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二章
二日目の朝
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シーベルト王国に来て二日目の朝、私はすがすがしい……かどうかは分からないけど、とりあえず朝を迎えていた。
「パパおはよ~」
「ああ、おはようシロ。よく眠れたか?」
「うんっ」
昨日は掃除やら何やらで大忙しだったのでぐっすりと眠れた。疲れてたんだね。
ベッドの上に座ったままみょーんと伸びをする。
「パパ、今日のご予定は?」
「今は公開試合ための準備期間だから特に予定はないな。……せっかくだからもう少しこの屋敷を住みやすいように改造しようか。――好きなようにしていいってことだしな」
そう言ってパパはニヤリと笑った。
こういう顔をしている時のパパは面白いことを考えている時だ。私もワクワクしてくる。
「パパっ、パパっ、なにするの?」
「シロが楽しくなることだ」
「おお! すぐ行こう!!」
「そうだな――と言いたいところだが、まずは顔を洗って歯を磨くぞ。あとごはんだ」
「……はぁい」
さすが父親。
パパによって洗面所に連れていかれ、顔を洗われる。そしてゴシゴシと歯を磨いた。
「ちゃんと磨けたか?」
「ん」
あーんを口を開いてパパに見せる。
「よし、ピカピカだな」
「うん、ピカピカ」
準備は整ったので着替えて廊下に出る。
廊下に出た瞬間、見覚えのありまくる顔と遭遇した。
そして、爽やかな笑顔を向けられる。
「あ、おはようシロちゃん。そろそろ起きてくる頃だと思ってたよ」
「アニおはよう」
私とパパの部屋の扉の真横にアニが立っていた。
私達が出てくるのをここで待ってたのかな……まあ、今更アニのすることにツッコむまい。
「今日もシロちゃんがかわいすぎて眩しいよ。朝日にも負けない輝きだ」
「じゃあ直視できないね」
「え~、シロちゃんを見られないなんてことになったら死んじゃう」
そう言いながらガン見してくるアニ。
「あ、隊長もおはようございます」
「おはよう。朝から元気だな」
パパがアニに挨拶を返す。
「シロちゃんの姿を見れば朝だろうが夜だろうが元気になりますよ。ねー?」
私に同意を求めるように首を傾げて見せるアニ。
こっちに共感を求められてもなぁ……。
返答に困ってしまったので、アニのまねっこをしてコテンと首を傾げる。
「グゥッ……!!! かわいすぎる!! 天使っ!!!」
大興奮のアニは膝から崩れ落ちた。朝からこのテンションで疲れないのかなぁ。……疲れないんだろうなぁ。
床に伏せったアニの頭頂部をツンツンと指でつつく。
反応がない。
「あ、そういえばパパ、今日はなにするの?」
そう問いかけると、パパがニヤッと笑った。
「愛娘の遊び場を作ろうと思う」
私達は屋敷の中にある古びた螺旋階段の前にやってきた。
金属でできた手すりや柱は無事だけど、木製の踏み板は大分痛んでいるのが分かる。スリルを楽しむにはちょうどいい階段だね。
あいにく私達は心臓の強さを試したいわけではないので別の階段を使ってるけど。
そんな私達の前には金槌や釘、そして大量の木の板が並んでいる。
どこからこんなものを調達してきたのか疑問に思わなくもないけど、まあパパだからな。
「巷では、父親達が自分で家具を作ったりすることが流行っているらしい」
「ほうほう」
パパもその父親達に倣って家具を作ろうってことかな?
