95 / 104
二章
お泊りはテンション上がる③
しおりを挟む
部屋に荷物を置けば、次は念願の食事の時間だ。
宿は貸し切りなので、食堂には私達の関係者しかいない。見知らぬ顔もあるけど、私の周りにいるのはいつもの面々だ。
「しろ……」
「クロ!」
どうやら馬車でダウンしていたらしいクロにヒシと抱きつく。
「……ばしゃ、酔う……じぶんではしりたい……」
おお、みんな考えることは一緒だね。
クロの頭をよしよしと撫でながらシロはそんなことを思う。そしてクロと一緒にパパを見上げた。
「かわいいけど今回は駄目だ。散歩は今度してやるからもうちょっと我慢しろ」
「……」
クロは不満そうにしつつも大人しく引き下がった。いい子だね。シロいい子いい子しちゃう。
わっしゃわっしゃと撫でてやればクロはうっとりと目を閉じる。かわいい。
「ガウ……」
「ん?」
鳴き声がした方を見ると、エンペラーが恨めしそうにこちらを見ていた。
「ガウ」
「ん? エンペラーも撫でてほしいの? こっちおいで~」
ちょいんちょいんと手招きすればエンペラーが大人しくこちらにやって来る。
「よしよ~し」
エンペラーのフワ毛に指を通す。うん、かわいい。
もちろん同時にクロの頭を撫でることも忘れない。今度はクロが嫉妬しちゃうからね。
慣れてる特殊部隊のみんなは普通の顔してるけど、面識がない騎士さん達はびっくりした顔でこっちを見ている。
「――あの狂犬が大人しく撫でられてる……」
「ブレイク隊長の娘さんパネェ」
「あの狂犬がほんとにワンコみたいだ」
ふふん、クロもエンペラーもかわいいでしょ。
二匹を撫でながら騎士さん達にドヤ顔をする。すると、パパに後ろから持ち上げられた。
「ほら、もう飯の用意ができたようだぞ。ワンコを可愛がるのは後でな」
「は~い」
素直にお返事をすると、パパのお膝の上に乗せられた。シロ一人じゃ机に届かないからね。
「おぉぉぉ~!」
机の上には、なんだかオシャレな食事が並んでいた。お肉もソースがぶっかけじゃなくてお皿の端っこでなんかオシャレな模様になってる。
パンも真っ白くて、見た目だけでふわっふわなのが分かる。
私は隣の席の殿下を見上げた。
「殿下、シロ毒見しようか?」
「シロは肉が欲しいだけだろう。そういうのは信者に貢がせなさい」
「ぶ~」
お肉強奪作戦失敗。
「それに、シロに毒見をさせる気はないぞ。例え毒が入ってたとしてもこいつらが分かるからな」
そう言って殿下はステーキの載ったお皿をクロとエンペラーの鼻先に近付けた。
二匹はスンスンを鼻をひくつかせる。
「……だいじょうぶ……」
「ガウッ!」
エンペラーも大丈夫だと言ってるみたいだ。
「二匹ともありがとう」
全部のお皿に異変がないと分かると、殿下は自分の食事に手を付け始めた。
他の人達はエンペラーとクロがざっと匂いを嗅ぎ、異常がないことを確認して食べ始める。
「いただきます!」
「いただきます」
「パパ、ステーキ食べたい!」
サラダもついてるけど、一番お腹が空いてておいしく感じる時に美味しいお肉を食べたい。そう思ってパパを見上げると、パパはそんなシロの考えなどお見通しとばかりに微笑んでいた。
「はいはい、ほらあ~ん」
「あーん」
厚めなのに柔らかいお肉が口の中に入って来る。
お、おいしい!!
歯茎だけでも噛めちゃうくらい柔らかいし嫌な臭みゼロ! それに、ソースもなんか、なんか深い味がする!!
両手で頬を挟み、キラキラとした目をパパに向ける。
「パパ、シロは感動してる……」
「よかったなぁ。感動してるシロもかわいいぞ」
慈愛の微笑みを向けられる。
「シロちゃ~ん! 約束通り俺のステーキ一切れあげるね!」
アニがステーキの刺さったフォークを差し出してくる。
「はいあ~ん」
「あ~ん」
ぱっかりと口を開け、ステーキを受け入れる。
ん~、おいし~!!
