天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの

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こぼれ話

浮気、それは許されざる行為

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「お、シロおかえり。散歩は楽しかったか? ……なんだそれ」

 留守番をしていたブレイクにシロは答えた。


「ねこ!!」













「うっわ! 何かここ一帯だけジメジメしてるんだけど。何? 梅雨なの?」

 そう言ったアニの足元には二匹のワンコ。地の底まで落ち込んでいるクロとエンペラーだ。

「お前らどうしたの? 今日はシロちゃんのお散歩について行ったんだからご機嫌かと思ったのに」

 首を傾げるアニの耳に入ってきたのは楽しげなシロの笑い声。


「かわいい~! やらかい! もふもふ!」

(あ、なるほど)

 白い子猫と戯れるシロを見たアニは一瞬で察した。
 つまりは、猫に居場所をとられたワンコ達は猛烈に嫉妬を覚えている訳だ。

「シロ、負け犬共が落ち込んでるぞ。鬱陶しいから慰めてやれ」
「うん、わかったパパ。エンペラーとクロもこっちおいで」

 シロは片手に猫を抱いたまま二匹を呼び寄せた。

「「……」」

 シロに呼ばれるのは嬉しいが、やはり猫の存在が気にくわないエンペラーとクロは、自然と足取りが遅くなる。


 ワンコ組が食堂でのシロのお昼寝スポットまで来ると、シロは地べたに座るクロの膝の上に乗った。そのことでクロの機嫌が上方修正される。

「もうここでは飼えないから、明日殿下の知り合いの猫好きの人に引き取ってもらうの。だからにゃんこと遊べるのは今日だけなのよ?」

「「!」」

 それを聞いたワンコ組の心が一気に広くなったのは言うまでもないだろう。先程までふて寝をしていた二匹はシロと殿下の会話を聞いていなかったのだ。




 無事いつも通り遊び始めたシロ達を見てエルヴィスはホッと胸を撫で下ろした。


「……なあアニ、改めて疑問に思ったんだが、何でエンペラーは息をするようにシロの言葉を理解してるんだろうな」
「……実は毛深い人間なんじゃね?」
「だとするとエンペラー狼のフリをして幼女のペットになっている全裸の変態ってことになるぞ」
「ごめん聞かなかったことにしてあまりにもエンペラーがかわいそ過ぎるわ」

 アニはテキトーな返答をしたのを猛烈に後悔した。




「なぁ~ん」
「かわいいねぇ」

 シロは子猫の頭を撫で、首をかいてやる。

「ゴロゴロ」
「ふへへ~」

 喉を鳴らす子猫にシロもふにゃりとした笑顔を見せる。


「……かわいい」
「ガウッ」
「可愛いな」
「天使がいる」

 上からクロ、エンペラー、ブレイク、アニの発言だ。

 結局この日は、シロは子猫を、それ以外は子猫と戯れるシロを存分に堪能した。
 アニ製作のアルバムがさらに分厚くなったのは言うまでもないだろう。





 ***




「うぅっ、ふぇ」
「し~ろ、ほら、猫にバイバイしなくていいのか?」
「すっ、すりゅ……ひっく」

 子猫と別れる日、シロはブレイクに抱かれて必死に涙を堪えていた。だが、シロはまだまだ幼い。目から雫が流れ落ちるのを止めることはできていなかった。

「ばいばい、ひっく、げんきでねぇ……うぇぇぇぇん」
「にぃ~……」

 シロはもはやボロ泣きしながらチョコチョコと子猫に手を振っている。
 大人達の心は少し痛みを感じたどころではなく、激痛に苛まれていた。

「好きな時に遊びに来て下さい」
「歓迎しますよ」
「うぅっ、ふぁい」

 子猫を引き取った夫婦は耐えきれなくなったのか、胸を押さえながら早々に帰路に着いた。


 子猫の姿が見えなくなると、シロは声をあげて泣き始める。

「うええええええん! びいいいいいいい!!」
「おーよしよし。今度パパと遊びに行こうな~」
「ふぇ、ぱぱぁ」
「よーしよし、よく我慢したなぁシロ。えらいぞ~」
「うん……ひっく」

 ブレイクに背中をポンポンと叩かれ、シロは若干落ちつきを取り戻してきていた。

 エンペラーとクロはシロを抱くブレイクの周りをオロオロと旋回している。
 そんなワンコ組にシロは声をかけた。

「くろ、えんぺらー」
「! しろ、どうした?」
「ガウッ!」

 ソワソワと落ちつきのない二匹にしろは言う。

「あのね、くろとえんぺらーは、ずっとしろのそばにいてくれる?」
「!! もちろん」
「ガウッ! ガウッ!」
「えへへ」

 シロはふにゃりと笑い、泣き疲れたのかそのまま眠ってしまった。










 その後、シロの言葉をそのまま真に受けた二匹は物理的にシロのそばを離れず、ブレイクが強制的に引き剥がすまでどこへ行くにもついて回った。



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