「シロもトントンする?」
「危ないからシロに金槌は使わせられない。完成するまで離れた場所で見ていてくれないか? シロが応援してくれたらパパのやる気が出る」
「分かった。大人しくパパの応援に徹するね」
「いい子だ」
よしよしとパパに頭を撫でられる。
「隊長、手伝い要員連れてきました~」
すると、アニがこちらにやってきた。後ろにゾロゾロと人を引き連れて。
「わ、なんで木の板がこんな大量に……」
「隊長~、僕達は何すればいいんですか?」
アニに連れられてやってきたのはエルヴィスやシリル達数名だ。その中にはクロやエンペラーもいる。
「お前達は俺の手伝いだ。クロとエンペラーはシロが暇しないように戯れてやってくれ」
「……わかった……」
「ガウッ!!」
クロとエンペラーが返事をする。
「え~、俺もシロちゃんと遊ぶ方が……」
「アニ、お前はシロの喜ぶ顔よりも自分の欲を優先させるのか?」
「んなまさか。シロちゃんの笑顔が第一に決まってるじゃないですか。さあ、何から取りかかりましょうか」
あっさりと手のひらを返したアニは袖をまくって腕をブンブンと回しながらパパのところに歩み寄った。
さすがパパ、アニの扱いが上手いね。
それから、クロとエンペラーと戯れ、時折パパ達の応援をしながら時間を潰した。
声をかけるとアニの作業スピードがあからさまに上がるから面白い。
途中で殿下が様子を見にやってきたけど、パパ達の手伝いをすることはなかった。まあ、殿下だしね。
金槌とか釘なんて触れるどころか見たこともないかもしれない。
そんな技術もやる気もない殿下は、私を膝に乗せてのんびりと高みの見物を決め込んでいた。役割分担だね。
殿下のお膝の上でおかしを食べさせられつつ寛ぐこと約一時間。パパ達の作業が終わったようだ。
「シロ、できたぞ」
「!」
ピコンッと反応した私は殿下の膝の上から下り、パパのもとへと駆け寄った。
そんな私を、パパはヒョイッと抱き上げる。
「どこ行くの?」
「二階だ」
パパは私を抱っこしたまま別の階段を上り、二階に向かった。近くに螺旋階段があるんだからそれを使えばよかったのに。
螺旋階段をいじってたからてっきり直してたんだと思ってたけど、違うのかな?
だけど、そんな私の疑問はすぐに解消された。
「これは……」
「元螺旋階段、現滑り台だ」
なんということでしょう、ボロボロだった螺旋階段は匠達の手によって滑り台に生まれ変わりました。
踏板があったところは滑らかな床に変わり、滑っている最中に飛び出したりしないように周りも木の壁で覆われている。
「パパ、すごい!!」
「ふふん、そうだろうそうだろう。シロ、滑ってみるか?」
「うん!」
返事をすると、まずはパパが座り、両足の間に私を抱え込むような体勢になった。
「じゃあいくぞ」
そう言うと、パパがしっかりと私を抱きかかえたまま滑り始めた。
「お~」
スピードこそそこまで早くはないものの、クルクルと回って滑っていくのが楽しい。
二階が出発地点なだけあってそこそこの長さはあったものの、体感ではすぐに滑り終えてしまった。
「どうだった? って、聞くまでもないか」
私の顔を覗き込んで笑うパパ。パパの視線の先にある私は、さぞキラッキラと瞳を輝かせていることだろう。
「もう一回! もう一回滑る!!」
「はいはい」
すぐにもう一度二階に上がろうとする私の後についてくるパパ。
「ああ、シロちゃんが喜んでくれてる……」
キャッキャとはしゃぐ私の姿を見て、アニは感動に打ち震えていたらしい。
何度も滑るうちに別の階段まで行くのが億劫になった私は、ついに戻る時は滑り台の斜面を走って二階に上がるようになった。
ちょっと傾斜が急かもしれないけどシロちゃんの身体能力なら問題ございません!
