96 / 104
二章
お泊りはテンション上がる④
しおりを挟む「ほかほか」
「お~、疲れはとれたか?」
「うん。でもお湯がしょっぱかった」
「温泉だからな」
風呂上り、パパに髪の毛を拭いてもらう。宿備え付けのバスタオルだけどふわっふわのモコモコで吸水性も抜群だ。
「でも、これは家にあるタオルとあんまり変わんないね」
「当たり前だろ。この柔らか~いぷにぷにほっぺを傷付けないためにタオルはいいの使ってるからな」
長い指でほっぺをツンツンされる。
「そうだったんだ」
「ああ、あいつらの固い肌なんかやすりでも十分だがシロの肌は柔らかいからな」
スリスリと頬同士を擦り合わせられる。猫同士の挨拶みたい。
「お前達仲いいな……」
ソファーで足を組む殿下から声がかけられる。バスローブを着て足を組む様は、正に王族って感じ。
「親子だから当然だろ。な~シロ?」
「ね~」
パパと顔を見合わせる。
するとその時、部屋のドアがノックされた。
コンコン
「誰だ」
すぐさまドアの前に移動するパパ。
「隊長~、アニと愉快な仲間達です! シロちゃんと遊びにきました!!」
「……」
気配を探って安全だと悟ったのか、パパがドアを開ける。
「あ、隊長こんばんは~」
「旅行気分かお前ら」
「そんなことないですよ」
全然そんなことありそうなアニの後ろにはシリル、クロ、エルヴィス、そして足元にエンペラーが揃っていた。
「ウイリアムは殿下の部屋に行きたい気持ちと迷惑を掛けちゃいけない気持ちの狭間で悩んでたから置いてきました」
「よくやった」
奥にいた殿下が言う。殿下といる時のウイリアムはテンションが高すぎて休憩どころじゃないもんね。血縁者だし、気は許してるんだろうけど。
「とりあえず入れてください」
「……まあいいだろう」
このまま帰れって言っても無駄だと長年の経験から察したパパは、大した問答もせずみんなを部屋に入れた。
「いえ~い! シロちゃん女子会しよう女子会」
「シロ以外男とオスしかいないだろ」
エルヴィスが冷静にツッコミを入れる。
クロはエルヴィスの中で男とオスのどっちに分類されてるんだろうね。わりとエンペラーとおんなじ扱いをされることが多いから気になる。聞かないけど。
「じゃあ女子会はいいや。おやつとかジュース持ってきたからお菓子食べておしゃべりしよ~」
アニが持ってる袋を持ち上げる。
どうやらアニとかエルヴィスが持ってる袋の中には食べ物とか飲み物が詰まってるらしい。
「深夜のお菓子――!!」
なんて背徳的な響き……!!
自分の目が輝いたのが分かる。今のシロのおめめならルビーにも負けないよ。
ガバッとパパを見上げる。
「……今日は特別だぞ」
「!! パパだいすき!」
「パパもシロが大好きだぞ」
むぎゅっと抱き上げられた。
「あはは、まだ深夜って言うには早いけど、シロにとっては深夜か」
シリルがニコニコしながら我が物顔でソファーに腰かける。
「あ、殿下も食べますか? 庶民の食べ物しかないですけど」
「いただこう」
そうしてみんながソファーの前のローテーブルの上に飲み物とか軽食、お菓子を広げ始めた。シロ二人分くらいの面積がある、結構広めのテーブルだったけどあっという間にいっぱいになる。
「シロちゃん好きなジュース選びな」
「うん!」
アニに言われ、飲み物のラインナップを見て気付く。
「あれ? お酒ないね。さすがに我慢?」
「まあね。アルコールごときでどうにかなる俺達じゃないけど、外聞が悪いもん」
確かに、護衛が宿で飲酒って何も知らない人からしたら印象が悪すぎるよね。まあジュースでお菓子パーティーもどうかと思うけど。
シリルが回りを見渡す。
「――さて、みんな飲み物は行き渡った?」
「は~い!」
「お~、シロいいお返事。じゃあみんなかんぱ~い!!」
「「「かんぱ~い!!」」」
掛け声の後、みんながコップに口を付ける。
飲み干す勢いでコップを傾けたけど、やっぱり飲み切れなかった。コップの半分くらいジュースが残る。
う~ん、おしいね。
そして、シリルはちゃんとコップの中身を飲み干して一息ついた後、言った。
「――じゃあ、誰が裸踊りする?」
「誰もしねぇよ」
一応王族の前だぞ、とエルヴィス。
「おい誰が一応だ。ボクは王族の中の王族だぞ」
「あ、すいません」
そんなに悪いとも思ってなさそうにエルヴィスがペコリと謝る。
エルヴィスがツッコミをミスるなんて珍しいね。テンションが上がってる証拠かな。
21
お気に入りに追加
7,300
あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
生贄令嬢は怠惰に生きる~小動物好き竜王陛下に日々愛でられてます~
雪野ゆきの
恋愛
叔父一家に虐げられていた少女リアはついに竜王陛下への生贄として差し出されてしまう。どんな酷い扱いをされるかと思えば、体が小さかったことが幸いして竜王陛下からは小動物のように溺愛される。そして生贄として差し出されたはずが、リアにとっては怠惰で幸福な日々が始まった―――。
感想、誤字脱字報告、エール等ありがとうございます!
【書籍化しました!】
お祝いコメントありがとうございます!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。