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こぼれ話
これもまた醍醐味
しおりを挟む「デートと言えば待ち合わせだ。じゃ~シロ、明日の朝十一時に待ち合わせだよ!」
殿下はそう言って颯爽と帰って行った。
そして次の日。
「……どこで待ち合わせ……?」
「そういえば言ってなかったな」
殿下はデートと言ってたけど私は幼女なのでもちろんパパも同伴だ。
デートということで、可愛いワンピースを着てパパに髪の毛をまきまきしてもらったところでふと気が付いた。もう殿下に聞きにいく時間はない。
「……とりあえず殿下の部屋に行ってみるか」
「うん」
「え? 殿下いないのか?」
「はい、『シロとデートだ』と言って先程出ていかれましたよ」
「入れ違いか……」
「もどる?」
「そうだな」
私達は隊舎に戻ることにした。
一方殿下。
「あ、シロに待ち合わせ場所を伝えるの忘れてた。まあ特殊部隊の隊舎まで迎えに行けばいいか」
そうして隊舎に到着した殿下をエルヴィスが出迎えてくれた。
「え? さっき出て行った?」
「はい、殿下を迎えに行きましたよ」
「そうか。……一応聞くが、アニはどうして倒れているんだ?」
隊舎の玄関には鼻にティッシュを詰めて地べたに寝かされているアニがいた。
「ああ、いつも通りシロの可愛さにやられたんですよ」
「確かにいつも通りだね」
「でも今日のシロはデート仕様なので控えめに言って激カワですよ」
「控えめに言わないと?」
「マジモンの天使です」
「ただいま~エルヴィス。殿下きてる~?」
「あ、シロに隊長。ついさっき大慌てでシロを迎えに行っちゃったよ」
「またすれ違ったか」
きゅ~とシロのお腹の虫が鳴いた。
「……パパ、シロお腹空いた」
「昼飯食べて殿下が戻ってくるの待つか」
「はぐれたら動かないのが一番だよね」
殿下は再び王城の方に戻っていた。
「あ、殿下」
「天使を見なかったか」
「残念ながら本物の天使はまだ死んだことないので見てないです」
「そうか」
「ですが殿下の大好きなロリッ子天使なら隊舎に戻って行きましたよ」
「ああ、それは多分ボクの探している天使だな」
「『どうせまたすれ違うだろうから隊舎で待ってるね!』と伝言を預かってます」
「天使は予言が得意だな」
殿下が再び隊舎に着くと、シロが殿下に飛びついた。
「殿下あああああ!! 待ってたよおお!! シロは殿下が心配で水も喉を通らなかった!!」
「可愛いほっぺにご飯粒がついてるよ。お腹空いちゃったんだね」
そう言って殿下はシロについたご飯粒を取ってあげた。
「今日は髪の毛を巻いてるんだな。可愛い」
「パパがやってくれたの!!」
「器用だなブレイク……」
「シロのためなら当然だ」
ブレイクは胸を張った。
そして殿下は不審者に視線を向ける。
「アニはなんで室内でサングラスをしてるんだい?」
「シロちゃんが眩しすぎて」
「なるほど」
「なるほどなんですか殿下……」
エルヴィスがボソリと突っ込む。
「さて、時間は短くなっちゃったけど街に行こうか」
「殿下ごはんは?」
「街で適当に買い食いするよ」
そう言って殿下はシロと手を繋いだ。
「買い食いする暇あるかな……」
ブレイクがボソリと呟いた。
「あのねぇ、シロ、今日回りたいお店が二十軒くらいあるの!」
「に、二十軒……?」
「だめ?」
「いや、門限までに二十軒全て回りきってみせよう」
そう言った殿下の表情は少し引きつっていた。
***
「あ、殿下、デートはどうでしたか?」
「楽しかったが疲れた……。ボクも机仕事ばかりじゃなくて鍛えないとな」
「陛下みたいにですか?」
「あれはやり過ぎだ」
殿下の脳裏には全身筋肉の父親が浮かんでいた。
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