おいしすぎてうっとりしちゃう。これが至福の時ってやつなんだね。
それから、みんながシロに食べ物を分けてくれようとしたけど食べ過ぎちゃうからってパパが止めてた。
ちょっと残念。
宿は貸し切りなので、食堂には私達の関係者しかいない。見知らぬ顔もあるけど、私の周りにいるのはいつもの面々だ。
「しろ……」
「クロ!」
どうやら馬車でダウンしていたらしいクロにヒシと抱きつく。
「……ばしゃ、酔う……じぶんではしりたい……」
おお、みんな考えることは一緒だね。
クロの頭をよしよしと撫でながらシロはそんなことを思う。そしてクロと一緒にパパを見上げた。
「かわいいけど今回は駄目だ。散歩は今度してやるからもうちょっと我慢しろ」
「……」
クロは不満そうにしつつも大人しく引き下がった。いい子だね。シロいい子いい子しちゃう。
わっしゃわっしゃと撫でてやればクロはうっとりと目を閉じる。かわいい。
「ガウ……」
「ん?」
鳴き声がした方を見ると、エンペラーが恨めしそうにこちらを見ていた。
「ガウ」
「ん? エンペラーも撫でてほしいの? こっちおいで~」
ちょいんちょいんと手招きすればエンペラーが大人しくこちらにやって来る。
「よしよ~し」
エンペラーのフワ毛に指を通す。うん、かわいい。
もちろん同時にクロの頭を撫でることも忘れない。今度はクロが嫉妬しちゃうからね。
慣れてる特殊部隊のみんなは普通の顔してるけど、面識がない騎士さん達はびっくりした顔でこっちを見ている。
「――あの狂犬が大人しく撫でられてる……」
「ブレイク隊長の娘さんパネェ」
「あの狂犬がほんとにワンコみたいだ」
ふふん、クロもエンペラーもかわいいでしょ。
二匹を撫でながら騎士さん達にドヤ顔をする。すると、パパに後ろから持ち上げられた。
「ほら、もう飯の用意ができたようだぞ。ワンコを可愛がるのは後でな」
「は~い」
素直にお返事をすると、パパのお膝の上に乗せられた。シロ一人じゃ机に届かないからね。
「おぉぉぉ~!」
机の上には、なんだかオシャレな食事が並んでいた。お肉もソースがぶっかけじゃなくてお皿の端っこでなんかオシャレな模様になってる。
パンも真っ白くて、見た目だけでふわっふわなのが分かる。
私は隣の席の殿下を見上げた。
「殿下、シロ毒見しようか?」
「シロは肉が欲しいだけだろう。そういうのは信者に貢がせなさい」
「ぶ~」
お肉強奪作戦失敗。
「それに、シロに毒見をさせる気はないぞ。例え毒が入ってたとしてもこいつらが分かるからな」
そう言って殿下はステーキの載ったお皿をクロとエンペラーの鼻先に近付けた。
二匹はスンスンを鼻をひくつかせる。
「……だいじょうぶ……」
「ガウッ!」
エンペラーも大丈夫だと言ってるみたいだ。
「二匹ともありがとう」
全部のお皿に異変がないと分かると、殿下は自分の食事に手を付け始めた。
他の人達はエンペラーとクロがざっと匂いを嗅ぎ、異常がないことを確認して食べ始める。
「いただきます!」
「いただきます」
「パパ、ステーキ食べたい!」
サラダもついてるけど、一番お腹が空いてておいしく感じる時に美味しいお肉を食べたい。そう思ってパパを見上げると、パパはそんなシロの考えなどお見通しとばかりに微笑んでいた。
「はいはい、ほらあ~ん」
「あーん」
厚めなのに柔らかいお肉が口の中に入って来る。
お、おいしい!!
歯茎だけでも噛めちゃうくらい柔らかいし嫌な臭みゼロ! それに、ソースもなんか、なんか深い味がする!!
両手で頬を挟み、キラキラとした目をパパに向ける。
「パパ、シロは感動してる……」
「よかったなぁ。感動してるシロもかわいいぞ」
慈愛の微笑みを向けられる。
「シロちゃ~ん! 約束通り俺のステーキ一切れあげるね!」
アニがステーキの刺さったフォークを差し出してくる。
「はいあ~ん」
「あ~ん」
ぱっかりと口を開け、ステーキを受け入れる。
ん~、おいし~!!
おいしすぎてうっとりしちゃう。これが至福の時ってやつなんだね。
それから、みんながシロに食べ物を分けてくれようとしたけど食べ過ぎちゃうからってパパが止めてた。
ちょっと残念。
11
お気に入りに追加
7,300
あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
生贄令嬢は怠惰に生きる~小動物好き竜王陛下に日々愛でられてます~
雪野ゆきの
恋愛
叔父一家に虐げられていた少女リアはついに竜王陛下への生贄として差し出されてしまう。どんな酷い扱いをされるかと思えば、体が小さかったことが幸いして竜王陛下からは小動物のように溺愛される。そして生贄として差し出されたはずが、リアにとっては怠惰で幸福な日々が始まった―――。
感想、誤字脱字報告、エール等ありがとうございます!
【書籍化しました!】
お祝いコメントありがとうございます!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。