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こぼれ話
お泊まり会がしたい!!
しおりを挟む「お泊まり会がした~い!!」
シロはふんすふんすと鼻息荒く宣言した。
「お泊まり会?」
「ああ、昨日なんかの本で読んでからやるって聞かなくてなぁ」
聞き返したエルヴィスにブレイクが答える。
「みんなで枕の飛距離を競ってね~、見回りの先生に見つかったら延々と怪談話を聞かされるの!!」
「シロはなんの本を読んだんだ?」
シロは明らかにズレた知識を身に付けていた。
「別にお泊まり会やるのはいいですけど、みんなで寝れる広さの場所なんてありましたっけ?」
「使っていない室内訓練場があるだろう」
「ああ」
特殊部隊専用の室内訓練場があるにはあるのだが、誰かしらがすぐに壊し、修理代がばかにならないので今はほとんど使われていない。
「じゃあ今日はそこに布団敷いてみんなで寝っか~」
ブレイクがそう言うと、あちらこちらから賛成の声が上がった。
「じゃあ準備すっか」
「「「はーい」」」
一番最初にアニがキラキラと瞳を輝かせて布団を運んできた。その後にゾロゾロと隊員達が続く。
「シロちゃんとお泊まり会ができるなんて! 生きててよかった!! 隣で寝てもいい!?」
「別にい~よ~」
シロがそう返すと、アニの表情がパアアアアと輝くような笑顔になった。
「あ! おっさん!」
「よぉちびっこ。きてやったぞ~」
「きやぁぁ!!」
おっさんは出会い頭にシロを高い高いして喜ばせる。
もはや完全に近所の遊んでくれるおじさんポジに収まったおっさんだった。
そしてやいのやいのと準備を進めるうちに、すっかり日が暮れた。
「だいいっか~い! 枕投げたいか~い!!!」
「「「ウオオオオオオオオ!!!」」」
皆お泊まり会ということでテンションが上がっているのか、いつも以上にはしゃいでいる。
普段無表情のクロもどこか楽しそうな雰囲気を醸し出して自陣に枕を運び込んでいた。
ちなみにおっさんは人外レベルの枕投げに参加できる気がしなかったので審判をすることになった。
チーム分けとしては、シロ、ブレイク、クロ、エンペラー達VSアニ、エルヴィス、シリル、エス達となっている。
セバスとウイリアムは殿下に駆り出されているので不参加だ。
「それじゃあ、はじめっ!」
おっさんが合図をした瞬間、弾丸のような速さで各陣営から枕が繰り出された。
「……俺参加しなくてよかったー……」
おっさんが思わず本音を呟いた。
皆が枕で弾いたりで布団でガードする中、一人だけ異色の行動にでる者がいた。
「ぐふっ、ぐあっ!! ふふふ、いい攻めです。だがまだまだこんなもんじゃ僕は満足しませんよ!!」
「満足してなくても失格だアホ」
「さっさと場外出ろ」
「次のゲームまでお預けということですか……。だがそれもまたよし!!」
「さっさといけドM」
率先して枕に当たりにいったエスは即失格となった。
「お命頂戴する!!」
「ぐあっ!!」
アニがシロチームの一人に枕を当てた。
シロは自分と頭一つしか大きさの違わない枕をギュウウと抱きしめ、敵陣地のアニを見上げた。
「お命、ちょーだい?」
「ぐふっ!!」
アニが胸元を押さえて崩れ落ちた。
シロはジト目でアニにぽすんっと枕を当てる。
「アニ、アウト~」
「後悔はない!!」
「……変態は枕投げに向かないな……」
パパがボソリと呟いた。ほんとにその通りだと思う。
「ガウッ!」
エンペラーが後ろ足で枕を蹴飛ばした。
「おおっ! エンペラーかっこいい!!」
シロの声援にエンペラーはモフンと誇らしげに胸を張った。
「シロっ! よそ見するな!」
「あ」
ボフンッとシロの顔面に枕が衝突した。その衝撃でシロはぽてんっと後ろに倒れる。
「シロ? 大丈夫か?」
ブレイクはシロの顔面にのった枕をどかしてやった。
「……ここはどこ。シロはだれ?」
「シロって言ってんじゃねぇか」
むにっとブレイクに頬を摘ままれたシロは場外に出ていった。
こうして白熱した第一回戦の勝者はブレイクのチームだった。
続いて第二回戦。
またもやシロがよそ見をしているうちに枕が襲いかかった。
「しろっ……!」
枕は、シロに覆い被さったクロの背中に当たった。
「クロ!」
「しろ……ぶじで……よかった…………ガクッ」
「クロォォォォォォォォォ!!!」
「おーいクロー、茶番演じてないで早く場外でろー」
おっさんのやる気のない声がクロに掛けられた。
こうして皆で枕投げに熱中し、夜が更けていった。
翌日の朝。
隊員達が中々起きてこないので、セバスとウイリアムは室内訓練場まで来ていた。
ガラガラと扉を開ける。
「……うわ」
「野生の獣が暴れまわったんですかねぇ」
グチャグチャの布団にあちこちに散乱した枕。
もはや誰がどの布団かという概念もないのだろう。手や足が重なるように密集して特殊部隊の面々が眠っている。
「み~んな幸せそうな顔で寝てますねぇ」
「写真でも撮っとくか」
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