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二章
シロの恩返し ②
しおりを挟むカチカチ
カリカリ
黙々と手を動かす。
「―――ふぅ」
最後の一つを仕上げて、私は息を吐いた。
シロってばとっても器用かもしれない。予想してた時間よりも早く作業が終了した。あとはみんなに配るだけだ。
ずっと集中してたからちょっと疲れた。
最初っから中身が見えちゃうと面白くないから、何が入ってるか見えないように真っ白い袋に出来上がったものを入れる。一つ一つは小っちゃいんだけどそこそこ数があるから結構かさばった。
「む……」
袋のサイズが思ったより大きい。普通に持つと引きずっちゃうから袋の口を持って肩に担ぐ。袋越しとはいえ贈り物を引きずるのは気が引けるよね。
シロはちゃんと気の遣える五歳児なのだ。
片手でギギギッと扉を開くと、ドアップの人間の目があった。
「ぴぃっ!!!!!」
びっくりして尻餅をつく。扉の隙間から現れる目は怖すぎるよ!!!
心臓はまだドクドクしてるし、ちょっと涙も出ちゃった。
私は元凶をキッと睨み付ける。
「パパ! 脅かさないでよ!」
「悪い悪い。シロのことが心配だったんだ」
全然悪いと思ってなさそうなトーンでパパが謝罪し、尻餅をついた私を起こした。
「ところで、その袋はなんだ?」
「まだ内緒! 中身はみんなが集まってから発表だよ!」
私は袋の口をきゅっと握りしめて中身が見えないようにした。
***
みんなが集まるまで食堂の椅子に座って待つ。あと少しで夕食の時間だから、もうすぐ全員集まる筈だ。
大きな袋を膝の上に抱え、ソワソワと足を動かす。みんな喜んでくれるかな……。
さすがにもう、私が何か企んでいることは勘づいてるみたいだけど、パパはあえて気付かないフリをしてくれている。私がこれだけ分かりやすくソワソワしちゃってもスルーしてくれてるし。できる男だね。
暫くすると全員が揃ったので、私は満を持して話を切り出した。
「みんなきいて~!」
「?」
「シロどうした?」
素直にこっちを見てくれたみんなの前でプレゼントの入った袋を掲げる。
「今日はみんなにプレゼントがあるよ!」
「「「おおおおお!!!」」」
「シロちゃんからのプレゼント!?」
おお……みんなびっくりしてる。この反応だけでも結構満足だなぁ。でも、本題はここからだよね。
袋の中からプレゼントを一つ取り出す。
「日頃の感謝を込めて、みんなにシロお手製のキーホルダーをプレゼントだよ!」
「ああ、さっきはその作業をしてたのか」
「うん。もちろんパパの分もあるからね! びっくりした?」
「ああ、驚いた」
そう言ってパパはどこかホッとしたように微笑んだ。うんうん、パパを締め出したのは反抗期だからじゃないから安心してね。まだまだシロに反抗期は来ません。
エルヴィスが部屋の鍵をなくしたという話を聞いて、少しでもなくしづらくなるようにとキーホルダーを作ることを思いついたのだ。あの後無事に鍵は見つかったみたいだけど、紛失防止にエルヴィスにはぜひ付けてもらいたい。
キーホルダーはそれぞれの瞳の色の小さな石を埋め込んだタグプレートだ。石を埋め込むのと一つ一つに名前を掘るのは自分でやった。
一人一人にキーホルダーを手渡すと、それはもう喜んでくれた。大袈裟なくらい。アニなんか号泣してたし。実はおっさんにも作ってたので渡したら、こちらも大層喜ばれた。予想以上の反応にニマニマしちゃう。
シリルがニヤニヤとエルヴィスを見た。
「これはもうなくせないねぇ」
「なくすわけないだろ。むしろ鍵はなくしてもこれはなくさねぇ」
いや鍵をなくさないために作ったんだけどね。
「はいパパ」
パパにもキーホルダーを手渡す。
「はいパパ」
「ありがとうシロ。なくすのが怖いからこれは金庫に入れておくな」
「いや使ってね?」
万が一なくしちゃってもまた作ればいいから。
なにがなんでも大切にしまい込もうとするパパを説得するのは中々骨が折れました。
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