途中からはパパも安全だと判断したらしく、私一人で滑ってもいいよと許可をくれたので、エンドレスで滑っている。
クロとエンペラーも参戦したけど、二人も楽しそうに滑り台を使っていた。
何度繰り返したか分からないほど滑れば、私もさすがに満足した。
最後の一回を滑り終えた後、一階で見守ってくれていたパパに抱き着く。
「もういいのか?」
「今日はちょっと疲れたからおしまい。また明日滑る」
「そうか」
くしゃくしゃと私の頭を撫でるパパ。
そこで、私はあることに気付いてハッと顔を上げた。そして私が視線を向けたのは殿下だ。
「そういえば殿下、他国の建物を勝手に改造しちゃってよかったの?」
「問題ない。こんなボロ屋敷を他国の王族の滞在場所に指定した方が問題だからな。それに、好きにしていいって言われてるんだろう? 最悪そのセリフを言った奴のせいにしよう」
ニコリと笑って言い放つ殿下。
さすが、腹黒いね。
「パパおはよ~」
「ああ、おはようシロ。よく眠れたか?」
「うんっ」
昨日は掃除やら何やらで大忙しだったのでぐっすりと眠れた。疲れてたんだね。
ベッドの上に座ったままみょーんと伸びをする。
「パパ、今日のご予定は?」
「今は公開試合ための準備期間だから特に予定はないな。……せっかくだからもう少しこの屋敷を住みやすいように改造しようか。――好きなようにしていいってことだしな」
そう言ってパパはニヤリと笑った。
こういう顔をしている時のパパは面白いことを考えている時だ。私もワクワクしてくる。
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「シロが楽しくなることだ」
「おお! すぐ行こう!!」
「そうだな――と言いたいところだが、まずは顔を洗って歯を磨くぞ。あとごはんだ」
「……はぁい」
さすが父親。
パパによって洗面所に連れていかれ、顔を洗われる。そしてゴシゴシと歯を磨いた。
「ちゃんと磨けたか?」
「ん」
あーんを口を開いてパパに見せる。
「よし、ピカピカだな」
「うん、ピカピカ」
準備は整ったので着替えて廊下に出る。
廊下に出た瞬間、見覚えのありまくる顔と遭遇した。
そして、爽やかな笑顔を向けられる。
「あ、おはようシロちゃん。そろそろ起きてくる頃だと思ってたよ」
「アニおはよう」
私とパパの部屋の扉の真横にアニが立っていた。
私達が出てくるのをここで待ってたのかな……まあ、今更アニのすることにツッコむまい。
「今日もシロちゃんがかわいすぎて眩しいよ。朝日にも負けない輝きだ」
「じゃあ直視できないね」
「え~、シロちゃんを見られないなんてことになったら死んじゃう」
そう言いながらガン見してくるアニ。
「あ、隊長もおはようございます」
「おはよう。朝から元気だな」
パパがアニに挨拶を返す。
「シロちゃんの姿を見れば朝だろうが夜だろうが元気になりますよ。ねー?」
私に同意を求めるように首を傾げて見せるアニ。
こっちに共感を求められてもなぁ……。
返答に困ってしまったので、アニのまねっこをしてコテンと首を傾げる。
「グゥッ……!!! かわいすぎる!! 天使っ!!!」
大興奮のアニは膝から崩れ落ちた。朝からこのテンションで疲れないのかなぁ。……疲れないんだろうなぁ。
床に伏せったアニの頭頂部をツンツンと指でつつく。
反応がない。
「あ、そういえばパパ、今日はなにするの?」
そう問いかけると、パパがニヤッと笑った。
「愛娘の遊び場を作ろうと思う」
私達は屋敷の中にある古びた螺旋階段の前にやってきた。
金属でできた手すりや柱は無事だけど、木製の踏み板は大分痛んでいるのが分かる。スリルを楽しむにはちょうどいい階段だね。
あいにく私達は心臓の強さを試したいわけではないので別の階段を使ってるけど。
そんな私達の前には金槌や釘、そして大量の木の板が並んでいる。
どこからこんなものを調達してきたのか疑問に思わなくもないけど、まあパパだからな。
「巷では、父親達が自分で家具を作ったりすることが流行っているらしい」
「ほうほう」
パパもその父親達に倣って家具を作ろうってことかな?
