天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの

文字の大きさ
上 下
59 / 104
二章

猫用爪とぎ

しおりを挟む

「し~ぃちゃんっ」
「イオくんおかえり~」

 イオくんがおでかけから帰ってきた。その手には大きな包みを持っている。

「しぃちゃんお土産だよ」
「お~! ありがとうイオくん。開けてもいい?」
「もちろんいいよ~」

 わたしはワクワクしながら包みを開けた。

「……」
「どう? 実用性重視で選んでいたんだけど」
「イオくん、正直な感想言ってもいい?」
「いいよ」
「控えめに言ってもいらない」
「しぃちゃんは辛辣な幼女だね」

 イオくんがプレゼントにくれたのは猫用爪とぎだ。丸い形をしていて、真ん中にいくにつれくぼんでいく作りになっている。

「イオくん、シロはいちおう人間なんだよね」
「まあまあ、一回使ってみてよ」
「どう使えと」

 そう聞いてもイオくんはニッコリ笑うだけで答えは返ってこなかった。そして笑顔のイオくんに抱き上げられ、床にある猫用爪とぎの上に置かれた。
 円の中心にお尻を置いてちょこんっと座る。
 なんで座らされたのか分からなくてイオくんを見上げた。

「上目遣いのしぃちゃんかわいい!!」

 イオくんはなんか勝手に満足してる。
 爪とぎの円から足がちょっとはみ出しちゃったので、折りたたんで体育座りになる。

「……かわいいな。おいアニ、あのシロの写真撮っといてくれ」
「隊長、アニはもう息をしてません」

 エルヴィスの促した方向に目線をやると、鼻血を流したアニがうつ伏せに倒れていた。パパは冷静にアニが持っていたカメラを奪うとレンズをこちらに向けてくる。ぴーす。

「グゥッ、俺にシロちゃんと猫用爪とぎという異色の組み合わせは刺激が強かったみたいだ……」
「おいその血まみれの顔でこっち見んなホラーだから」

 パパはアニの顔面に白いハンカチを被せた。白いハンカチなのでみるみるうちに血の赤に染まっていく。こわわ。


「ガウッ」
「あ、エンペラー」

 エンペラーがトテトテと歩いてきて爪とぎをくるむように丸くなった。

「エンペラー爪とぎ使う?」
「グルウウ」

 首をフリフリしてる。使わないみたい。
 わたしはエンペラーの胴体を背もたれにしてくつろぐ体勢に入る。

 モフ毛に顔を埋めてエンペラーの呼吸音を聞いてたら、いつの間にか眠っていた。



***




「……しぃちゃん寝ちゃった?」
「寝たな」

 ブレイクとイオの視線の先にはスヤスヤと寝息を立てるシロ。

「んんっ……」

 シロがもぞもぞと動き、丸い爪とぎの曲線に沿うようにクルンと丸くなった。
 爪とぎに載っていたエンペラーの尻尾を枕にしてシロはスヤスヤと眠る。

「かわっ……!!」
「うちの子天使過ぎる」
「癒し」

 大人達は揃って手で顔を覆い悶えた。



 後日。


 シロは爪とぎの上に仰向けで寝ていた。両手足をピンッとバンザイして眠っているので爪とぎからははみ出しているのだが、意地でもそこで寝たいようだ。
 シロのお昼寝スペースにはしっかりとイオの買ってきた爪とぎが設置されている。

「思いのほか気に入ったみたいだな」
「さすが俺。プレゼントセンス抜群~」
「爪とぎからはみ出しちゃうシロちゃんかわいいっ……!!!!!」

 アニが心臓の辺りを押さえている。

「プレゼントのお礼にしぃちゃんから飴もらっちゃった~」

 イオがそう言うと、アニがギンッと血走った目でイオを見た。

「うわこわっ」
「もちろんその飴は祭壇に祀っているんだろうな」
「うわこわ」
「いやでもその飴を食べることで血肉となったシロちゃんの感謝の思いを常に感じることができるのか……」
「拗らせたロリコンこ~わ~い~」

 イオはアニと長年共にいるためドン引きまではいかず、ちょい引きくらいだ。


「シロが今の会話聞いてなくてよかったな」

 間違いなくドン引きされたぞ、とブレイク。

「にゅむ……」

 なんにも聞かずにすんだシロは呑気に寝返りを打った。




しおりを挟む
感想 356

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

生贄令嬢は怠惰に生きる~小動物好き竜王陛下に日々愛でられてます~

雪野ゆきの
恋愛
叔父一家に虐げられていた少女リアはついに竜王陛下への生贄として差し出されてしまう。どんな酷い扱いをされるかと思えば、体が小さかったことが幸いして竜王陛下からは小動物のように溺愛される。そして生贄として差し出されたはずが、リアにとっては怠惰で幸福な日々が始まった―――。 感想、誤字脱字報告、エール等ありがとうございます! 【書籍化しました!】 お祝いコメントありがとうございます!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。