天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの

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二章

お泊りはテンション上がる④

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「ほかほか」
「お~、疲れはとれたか?」
「うん。でもお湯がしょっぱかった」
「温泉だからな」

 風呂上り、パパに髪の毛を拭いてもらう。宿備え付けのバスタオルだけどふわっふわのモコモコで吸水性も抜群だ。

「でも、これは家にあるタオルとあんまり変わんないね」
「当たり前だろ。この柔らか~いぷにぷにほっぺを傷付けないためにタオルはいいの使ってるからな」

 長い指でほっぺをツンツンされる。

「そうだったんだ」
「ああ、あいつらの固い肌なんかやすりでも十分だがシロの肌は柔らかいからな」

 スリスリと頬同士を擦り合わせられる。猫同士の挨拶みたい。

「お前達仲いいな……」

 ソファーで足を組む殿下から声がかけられる。バスローブを着て足を組む様は、正に王族って感じ。

「親子だから当然だろ。な~シロ?」
「ね~」

 パパと顔を見合わせる。
 するとその時、部屋のドアがノックされた。

 コンコン

「誰だ」

 すぐさまドアの前に移動するパパ。

「隊長~、アニと愉快な仲間達です! シロちゃんと遊びにきました!!」
「……」

 気配を探って安全だと悟ったのか、パパがドアを開ける。

「あ、隊長こんばんは~」
「旅行気分かお前ら」
「そんなことないですよ」

 全然そんなことありそうなアニの後ろにはシリル、クロ、エルヴィス、そして足元にエンペラーが揃っていた。

「ウイリアムは殿下の部屋に行きたい気持ちと迷惑を掛けちゃいけない気持ちの狭間で悩んでたから置いてきました」
「よくやった」

 奥にいた殿下が言う。殿下といる時のウイリアムはテンションが高すぎて休憩どころじゃないもんね。血縁者だし、気は許してるんだろうけど。

「とりあえず入れてください」
「……まあいいだろう」

 このまま帰れって言っても無駄だと長年の経験から察したパパは、大した問答もせずみんなを部屋に入れた。

「いえ~い! シロちゃん女子会しよう女子会」
「シロ以外男とオスしかいないだろ」

 エルヴィスが冷静にツッコミを入れる。
 クロはエルヴィスの中で男とオスのどっちに分類されてるんだろうね。わりとエンペラーとおんなじ扱いをされることが多いから気になる。聞かないけど。

「じゃあ女子会はいいや。おやつとかジュース持ってきたからお菓子食べておしゃべりしよ~」

 アニが持ってる袋を持ち上げる。
 どうやらアニとかエルヴィスが持ってる袋の中には食べ物とか飲み物が詰まってるらしい。

「深夜のお菓子――!!」

 なんて背徳的な響き……!!
 自分の目が輝いたのが分かる。今のシロのおめめならルビーにも負けないよ。
 ガバッとパパを見上げる。

「……今日は特別だぞ」
「!! パパだいすき!」
「パパもシロが大好きだぞ」

 むぎゅっと抱き上げられた。

「あはは、まだ深夜って言うには早いけど、シロにとっては深夜か」

 シリルがニコニコしながら我が物顔でソファーに腰かける。

「あ、殿下も食べますか? 庶民の食べ物しかないですけど」
「いただこう」

 そうしてみんながソファーの前のローテーブルの上に飲み物とか軽食、お菓子を広げ始めた。シロ二人分くらいの面積がある、結構広めのテーブルだったけどあっという間にいっぱいになる。

「シロちゃん好きなジュース選びな」
「うん!」

 アニに言われ、飲み物のラインナップを見て気付く。

「あれ? お酒ないね。さすがに我慢?」
「まあね。アルコールごときでどうにかなる俺達じゃないけど、外聞が悪いもん」

 確かに、護衛が宿で飲酒って何も知らない人からしたら印象が悪すぎるよね。まあジュースでお菓子パーティーもどうかと思うけど。


 シリルが回りを見渡す。

「――さて、みんな飲み物は行き渡った?」
「は~い!」
「お~、シロいいお返事。じゃあみんなかんぱ~い!!」
「「「かんぱ~い!!」」」

 掛け声の後、みんながコップに口を付ける。
 飲み干す勢いでコップを傾けたけど、やっぱり飲み切れなかった。コップの半分くらいジュースが残る。
 う~ん、おしいね。

 そして、シリルはちゃんとコップの中身を飲み干して一息ついた後、言った。

「――じゃあ、誰が裸踊りする?」
「誰もしねぇよ」

 一応王族の前だぞ、とエルヴィス。

「おい誰が一応だ。ボクは王族の中の王族だぞ」
「あ、すいません」

 そんなに悪いとも思ってなさそうにエルヴィスがペコリと謝る。
 エルヴィスがツッコミをミスるなんて珍しいね。テンションが上がってる証拠かな。







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