「シロもトントンする?」
「危ないからシロに金槌は使わせられない。完成するまで離れた場所で見ていてくれないか? シロが応援してくれたらパパのやる気が出る」
「分かった。大人しくパパの応援に徹するね」
「いい子だ」
よしよしとパパに頭を撫でられる。
「隊長、手伝い要員連れてきました~」
すると、アニがこちらにやってきた。後ろにゾロゾロと人を引き連れて。
「わ、なんで木の板がこんな大量に……」
「隊長~、僕達は何すればいいんですか?」
アニに連れられてやってきたのはエルヴィスやシリル達数名だ。その中にはクロやエンペラーもいる。
「お前達は俺の手伝いだ。クロとエンペラーはシロが暇しないように戯れてやってくれ」
「……わかった……」
「ガウッ!!」
クロとエンペラーが返事をする。
「え~、俺もシロちゃんと遊ぶ方が……」
「アニ、お前はシロの喜ぶ顔よりも自分の欲を優先させるのか?」
「んなまさか。シロちゃんの笑顔が第一に決まってるじゃないですか。さあ、何から取りかかりましょうか」
あっさりと手のひらを返したアニは袖をまくって腕をブンブンと回しながらパパのところに歩み寄った。
さすがパパ、アニの扱いが上手いね。
それから、クロとエンペラーと戯れ、時折パパ達の応援をしながら時間を潰した。
声をかけるとアニの作業スピードがあからさまに上がるから面白い。
途中で殿下が様子を見にやってきたけど、パパ達の手伝いをすることはなかった。まあ、殿下だしね。
金槌とか釘なんて触れるどころか見たこともないかもしれない。
そんな技術もやる気もない殿下は、私を膝に乗せてのんびりと高みの見物を決め込んでいた。役割分担だね。
殿下のお膝の上でおかしを食べさせられつつ寛ぐこと約一時間。パパ達の作業が終わったようだ。
「シロ、できたぞ」
「!」
ピコンッと反応した私は殿下の膝の上から下り、パパのもとへと駆け寄った。
そんな私を、パパはヒョイッと抱き上げる。
「どこ行くの?」
「二階だ」
パパは私を抱っこしたまま別の階段を上り、二階に向かった。近くに螺旋階段があるんだからそれを使えばよかったのに。
螺旋階段をいじってたからてっきり直してたんだと思ってたけど、違うのかな?
だけど、そんな私の疑問はすぐに解消された。
「これは……」
「元螺旋階段、現滑り台だ」
なんということでしょう、ボロボロだった螺旋階段は匠達の手によって滑り台に生まれ変わりました。
踏板があったところは滑らかな床に変わり、滑っている最中に飛び出したりしないように周りも木の壁で覆われている。
「パパ、すごい!!」
「ふふん、そうだろうそうだろう。シロ、滑ってみるか?」
「うん!」
返事をすると、まずはパパが座り、両足の間に私を抱え込むような体勢になった。
「じゃあいくぞ」
そう言うと、パパがしっかりと私を抱きかかえたまま滑り始めた。
「お~」
スピードこそそこまで早くはないものの、クルクルと回って滑っていくのが楽しい。
二階が出発地点なだけあってそこそこの長さはあったものの、体感ではすぐに滑り終えてしまった。
「どうだった? って、聞くまでもないか」
私の顔を覗き込んで笑うパパ。パパの視線の先にある私は、さぞキラッキラと瞳を輝かせていることだろう。
「もう一回! もう一回滑る!!」
「はいはい」
すぐにもう一度二階に上がろうとする私の後についてくるパパ。
「ああ、シロちゃんが喜んでくれてる……」
キャッキャとはしゃぐ私の姿を見て、アニは感動に打ち震えていたらしい。
何度も滑るうちに別の階段まで行くのが億劫になった私は、ついに戻る時は滑り台の斜面を走って二階に上がるようになった。
ちょっと傾斜が急かもしれないけどシロちゃんの身体能力なら問題ございません!
途中からはパパも安全だと判断したらしく、私一人で滑ってもいいよと許可をくれたので、エンドレスで滑っている。
クロとエンペラーも参戦したけど、二人も楽しそうに滑り台を使っていた。
何度繰り返したか分からないほど滑れば、私もさすがに満足した。
最後の一回を滑り終えた後、一階で見守ってくれていたパパに抱き着く。
「もういいのか?」
「今日はちょっと疲れたからおしまい。また明日滑る」
「そうか」
くしゃくしゃと私の頭を撫でるパパ。
そこで、私はあることに気付いてハッと顔を上げた。そして私が視線を向けたのは殿下だ。
「そういえば殿下、他国の建物を勝手に改造しちゃってよかったの?」
「問題ない。こんなボロ屋敷を他国の王族の滞在場所に指定した方が問題だからな。それに、好きにしていいって言われてるんだろう? 最悪そのセリフを言った奴のせいにしよう」
ニコリと笑って言い放つ殿下。
さすが、腹黒いね。
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