58 / 104
二章
おとこまえはだれだ!? せんしゅけん!!
しおりを挟む「さあやって参りました第一回男前選手権☆おそらくこの第一回が最初で最後でしょう☆審査員のシロさん、どうですか?」
「うむ! なにも見えない!!」
「座高がな……。シロやっぱりパパのお膝の上においで」
「あい」
わたし達審査員は長机の前の椅子に座っている。だけど、わたしが一人で座ったら机がわたしの頭の上にきちゃった。
審査するどころか机の裏しか見えなかったので早々にパパのお膝に移動する。うん、落ち着く。
審査方法はメロリが女子から見たときめき度、パパが一般人に擬態できているか、そしてわたしが面白さをそれぞれ五点満点で評価し、合計点の高い上位三名が採用という流れだ。
「それじゃあさっそく、いってみよ~」
シロの合図でトップバッターが入室してきた。
「失礼します」
トップバッターは安心と安定のエルヴィスだった。
タキシードを着てるエルヴィスはいつもの五割増しでかっこよかった。
「エルヴィスいつもよりかっこいい!!」
「お、ありがとなシロ」
手袋をしたエルヴィスに頭を撫でられる。嬉しいけどシロは素手の方が好きだな~。
エルヴィスの点数はメロリが4点、パパが5点、わたしが1点で合計10点だった。
「シロ……」
「だっていつもよりかっこいいけど面白くはなかったんだもん」
「確かにな」
わたしの意見にパパが同意してくれた。
「パパが5点なのはいいとして、メロリはなんで4点なの?」
「女子的には普段と違う服装をしてるだけでギャップ萌えだからポイント高いの☆」
「なるほど」
なっとくの理由。
「じゃー俺もう着替えてきていいですか?」
「いや、エルヴィスはこのまま審査員席で待機だ。幸い椅子も一脚空いている」
「え? なんでですか?」
「ツッコミ要員に決まってるだろ。なんのためにエルヴィスを最初にしたと思ってるんだ」
「俺だけ順番が決まってたからなんでかと思えば……」
エルヴィスは文句を言いつつも大人しく審査員席に座った。
「次のかた~」
「シロ、それじゃあ病院じゃないか?」
エルヴィスはさっそく自分の仕事を始めたようだ。
カツンカツンと靴の音をさせて次の人が入ってくる。
エルヴィスと同じくタキシードを身に纏ったその人はわたしの前で跪いた。服装で一つだけおかしいのは真紅のバラを口に咥えていることだ。
「シロちゃん、シロちゃんが望むなら俺は真正のロリコンになってみせるよ」
「それ元々じゃん」
部屋に入ってきたのはアニだった。
「てかなんでバラを口に咥えてんだよお前は。何気取りだ」
「フッ、シロちゃんの王子様……なんつって」
「勝手に言って勝手に照れんな」
エルヴィス絶好調だなぁ。
「このバラはシロちゃんにプレゼントするよ」
「え、シロいらない」
「ガーン」
「アニの涎がついてるのは別にいいけど、シロのお部屋花瓶ないんだもん」
「アニの涎はいいのか」
エルヴィスがそう聞いてくる。
「うん、アニはシロのお兄ちゃんみたいなものだから」
「し、シロちゃん……!!」
そう言ったらアニがボロボロ涙をこぼし始めた。
「アニ……? パパ、アニが……」
振り返ってパパの顔を見ると、パパも片手で両目を覆ってた。
「パパ……?」
「すまんシロ、不意にな……。俺も年かな」
「? パパはまだまだ若いよ」
「ああ、ありがとう」
なんだこの空気。
「にゅにゃ?? まあとりあえず判定ドンッ!」
メロリ4点、パパ2点、シロが4点。合計は10点だ。兄弟で同じ点数だね。
「メロリ4点?」
アニと相性悪いのに。
「ええ、不覚にも今のシロちゃんとのやり取りがグッときたわ。というかこの4点は実質シロちゃんにあげたの」
「……ありがとう?」
首を傾げつつもお礼を言っておいた。
今日はみんなよく分からない日だな。
「次のかた~」
「退場!!」
次の人の姿が見えた瞬間、エルヴィスが退場を宣告した。
『なんで!?』
「なんで!? じゃねぇだろシリル。自分の格好見てみろ」
『これが僕の正装だよ』
シリルは右手には火のついたロウソク、左手には手榴弾を持ち、その顔はガスマスクに覆われていた。そしてその服装はタキシードというよりは軍服といた感じだ。
『ご自由にごツッコミ下さい』
「セルフサービスか! ガスマスクのせいで声がぐぐもって聞こえづらいし。退場!!」
『ちぇ~』
「でも面白かったからシロは5点あげちゃう!」
「シロありがと~」
ガスマスク男は手を振りながら退室していった。
「次のかた~」
「あ、クロ…………いつも通りのかっこうだね」
「……たきしーど、いきぐるしかった……」
クロはいつも通り隊服を身に纏って部屋に入ってきた。
「でもそれじゃあ選外だぞクロ」
「……ふんっ」
「あ! お前今フンッってしやがったな!!」
エルヴィスにぷいってしたクロはそのまま歩いてきてわたしとパパの椅子の横に座り込んだ。
よしよしと頭を撫でてあげる。
「まず点数をつけられる奴がなかなかいないな……」
「いつものことだろ」
「あ、そういえば常識人枠のウイリアムとセバスは?」
「ああ、忘れてたんだがあいつらは他国の王子とその従者だからな。普通にパーティに出席するらしい」
「そういえばそうだったね。……じゃあ審査員はウイリアム達がいたじゃん。メロリいらなかった?」
「なんでそんなこと言うのシロちゃん!! 私に会いたかったでしょ~!?」
そう言ってギュウギュウ抱き着いてくるメロリにクロが威嚇してる。
「じゃあ次いってみよ~」
次に入ってきたのはイオくんだ。イオくんはもう当たり前のようにタキシードじゃなくて動物の絵がプリントされたTシャツを着ている。
「これが俺の正装だから」
「今日はマイ正装を披露する場じゃないんだよ」
「香水の代わりにマタタビを自分に振りかけてきたんだ」
「ちょっと俺の話聞いて? ……って、シロが吸い寄せられるように近付いていってる!?」
ハッ!
エルヴィスの声で我に返った。無意識にイオくんに寄って行ってたよ。
わたしはすぐにパパに回収され、お膝の上に戻ってきた。
そして中々審査できない審査は順調に進んでいった。
エスの時だけはなぜかパパに目隠しされた。
なぞだね。
***
「結果はっぴょ~!!」
「パチパチパチ」
「選ばれた三人はエルヴィスとアニとジロー!!」
「選考理由は?」
「ちゃんとタキシードを着てたから」
「ハードルひっくいなぁ」
最初からタキシードを着られる人を選べば良かったね。
メロリはお仕事の関係ですぐにここを発たなきゃいけないらしい。
「せっかく来たのにもう行っちゃうの?」
「シロちゃ~ん!!! 少しの間でも会えてよかった☆また来るからね!!!」
「うん、待ってる」
こうしてメロリはまた去っていった。
アニがボソッと呟く。
「あいつ今日取り立てて何かしたっけ?」
「シッ! それは言っちゃいけないお約束だよ!!」
20
あなたにおすすめの小説
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?
水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」
「はぁ?」
静かな食堂の間。
主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。
同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。
いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。
「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」
「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」
父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。
「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」
アリスは家から一度出る決心をする。
それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。
アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。
彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。
「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」
アリスはため息をつく。
「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」
後悔したところでもう遅い。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
異世界でも保育士やってます~転生先に希望条件が反映されてないんですが!?~
こじまき
ファンタジー
【読んでいただいて♡いただいて、ありがとうございます。王城編準備中のため、12月12日からしばらく更新お休みします。考えてた構成が「やっぱなんか違う」ってなり、慌てております…汗】
「こんな転生先だなんて聞いてないっ!」六年間付き合った彼氏に婚約を解消され、傷心のまま交通事故で亡くなった保育士・サチ。異世界転生するにあたり創造神に「能力はチートで、広い家で優しい旦那様と子だくさんの家庭を築きたい」とリクエストする。「任せといて!」と言われたから安心して異世界で目を覚ましたものの、そこはド田舎の山小屋。周囲は過疎高齢化していて結婚適齢期の男性なんていもしないし、チートな魔法も使えそうにない。創造神を恨みつつマニュアル通り街に出ると、そこで「魔力持ち」として忌み嫌われる子どもたちとの出会いが。「子どもには安心して楽しく過ごせる場所が必要」が信条のサチは、彼らを小屋に連れ帰ることを決め、異世界で保育士兼りんご農家生活を始める。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。