天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの

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こぼれ話

シロにお着換えさせたい!

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「しぃ~ろぉ~」

 殿下が遊びに来た。その腕にはたくさんの袋が提がっている。

「なぁに殿下?」
「ファッションショーしよっか」
「……へ?」





「いや~シロに似合いそうな服を見たらつい買っちゃって~。たまりにたまってるんだよね~」
「いやこれとか明らかに特注だろ」

 ブレイクが天使の羽がついたワンピースを袋から取り出す。

「殿下、シロに着せたい服を買っておいて着せ替えするタイミング窺ってたな?」
「なんのことだか。シロおいで~」

 シロを膝にのせてとぼける殿下。


「ってことで、第一回! シロに似合う洋服を選ぶのはだれだ!? 選手権~。ほらシロ、パチパチして?」
「お~」

 素直に拍手するシロ。

「判定は服を着てもらった後、シロが一番気に入った服を選んだ人の優勝だ。優勝者はシロと一日デート権でどう?」

「じゃあ参加するひと……」
「呼びましたか?」
「君はそうだよねぇ」

 光の速さでアニが飛んできた。

「まぁ参加者はクジ引きにするけど」
「え!?」
「そんな何十回も着替えたらシロが疲れちゃうだろ? だから参加希望者の中から選抜するよ」
「グゥッ」

 真っ当な理由にアニは何も言えなかった。





「じゃあシロ、みんなにクジを配ってくれるか?」
「は~い」

 シロはクジの入った箱を持ってみんなの所を回る。

「当たりの紙には当たりって書いてるから」
「よっしゃ~!!」

 当たりを引いたのかアニが全力で喜んでいる。

 結局当選者はアニ、エルヴィス、イオ、殿下、ブレイクだった。

「あれ? 殿下と隊長クジ引いてなくないですか?」
「ボクは主催者枠」
「俺は父親枠だ」
「ずるい……」

 クロが拗ねてムッと眉を寄せた。クロの手にはクシャクシャになった白紙の紙が握られている。
 ブレイクはそんなクロの頭を撫でた。

「それじゃあクロに俺の枠を譲ってやろう」
「!」
「いいのかブレイク?」
「俺は毎日シロの着る服を選んでるからな。それに、どうせ優勝なんてできない」
「? とりあえずありがと、たいちょ……」
「うむ」

 ブレイクは満足げに頷く。
 その展開が面白くないのはハズレを引いた他の特殊部隊の隊員達だ。

「クロずる~い」
「こうしょうの、けっか……」
「お前は拗ねてただけだろ~」

 うりうりとシリルがクロの頬を揉む。

 殿下がパンッと手を叩いた。

「さあ、不正うんぬんは置いておいて、さっそくシロに着せたい服を選ぼうか」






「じゃ~まずはエントリーナンバーワン! アニセレクト!」
「ノリノリだなシリル」

 司会を始めたシリルの合図に合わせて、簡易的なカーテンからシロがひょっこり顔を出した。

「~~~っ~!! やっぱりシロちゃんかわいいね」

 アニがシロを抱き上げて頬ずりする。
 シロが着ているのは真っ白いゴスロリ服だ。もちろんまんべんなくフリルがあしらわれている。

「アニならあの天使の羽がついたやつ選ぶと思ったんだけど、意外だね」
「なに言ってんだよシリル。シロちゃんには元々天使の羽が生えてるだろ」
「お前の方がなに言ってんだ。常日頃からそんな幻覚見えてたのかよ」



「気を取り直して次! エントリーナンバーツーのエルヴィスセレクト~!」

 制服をモチーフにした服のシロが簡易カーテンから出てきた。頭には小さな帽子もついている。

「かわいい」
「安定にかわいい」
「割と無難な選択だね」
「常識的ってことだろ!」

 エルヴィスはなぜかむんっと胸を張る。
 ブレイクがシロを抱き上げた。

「まあ、うちの娘はなにを着てもかわいいからな」
「ふぃぃ」

 ブレイクがシロの背中を撫でると、シロは気持ちよさそうに目を閉じてそれを受けた。

「はいはい、父娘でまったりしてないで次いくよ~」



「エントリーナンバースリー! イオセレクト~! って、なんか普通の服だね……」

 イオが選んだのはシンプルなパーカーとショートパンツだった。
 
「にゃんこには本来洋服なんて必要ないからね。ゴテゴテした装飾なんかじゃなくてシンプルなものを添えてあげるくらいが調度いいんだよ」
「今度みんなで眼科に行こうね」

 シリルは優しい顔で言った。アニとイオは強制的に連れていかれるだろう。

「たまにはこういうのもいいな。シロ本体のかわいさが引き立つ」

 ブレイクはパサリと、シロにフードを被せた。



「じゃ~次! エントリーナンバーフォー、殿下セレクト~!」

「やー!」
「グハァ!! かわいい……!」

 シロは先が三つに分かれた槍のようなものでアニをつついた。シロが纏っているのは悪魔をモチーフにしたワンピースだ。腰の辺りでは黒い小さな羽がパタパタと動き、頭には尖った角がついたカチューシャを付けている。

「なんてかわいい小悪魔ちゃんなんだ!!」

 アニは突かれた腰ではなく胸を押さえている。
 殿下がシロを抱き上げた。

「シロ悪魔はどんな悪いことをするんだ?」
「えっとね、痩せたい人を太らせて、太りたい人を痩せさせるの!」
「結構嫌な悪事だね」



「じゃ~最後! エントリーナンバーファイブ! クロセレクト!」

「わん!」
「しろ……おそろい……」

 クロはシロにギュウウウと抱きつき、頬を擦り付ける。

「クロは自分がワンコな自覚あったんだねぇ。シロに黒いワンコっぽい服着せておそろいって」
「いおうるさい……」
「完全にクロが着せたい服だな」
「おれの、かって……」

 クロはエルヴィスからツンと顔をそらす。
 後ろからもにゅもにゅと頭に付けた犬耳を揉むブレイクにシロはされるがままだ。
 イオもエアでクロの犬耳がある辺りを揉んでいる。やはり眼科は必要なようだ。

「これいいな……」
「だろう、手触りに拘った」
「さすが、分かってるな殿下」



***




「結果はっぴょ~!!」
「おお~!」

 シロがパチパチと拍手する。
 シリルがシロに即席で作ったマイクを向けた。

「それじゃあシロ、優勝者は~!?」



「殿下!」



「おお! 決めては?」
「シロは全部好きだし、先読みができる幼女だから!」
「?」

 シリルが首を傾げた。

「殿下は汚い大人だったってことだな」

 不思議そうなシリルにブレイクが答えた。

「殿下は優勝する条件を何て言った?」
「『シロが一番気に入った服を選んだ人の優勝』、ですか?」
「ああ。そもそもこのラインナップを選んで買ってきたのは誰だ?」
「殿下です」
「つまり?」
「シロがどの服を選んだとしても、最初に選んだのは殿下だって言ってゴリ押ししようとしてたったことですか!?」

 殿下はニッコリと笑う。

「なんて汚い大人だ……」
「腹黒」
「きたない……」

 総ブーイングだ。

 ブレイクは殿下を見て軽く肩をすくめた。

「全く、シロと遊びに行きたいなら素直にそう言え」

「でも楽しかっただろう?」







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