天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

こぼれ話

パパの惚気～桜を添えて～

　


　うちの娘は天使だ。

　可愛くて素直で賢くて、この子の親になれた俺は前世でどんな徳を積んだのだろう。
　胡坐をかいた俺の上で丸くなって眠るシロを撫でて幸福を噛み締める。俺の毎日のケアの甲斐あって髪の毛はさらっさらだ。きっとシロの髪の毛が白いのは天使だったころの羽が髪の毛に変わったからだな。
　この重みも温もりも全部が可愛い。

「シロ寝ちゃったんですか？」

　エルヴィスがシロの寝顔を覗き込んできた。

「ああ、日差しが気持ちよかったんだろうな」
「せっかくの花見なのに食うだけ食って寝ましたね」
「子どもなんてそんなもんだろ」

　今日は特殊部隊プラス殿下で花見に来ている。花見というか食べて飲んで騒ぎにきたようなもんだが。

「隊長、酒のおかわりいりますか？」
「……いや、ジュースをくれ」
「分かりました」

　あんまり酒飲むとシロが「パパくちゃい」と鼻を詰まんで近寄ってこなくなるからな。あれは地味にダメージくらう。それでも夜になると顔を顰めながらも布団に潜り込んでくるからシロは可愛いんだが。
　ジュースを注いでくれたエルヴィスに礼を言う。それにしても、エルヴィスはいつからこんなまともになったんだっけか。やっぱり弟がアレだと兄はしっかりしなきゃと思うのだろうか……。
　そんなことを考えていると、クロとエンペラーが寄ってきた。

「しろ……ねてる……？」
「ガウッ」
「ああ。寝てるから静かにな」
「ん……」

　クロがコクリと頷いて、エンペラーを枕にシロの隣で丸くなった。まあつまり俺の隣だな。
　この二匹はもうすっかりセットだな。ワンコ同士波長が合うんだろう。
　なんとなく、クロの頭をワシワシと撫でてみた。

「？　なに……？」
「……うむ、お前もシロの十分の一くらいは可愛いな」

　戦闘時は全く可愛くないけど。
　すると、クロはコテンと首を傾げ、真顔で言った。

「……それ、そうとうかわいい……」
「……」

　そうだった、こいつも割とシロ信者だったな。
　クロはそれだけ言うと、早々に眠りに入った。


「あ！　シロちゃん寝ちゃったんですか？」
「アニ……」
「一緒に遊ぼうと思ったのに～」

　こいつは大分拗らせてるな。
　試しにシロと遊べず拗ねるアニの頭を撫でてみた。

「へっ！？　うわぁ！　何すんですか隊長！？」

　シロやクロのように扱われたことで照れたのか、アニが微かに赤くなった。

「……ふむ、お前もシロの百分の一くらいは可愛げがあるな」
「いやそれ女子の中でもトップクラスに可愛いですよ」

　アニは真顔だった。

　うん、あれだな、うちの子はモテモテだな。
　シロは将来絶対美女になるだろうからな、その気になれば一国くらい傾けられるんじゃないだろうか。そういう意味では将来が楽しみでもあり不安でもある。
　変態が寄ってこないことを願うばかりだ。
　
　






　不意に、シロが寝返りを打って俺の膝から転がり落ちた。その衝撃で目が覚めたらしい。

「にゃ？」

　シロは何が起きたか分からないといった顔で目を真ん丸にしている。
　なぜか両手足を突き出している娘を俺は抱き上げた。


　うちの娘は天使だ。