が汚れてしまっていますっ。……それに……車内にも先ほどまではなかった青臭いにおいが……。
筍の皮とか……栗の花とか……そういうのに似たにおい。
ってこれがもしかして…あのっ……。
「わ、私っ、き、気付かなくてっ、ごめっ、なさいっ!」
何だかその瞬間をキャッチし損なってしまったことがすごくすごくもったいないと思ってしまって……。同時になんてはしたないことを考えているんだろう、と恥ずかしくなった。
それより何より、そのことに気付いて差し上げられなかったことが、修太郎さんを一人ぼっちにしてしまったみたいで申し訳なくて。
「あ、あの……修太郎さん」
いつのまにか着衣をきちんと整えていらっしゃる修太郎さんに、恐る恐る呼びかける。
修太郎さんはさっきからずっと私から微妙に目をそらしていらっしゃるけれど、私の声にほんの少し反応なさったのは分かった。
私は彼の腿にそっと触れると、
「私、ちゃんと修太郎さんを気持ちよく……できましたか?」
半ば必死になって、そう、お聞きした。
とりあえず手を退こうにも、下手に動かせば、もしかしたら修太郎さんに痛い思いをさせてしまうかもしれないと思うと怖くて動かせなくて。
「日織さん、大、丈夫ですから……。怖がらないで?」
切なげにそうおっしゃると、修太郎さんは私の右手を御自身の両手で包み込んでいらした。そうして私の手の中に、彼のものをギュッと握り込ませると、
「このまま、動かしても……構、いません、か?」
耳許に彼の低く掠れた吐息混じりの声を注ぎ込まれると、私はそれだけで全身が熱く火照ってしまう。
「日織……さん」
ほわほわとした浮遊感の中、熱い吐息とともに彼に名前を呼ばれた。その途端、身体に甘くとろけるような電流が走って。
「……ふ、あっ」
彼の声に、背筋がゾクリと粟立って、気がつけば私も鼻にかかった吐息を漏らしてしまっていた。
身体の奥の方がキュンと疼いて、私は思わず両足をすり合わせるようにして脚をギュッと閉じた。
「日織さん、これ以上……僕を、煽らないで?」
耳元で重ねられる修太郎さんの切なげなお声に、
「あっ、耳も、とでっ、そんなっ、されたら……無、理っ……ですっ」
何とかそう言ったら、耳朶を優しく食まれた。
その刺激に思わずギュッと手に力が入ってしまって。
「――あ、日織っ」
初めて彼に呼び捨てられたことが切なくて、くすぐったくて。
私は身体中の血液が沸騰してしまうんじゃないかと思うくらい、熱くなった。
「……日、織さん、……すみ、ませんっ」
修太郎さんが荒い息の合間、途切れ途切れに謝罪なさるのへ、私は思わず思い切り首を振って「よ、呼び捨て、嬉しかったのでっ。――すごくドキドキしてしまいましたっ」と必死にお伝えした。
修太郎さんは私の言葉に瞳を見開いて驚かれると、私の手をそっとご自身から放された。
そうして私の手をティッシュを何枚も使って丁寧に拭ってくださいながら、「いや、そこではなく……」と恥ずかしそうにおっしゃると、「その、僕だけが達してしまったので……」と申し訳なさそうに俯かれた。
私は修太郎さんの言葉に、初めて彼の謝罪の真意を知って、途端ドギマギしてしまう。
ひゃー。言われてみれば私、手が汚れてしまっていますっ。……それに……車内にも先ほどまではなかった青臭いにおいが……。
筍の皮とか……栗の花とか……そういうのに似たにおい。
ってこれがもしかして…あのっ……。
「わ、私っ、き、気付かなくてっ、ごめっ、なさいっ!」
何だかその瞬間をキャッチし損なってしまったことがすごくすごくもったいないと思ってしまって……。同時になんてはしたないことを考えているんだろう、と恥ずかしくなった。
それより何より、そのことに気付いて差し上げられなかったことが、修太郎さんを一人ぼっちにしてしまったみたいで申し訳なくて。
「あ、あの……修太郎さん」
いつのまにか着衣をきちんと整えていらっしゃる修太郎さんに、恐る恐る呼びかける。
修太郎さんはさっきからずっと私から微妙に目をそらしていらっしゃるけれど、私の声にほんの少し反応なさったのは分かった。
私は彼の腿にそっと触れると、
「私、ちゃんと修太郎さんを気持ちよく……できましたか?」
半ば必死になって、そう、お聞きした。
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