13 / 30
13話 やべえ上司はやべえ先輩に預けよう
しおりを挟む
「よう少年! 噂の銀髪ボインな美少女はどこだ?」
昭和の親父くさいやばい先輩……じゃなかった、知的で学があって包容力のある菜々緒先輩が、電話を切ってから3分で来た。俺の全力疾走でも和泉屋書店からは5分以上かかるんだけどなぁ。下心ってすごい。
菜々緒先輩とは次に異世界の美少女が来たら譲るという約束をしていた。
ぶっちゃけ気にも留めていなかったが、破ると面倒なことになりそうだし、オーヴェリアが居つくスペースもないので押し付けよう。
「ここにいます。オーヴェリアさんです」
「おっほー、少年やるなぁ!」
「おっさんかよ」
「なんか言ったかー?」
「いえ何でも」
ある意味、オーヴェリアより怖い存在かもしれない。さっさと引き取ってもらおう。
「オーヴェリアさん、こちらがあなたの引き取り先の菜々緒先輩です」
「どうもー! 和泉菜々緒21歳処女でーす」
「見ての通り知的で学があって包容力のある先輩です」
心が痛い。嘘をつくのは心が痛いなぁ。
「21か。私と同い年だな」
それこそ嘘だろ? 27くらいかと思っていたぞ。
俺は顔に出やすいということを失念していた。オーヴェリアに強めに睨まれる。虎の尾を踏む真似をしてしまったな。
「お邪魔してしまってもいいのか?」
「大丈夫大丈夫。っていうか休まないとこっちの世界がヤバいんでしょ? だったら遠慮なく使ってよ」
話の早い先輩だ。純文学だけでなくライトノベルも読み込んでいる人で助かった。
菜々緒先輩はオーヴェリアをえらく気に入ったらしく、俺にいい仕事をするじゃんとか吐かしてオーヴェリアを連れて帰った。
はぁ、やっとあの殺気のような目から逃れられた。怖いんだよあれ。
そして、やっとリディアと2人きりだ。
今日のデート、オーヴェリア出現のせいで後味は悪くなってしまったがそこそこに楽しめたはず。
「リディア、今日は楽しかったか?」
「……はい」
リディアは優しく微笑んでくれた。
何が、と明確には言い表せられないが昨日までの笑顔とは少し違いがある気がする。
「ありがとうな。オーヴェリアから俺を守ってくれて」
「か、勘違いしないでください。別に正輝さんを好きになったわけじゃありませんから」
「ツンデレか?」
「ち、違います!」
「顔真っ赤だぞ」
リディアは顔を手で隠した。
数時間前に見たもののはずなのに、なぜか懐かしく感じられた。
「よし、ご飯にしようか」
帰りにコンビニにささっと寄って買った弁当を取り出した。
電子レンジを操作していると、すぐ背後にリディアがやってきた。そして、後ろから俺を抱きしめてきた。
「……せっかく抱きしめてくれているところ悪いんだが、リディアの顔が見たいな」
「嫌です。いま私の顔、真っ赤でしょうから」
「はは、自分で言うんだ」
リディアの心音が聞こえてくる。だが、俺の心音もまた聞こえていた。ボロアパートに、2つの心音が重なる。
「今日はありがとうございました。その、楽しかったです。すごく」
「そうか。それならよかった。人生初デートだから自信なかったし、失敗もしたけどな」
「植物園で怯える私をおぶってくれた時、すごく嬉しかったです。頼もしかったです。かっこよかったです」
「リディア……」
「あ、えと……お、お風呂いただきますね!」
そう言って、リディアは風呂場へと駆けて行った。
……お風呂、まだ沸いていないんだけどなぁ。
昭和の親父くさいやばい先輩……じゃなかった、知的で学があって包容力のある菜々緒先輩が、電話を切ってから3分で来た。俺の全力疾走でも和泉屋書店からは5分以上かかるんだけどなぁ。下心ってすごい。
菜々緒先輩とは次に異世界の美少女が来たら譲るという約束をしていた。
ぶっちゃけ気にも留めていなかったが、破ると面倒なことになりそうだし、オーヴェリアが居つくスペースもないので押し付けよう。
「ここにいます。オーヴェリアさんです」
「おっほー、少年やるなぁ!」
「おっさんかよ」
「なんか言ったかー?」
「いえ何でも」
ある意味、オーヴェリアより怖い存在かもしれない。さっさと引き取ってもらおう。
「オーヴェリアさん、こちらがあなたの引き取り先の菜々緒先輩です」
「どうもー! 和泉菜々緒21歳処女でーす」
「見ての通り知的で学があって包容力のある先輩です」
心が痛い。嘘をつくのは心が痛いなぁ。
「21か。私と同い年だな」
それこそ嘘だろ? 27くらいかと思っていたぞ。
俺は顔に出やすいということを失念していた。オーヴェリアに強めに睨まれる。虎の尾を踏む真似をしてしまったな。
「お邪魔してしまってもいいのか?」
「大丈夫大丈夫。っていうか休まないとこっちの世界がヤバいんでしょ? だったら遠慮なく使ってよ」
話の早い先輩だ。純文学だけでなくライトノベルも読み込んでいる人で助かった。
菜々緒先輩はオーヴェリアをえらく気に入ったらしく、俺にいい仕事をするじゃんとか吐かしてオーヴェリアを連れて帰った。
はぁ、やっとあの殺気のような目から逃れられた。怖いんだよあれ。
そして、やっとリディアと2人きりだ。
今日のデート、オーヴェリア出現のせいで後味は悪くなってしまったがそこそこに楽しめたはず。
「リディア、今日は楽しかったか?」
「……はい」
リディアは優しく微笑んでくれた。
何が、と明確には言い表せられないが昨日までの笑顔とは少し違いがある気がする。
「ありがとうな。オーヴェリアから俺を守ってくれて」
「か、勘違いしないでください。別に正輝さんを好きになったわけじゃありませんから」
「ツンデレか?」
「ち、違います!」
「顔真っ赤だぞ」
リディアは顔を手で隠した。
数時間前に見たもののはずなのに、なぜか懐かしく感じられた。
「よし、ご飯にしようか」
帰りにコンビニにささっと寄って買った弁当を取り出した。
電子レンジを操作していると、すぐ背後にリディアがやってきた。そして、後ろから俺を抱きしめてきた。
「……せっかく抱きしめてくれているところ悪いんだが、リディアの顔が見たいな」
「嫌です。いま私の顔、真っ赤でしょうから」
「はは、自分で言うんだ」
リディアの心音が聞こえてくる。だが、俺の心音もまた聞こえていた。ボロアパートに、2つの心音が重なる。
「今日はありがとうございました。その、楽しかったです。すごく」
「そうか。それならよかった。人生初デートだから自信なかったし、失敗もしたけどな」
「植物園で怯える私をおぶってくれた時、すごく嬉しかったです。頼もしかったです。かっこよかったです」
「リディア……」
「あ、えと……お、お風呂いただきますね!」
そう言って、リディアは風呂場へと駆けて行った。
……お風呂、まだ沸いていないんだけどなぁ。
10
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。
円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。
魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。
洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。
身動きもとれず、記憶も無い。
ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。
亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。
そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。
※この作品は「小説家になろう」からの転載です。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
学校がダンジョンに転移してしまいました
竹桜
ファンタジー
異世界に召喚され、帰還した主人公はまた非日常に巻き込まれたのだ。
通っていた高校がダンジョンの中に転移し、街を作れるなスキルを得た。
そのスキルを使用し、唯一の後輩を守る。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる