天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの

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二章

おとこまえはだれだ!? せんしゅけん!!

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「さあやって参りました第一回男前選手権☆おそらくこの第一回が最初で最後でしょう☆審査員のシロさん、どうですか?」
「うむ! なにも見えない!!」
「座高がな……。シロやっぱりパパのお膝の上においで」
「あい」

 わたし達審査員は長机の前の椅子に座っている。だけど、わたしが一人で座ったら机がわたしの頭の上にきちゃった。
 審査するどころか机の裏しか見えなかったので早々にパパのお膝に移動する。うん、落ち着く。

 審査方法はメロリが女子から見たときめき度、パパが一般人に擬態できているか、そしてわたしが面白さをそれぞれ五点満点で評価し、合計点の高い上位三名が採用という流れだ。

「それじゃあさっそく、いってみよ~」

 シロの合図でトップバッターが入室してきた。

「失礼します」

 トップバッターは安心と安定のエルヴィスだった。
 タキシードを着てるエルヴィスはいつもの五割増しでかっこよかった。

「エルヴィスいつもよりかっこいい!!」
「お、ありがとなシロ」

 手袋をしたエルヴィスに頭を撫でられる。嬉しいけどシロは素手の方が好きだな~。


 エルヴィスの点数はメロリが4点、パパが5点、わたしが1点で合計10点だった。

「シロ……」
「だっていつもよりかっこいいけど面白くはなかったんだもん」
「確かにな」

 わたしの意見にパパが同意してくれた。

「パパが5点なのはいいとして、メロリはなんで4点なの?」
「女子的には普段と違う服装をしてるだけでギャップ萌えだからポイント高いの☆」
「なるほど」

 なっとくの理由。

「じゃー俺もう着替えてきていいですか?」
「いや、エルヴィスはこのまま審査員席で待機だ。幸い椅子も一脚空いている」
「え? なんでですか?」
「ツッコミ要員に決まってるだろ。なんのためにエルヴィスを最初にしたと思ってるんだ」
「俺だけ順番が決まってたからなんでかと思えば……」

 エルヴィスは文句を言いつつも大人しく審査員席に座った。

「次のかた~」
「シロ、それじゃあ病院じゃないか?」

 エルヴィスはさっそく自分の仕事を始めたようだ。

 カツンカツンと靴の音をさせて次の人が入ってくる。
 エルヴィスと同じくタキシードを身に纏ったその人はわたしの前で跪いた。服装で一つだけおかしいのは真紅のバラを口に咥えていることだ。

「シロちゃん、シロちゃんが望むなら俺は真正のロリコンになってみせるよ」
「それ元々じゃん」

 部屋に入ってきたのはアニだった。

「てかなんでバラを口に咥えてんだよお前は。何気取りだ」
「フッ、シロちゃんの王子様……なんつって」
「勝手に言って勝手に照れんな」

 エルヴィス絶好調だなぁ。
 
「このバラはシロちゃんにプレゼントするよ」
「え、シロいらない」
「ガーン」
「アニの涎がついてるのは別にいいけど、シロのお部屋花瓶ないんだもん」
「アニの涎はいいのか」

 エルヴィスがそう聞いてくる。

「うん、アニはシロのお兄ちゃんみたいなものだから」

「し、シロちゃん……!!」

 そう言ったらアニがボロボロ涙をこぼし始めた。

「アニ……? パパ、アニが……」

 振り返ってパパの顔を見ると、パパも片手で両目を覆ってた。

「パパ……?」
「すまんシロ、不意にな……。俺も年かな」
「? パパはまだまだ若いよ」
「ああ、ありがとう」

 なんだこの空気。

「にゅにゃ?? まあとりあえず判定ドンッ!」

 メロリ4点、パパ2点、シロが4点。合計は10点だ。兄弟で同じ点数だね。

「メロリ4点?」

 アニと相性悪いのに。

「ええ、不覚にも今のシロちゃんとのやり取りがグッときたわ。というかこの4点は実質シロちゃんにあげたの」
「……ありがとう?」

 首を傾げつつもお礼を言っておいた。
 今日はみんなよく分からない日だな。


「次のかた~」
「退場!!」

 次の人の姿が見えた瞬間、エルヴィスが退場を宣告した。

『なんで!?』
「なんで!? じゃねぇだろシリル。自分の格好見てみろ」
『これが僕の正装だよ』

 シリルは右手には火のついたロウソク、左手には手榴弾を持ち、その顔はガスマスクに覆われていた。そしてその服装はタキシードというよりは軍服といた感じだ。

『ご自由にごツッコミ下さい』
「セルフサービスか! ガスマスクのせいで声がぐぐもって聞こえづらいし。退場!!」
『ちぇ~』
「でも面白かったからシロは5点あげちゃう!」
「シロありがと~」

 ガスマスク男は手を振りながら退室していった。

「次のかた~」


「あ、クロ…………いつも通りのかっこうだね」
「……たきしーど、いきぐるしかった……」

 クロはいつも通り隊服を身に纏って部屋に入ってきた。

「でもそれじゃあ選外だぞクロ」
「……ふんっ」
「あ! お前今フンッってしやがったな!!」

 エルヴィスにぷいってしたクロはそのまま歩いてきてわたしとパパの椅子の横に座り込んだ。
 よしよしと頭を撫でてあげる。

「まず点数をつけられる奴がなかなかいないな……」
「いつものことだろ」

「あ、そういえば常識人枠のウイリアムとセバスは?」
「ああ、忘れてたんだがあいつらは他国の王子とその従者だからな。普通にパーティに出席するらしい」
「そういえばそうだったね。……じゃあ審査員はウイリアム達がいたじゃん。メロリいらなかった?」
「なんでそんなこと言うのシロちゃん!! 私に会いたかったでしょ~!?」

 そう言ってギュウギュウ抱き着いてくるメロリにクロが威嚇してる。

「じゃあ次いってみよ~」

 次に入ってきたのはイオくんだ。イオくんはもう当たり前のようにタキシードじゃなくて動物の絵がプリントされたTシャツを着ている。

「これが俺の正装だから」
「今日はマイ正装を披露する場じゃないんだよ」
「香水の代わりにマタタビを自分に振りかけてきたんだ」
「ちょっと俺の話聞いて? ……って、シロが吸い寄せられるように近付いていってる!?」

 ハッ!
 エルヴィスの声で我に返った。無意識にイオくんに寄って行ってたよ。
 わたしはすぐにパパに回収され、お膝の上に戻ってきた。

 そして中々審査できない審査は順調に進んでいった。

 エスの時だけはなぜかパパに目隠しされた。
 なぞだね。



***



「結果はっぴょ~!!」
「パチパチパチ」

「選ばれた三人はエルヴィスとアニとジロー!!」
「選考理由は?」
「ちゃんとタキシードを着てたから」
「ハードルひっくいなぁ」

 最初からタキシードを着られる人を選べば良かったね。

 メロリはお仕事の関係ですぐにここを発たなきゃいけないらしい。

「せっかく来たのにもう行っちゃうの?」
「シロちゃ~ん!!! 少しの間でも会えてよかった☆また来るからね!!!」
「うん、待ってる」

 こうしてメロリはまた去っていった。

 アニがボソッと呟く。

「あいつ今日取り立てて何かしたっけ?」
「シッ! それは言っちゃいけないお約束だよ!!」



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