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二章
猫用爪とぎ
しおりを挟む「し~ぃちゃんっ」
「イオくんおかえり~」
イオくんがおでかけから帰ってきた。その手には大きな包みを持っている。
「しぃちゃんお土産だよ」
「お~! ありがとうイオくん。開けてもいい?」
「もちろんいいよ~」
わたしはワクワクしながら包みを開けた。
「……」
「どう? 実用性重視で選んでいたんだけど」
「イオくん、正直な感想言ってもいい?」
「いいよ」
「控えめに言ってもいらない」
「しぃちゃんは辛辣な幼女だね」
イオくんがプレゼントにくれたのは猫用爪とぎだ。丸い形をしていて、真ん中にいくにつれくぼんでいく作りになっている。
「イオくん、シロはいちおう人間なんだよね」
「まあまあ、一回使ってみてよ」
「どう使えと」
そう聞いてもイオくんはニッコリ笑うだけで答えは返ってこなかった。そして笑顔のイオくんに抱き上げられ、床にある猫用爪とぎの上に置かれた。
円の中心にお尻を置いてちょこんっと座る。
なんで座らされたのか分からなくてイオくんを見上げた。
「上目遣いのしぃちゃんかわいい!!」
イオくんはなんか勝手に満足してる。
爪とぎの円から足がちょっとはみ出しちゃったので、折りたたんで体育座りになる。
「……かわいいな。おいアニ、あのシロの写真撮っといてくれ」
「隊長、アニはもう息をしてません」
エルヴィスの促した方向に目線をやると、鼻血を流したアニがうつ伏せに倒れていた。パパは冷静にアニが持っていたカメラを奪うとレンズをこちらに向けてくる。ぴーす。
「グゥッ、俺にシロちゃんと猫用爪とぎという異色の組み合わせは刺激が強かったみたいだ……」
「おいその血まみれの顔でこっち見んなホラーだから」
パパはアニの顔面に白いハンカチを被せた。白いハンカチなのでみるみるうちに血の赤に染まっていく。こわわ。
「ガウッ」
「あ、エンペラー」
エンペラーがトテトテと歩いてきて爪とぎをくるむように丸くなった。
「エンペラー爪とぎ使う?」
「グルウウ」
首をフリフリしてる。使わないみたい。
わたしはエンペラーの胴体を背もたれにしてくつろぐ体勢に入る。
モフ毛に顔を埋めてエンペラーの呼吸音を聞いてたら、いつの間にか眠っていた。
***
「……しぃちゃん寝ちゃった?」
「寝たな」
ブレイクとイオの視線の先にはスヤスヤと寝息を立てるシロ。
「んんっ……」
シロがもぞもぞと動き、丸い爪とぎの曲線に沿うようにクルンと丸くなった。
爪とぎに載っていたエンペラーの尻尾を枕にしてシロはスヤスヤと眠る。
「かわっ……!!」
「うちの子天使過ぎる」
「癒し」
大人達は揃って手で顔を覆い悶えた。
後日。
シロは爪とぎの上に仰向けで寝ていた。両手足をピンッとバンザイして眠っているので爪とぎからははみ出しているのだが、意地でもそこで寝たいようだ。
シロのお昼寝スペースにはしっかりとイオの買ってきた爪とぎが設置されている。
「思いのほか気に入ったみたいだな」
「さすが俺。プレゼントセンス抜群~」
「爪とぎからはみ出しちゃうシロちゃんかわいいっ……!!!!!」
アニが心臓の辺りを押さえている。
「プレゼントのお礼にしぃちゃんから飴もらっちゃった~」
イオがそう言うと、アニがギンッと血走った目でイオを見た。
「うわこわっ」
「もちろんその飴は祭壇に祀っているんだろうな」
「うわこわ」
「いやでもその飴を食べることで血肉となったシロちゃんの感謝の思いを常に感じることができるのか……」
「拗らせたロリコンこ~わ~い~」
イオはアニと長年共にいるためドン引きまではいかず、ちょい引きくらいだ。
「シロが今の会話聞いてなくてよかったな」
間違いなくドン引きされたぞ、とブレイク。
「にゅむ……」
なんにも聞かずにすんだシロは呑気に寝返りを打った。
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