上 下
102 / 104
二章

一休みだよ!

しおりを挟む
 滞在場所として案内された屋敷があまりにも汚かったのでお掃除をした私達。だけど、掃除が一段落ついた頃には、すっかり外は暗くなってしまった。
 時間がなくて完璧にはほど遠いけど、とりあえず過ごせるくらいには問題ない程度にはきれいになったね。

 初見の時よりは見違えて綺麗になった正面ホールを見て私は腰に手をあて、うむ、と一つ頷く。

「きれいになったね」
「ああ、頑張ったなシロ。だがシロが埃だらけだ」

 そう言ってパパが私のほっぺについた汚れをハンカチで拭ってくれる。ハンカチを常備してるパパ、いい男だね!
 そして、パパはひょいっと私を抱っこした。

「もう日も暮れたし、風呂に入って飯食ってさっさと寝よう」
「は~い」
「「「は~い」」」



 やたらと広いお風呂に入って体を綺麗にした私達は、食堂に集まった。
 私もパパと手をつないで食堂の扉をくぐる。すると、一足先にいアニがこちらを見て目を見開いた。

「グハッ!! シロちゃん! かわいい……!!」

 心臓の辺りを押さえて仰け反るアニ。
 そんなアニを見てパパがドヤ顔をする。

「ふん、うちの子かわいいだろ」
「パパが結んでくれたの」

 私もパパの真似をしてドヤ顔を披露した。
 髪の毛を乾かした後、パパが私の髪をツインテールにしてくれたのだ。私のテンションを上げるためだろうけど、パパのストレス解消も兼ねてる気がする。殿下とパパは謁見に行ってたから、そこでイラッとすることでもあったんだろう。いつもよりも私の毛繕いが念入りだった。おかげで私の髪の毛もツヤッツヤよ。

 食堂に子ども用の椅子はなかったので、椅子に座ったパパの膝の上に座らせてもらう。

「ちょこんと座るシロちゃんかわいい!!」

 対面に座ったアニが叫ぶ。
 
「お前、どうしてそっちに座ってるんだ? どうせならシロの隣に座ればいいのに」
「兄さんは分かってないなぁ。隣よりも対面の方がシロちゃんのかわいいお顔がよく見えるでしょ?」

 やれやれと、ジャスチャーつきで言ったアニにエルヴィスはイラッとしたようだ。

「ほー、そうか。じゃあ俺は隣に座ってシロにあーんでもしようかな」
「あ! 兄さんそれはズルイよ!!」

 アニが立ち上がってエルヴィスに抗議をする。

 うんうん、この騒がしさだよね。
 初めて来る場所だけど、いつも通りの騒がしさが落ち着く。
 ふぅ~とパパに体重を預けてくつろいでいると、同行してきた料理人さんがみんなの分のごはんをカートに乗せて持ってきてくれた。

「念のため料理人を連れてきて正解だったな」

 上座を陣取った殿下が言う。
 こちらで用意されていたのは滞在場所の屋敷と諸々の備品、そして食材くらいであとは自分でやれって感じだったからね。
 殿下が料理人さんを連れてきていなかったら、今頃騎士さんや特殊部隊の隊員達で試行錯誤しながら料理をすることになってたね。騎士さん達の中にはある程度料理ができる人達もいるだろうけど、殿下のお口に入れられるレベルの料理ができる人はいないはずだ。

 今も、殿下は一人だけ何食わぬ顔でコース料理を食べている。

「ん? なんだシロ?」

 私の視線に殿下が気づいた。

「なんでもない。殿下のごはんおいしそうだなって思ってただけ」
「はは、相変わらず食い意地が張ってるな。本当はボクも皆と同じものを食べたいんだが、それをこの国の奴らに知られるとまたいらんことを言われるからな」
「殿下も大変だねぇ」
「分かってくれるか。そんないい子のシロにはステーキを一切れあげよう」
「わーい!」

 てててっと殿下の足下に駆け寄り、上を向いてあーんと口を開けると、殿下がステーキを一切れ口の中に入れてくれた。

「ん~、おいひい。殿下ありがとう」
「ああ。リスみたいなシロもかわいいな。もきゅもきゅしているシロ、癒やされる……」

 ちょっと虚ろな目で呟く殿下。

 殿下もお疲れみたいだ……。

 殿下にお礼を言い、パパのもとへ戻る。
 すると、口の端にソースがついていたのか、パパが口元を拭ってくれた。


 それから、夕食は和やかな雰囲気のまま終わり、シーベルト国一日目の夜はとりあえず大きな事件は起こらず更けていった―――















しおりを挟む
感想 355

あなたにおすすめの小説

生贄令嬢は怠惰に生きる~小動物好き竜王陛下に日々愛でられてます~

雪野ゆきの
恋愛
叔父一家に虐げられていた少女リアはついに竜王陛下への生贄として差し出されてしまう。どんな酷い扱いをされるかと思えば、体が小さかったことが幸いして竜王陛下からは小動物のように溺愛される。そして生贄として差し出されたはずが、リアにとっては怠惰で幸福な日々が始まった―――。 感想、誤字脱字報告、エール等ありがとうございます! 【書籍化しました!】 お祝いコメントありがとうございます!

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

騎士団長のお抱え薬師

衣更月
ファンタジー
辺境の町ハノンで暮らすイヴは、四大元素の火、風、水、土の属性から弾かれたハズレ属性、聖属性持ちだ。 聖属性持ちは意外と多く、ハズレ属性と言われるだけあって飽和状態。聖属性持ちの女性は結婚に逃げがちだが、イヴの年齢では結婚はできない。家業があれば良かったのだが、平民で天涯孤独となった身の上である。 後ろ盾は一切なく、自分の身は自分で守らなければならない。 なのに、求人依頼に聖属性は殆ど出ない。 そんな折、獣人の国が聖属性を募集していると話を聞き、出国を決意する。 場所は隣国。 しかもハノンの隣。 迎えに来たのは見上げるほど背の高い美丈夫で、なぜかイヴに威圧的な騎士団長だった。 大きな事件は起きないし、意外と獣人は優しい。なのに、団長だけは怖い。 イヴの団長克服の日々が始まる―ー―。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。