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二章
お魚がおいしかったので水族館に行きましょう!
しおりを挟む「パパ、このお魚おいしいねぇ」
シロは魚の煮物をニコニコと食べ、そう言った。
「おいしかったなぁ。あ、そうだシロ、水族館に行くか」
「水族館に行くフリとしては最悪ですよ隊長!」
「今日も元気だなエルヴィス」
「パパ、シロ水族館行きたい!」
「おう、じゃあ次の休みに行こうな。お~い、お前らも行きたいやつは一緒に行くぞ~」
「「「行きます」」」
***
そして当日。
「きたぞ~!」
「「「す~いぞ~くか~ん!!」」」
「なんだこの連携」
シロ達特殊部隊の面々は水族館の入り口の前で記念撮影をした。
猫型のリュックを背負ったシロはキャッキャッと楽しそうにはしゃいでいる。
「エンペラーあんまり動いちゃだめよ?」
「ガウ!」
エンペラーはぬいぐるみサイズになってシロに抱かれている。今回はぬいぐるみのフリをするのだ。
「よし、じゃあ中に入るか。シロ、パパと手を繋ぐぞ」
「あい」
シロの小さい手がブレイクの手に包まれる。
「ごー! ごー!」
シロははやる気持ちを抑えられないようで、グイグイとブレイクの手を引っ張って入り口の門をくぐる。
「シロちゃん、最初に何が見たい?」
アニがシロにパンフレットを見せながら聞く。
「シロねぇ、ペンギンとイルカのショーがみたい」
「ああ! ペンギンとイルカが見たいシロちゃんがかわいい!!」
「急にどうしたのアニ」
「いつもの発作だろ」
びっくりするシロとは対照的にブレイクは冷静な目をアニに向ける。
「こんな大人数でゾロゾロと歩いても邪魔だから……って、集団行動ができないやつらはもういなくなってるな」
「イオとかは目を輝かせてどっかに行きましたよ」
「あいつ魚も守備範囲内なのか」
「守備範囲内って言い方止めません?」
語弊を生みそうだ、と微妙な顔をするエルヴィス。
「まあ細かいことは気にするな。イルカショーまではまだ時間があるからペンギンのコーナーに向けてゆっくり見てくか」
「うん」
***
「お~、おっきい水槽」
巨大な水槽の中には様々な種類の魚が泳いでいた。
「すごいねぇ。……この中で爆破させたらどうなるんだろ」
シリルが不穏なことをボソッと呟いた。
「係員さ~ん、ここに普段から爆発物を取り扱ってそうな不審者がいま~す」
「ちょっ隊長!? 冗談じゃないですか! 部下を不審人物呼ばわりしないでくださいよ。最終的に僕の身柄を引き取りにくるのは隊長ですからね!」
「俺だって冗談だ。この近くに係員はいねーよ。焦り過ぎだ」
ブレイクがそう言うとシリルは明らかにホッとした様子を見せた。
シロは水槽に両手をぺったり付けてジーっと中を見つめている。
「ここのお魚全部捌いたら何食分になるんだろうねぇ……」
「係員さーん、ここに猟奇的な思想の幼女がいるんですけどー」
「しろは……かわいいからいいの……」
「これが区別か。世知辛いな」
シロを擁護したクロは魚には興味がないらしく、キラキラした目で水槽を見つめるシロしか見ていない。まあ水族館の楽しみ方は自由だ。
そしてワチャワチャと話しながらシロ達はペンギンがいるエリアに辿り着いた。
「「「……」」」
「あ、イオくんだ~。なんでそんなとこにいるの?」
「しぃちゃん、こっち側は寒いけど心はあったかいよ~」
イオはなぜかガラスの向こう側でペンギン達に囲まれてた。ペンギンの生息環境に合わせて中は雪がそこかしこにあるくらい冷えているのでイオは鼻水を垂らしている。
「ずびっ……あ、君もこっちにおいで」
イオの周りにはペンギン達がまるでおしくらまんじゅうをしているかのようにひしめき合っている。そのペンギン達を撫でてイオの表情筋はデロデロに蕩けている。
「異様に好かれてるな」
「てかなんであいつ怒られないんだ?」
「もうあいつ水族館か動物園で働けばいいんじゃない?」
「イオくんいいな~。シロもペンギンに触りた~い」
皆口々に喋る。
「お、そろそろイルカショーの時間だ」
ブレイクが時計を確認して言った。
「イルカショー! イオくんばいばい!」
「うん、しぃちゃんまた後でね~」
イオに手を振ってその場を後にする。
そしてイルカショーが始まった。
「「「……」」」
「物凄い親しみのある奴がいるなぁ」
「エス~!!」
シロはなぜかイルカと並んで泳いでいるエスに手を振る。
「あいつ何してんだ?」
「イルカみたいに調教されたいんだろ」
スナックをボリボリと食べながら兄弟が会話する。彼らはあまりイルカショーに興味がないようだ。
バッシャアアン!!
「おお、エスが飛んだよパパ」
「飛んだなぁ。でもあいつはまず思考がぶっ飛んでるよ」
「あのお兄さんめちゃめちゃ戸惑ってますよ」
「「「可哀想に」」」
「他人事だな!」
「じゃあエルヴィスがエスを回収してきてやれよ」
「え、無理。あれと知り合いだと思われたくないもん」
「「「……」」」
無言になる大人達。
キャッキャとはしゃぐシロ。
「イルカショー面白かった~!」
満足そうなシロ。
「シロ、本来イルカショーにはイルカ側として人間が出ることはないんだ」
「?」
シロに視線を合わせてエルヴィスが誤解を解こうと熱弁するがシロは首を傾げるばかりだ。もうシロの中でイルカショーとはこういうものだとインプットされてしまったのだろう。
「シロ~エルヴィス~、ごはん食べに行くぞ~」
「は~い」
「シロお寿司がたべたいな~」
こうしてシロの知識は常識からかけ離れていくのである。
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