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第二章 ~遥かなる高みへ~
第四十二話 ~マルク領防衛戦・阿修羅~
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神発暦1220年
シュテンの体は怒鬼化の時の比ではないほど巨大化する。その大きさは優に10メートルはあろう程である。そして、変化はそれだけにとどまらずシュテンの顔の横に鬼の顔が二つ出現し、両肩からは新たに2本ずつ計4本の腕が出現し、3つの顔と6本の腕を持つ超巨大な異形のオーガがそこに顕著する。
「ああ。力がみなぎってくる。死ぬ前に言いたいことはあるか?」
シュテンの体から6本の巨大な大剣を生み出される。
「悪いな。シュテンよ。あいにく私の命は陛下のためにあるのでな、このような所で死ぬつもりはないのだよ」
「そうか」
シュテンの一番上の右腕がラドルとホルンのいる場所に振るわれる。そのひと振りで大地に大きな亀裂が入る。ラドルはその攻撃を守護魔法・王の盾で防いでいた。
「いつまでも、持つと思うなよ」
シュテンはそう言うと、6本の腕に握られている大剣を盾に対して何度も振り下ろす。
「ホルンよ」
「何でしょうか父上」
「持ってきてはいるのか?」
「......はい」
返事を返すのに少しの間が空く。
「使ってよいぞ」
「いいのですか?」
「相手がこれだけ巨大な敵だ、他の被害など考えてはいられない。それに私がいる」
「はっ」
ラドルの言葉を受け、ホルンは鎧の中から一つの巻物を取り出す。
「おらおら、どうしたぁ」
シュテンの連撃についに盾が砕ける。
「少しは楽しめたぞ。じゃあな」
シュテンはそう言うと最後の一撃とばかりにラドルとホルンのいる場所に大剣を振り下ろす。その時だった。ホルンは巻物をシュテンの方に向け開く、するとそこから巨大な業火が発生しシュテンの巨大な体を飲み込む。
その業火で一瞬にして焼け野原とかすが、騎士たちに被害はなかったが、周囲にいた魔物たちは一瞬にして焼け死んでいた。
ホルンの出した魔法は、召喚魔法であり、召喚もとは巻物に封印してあった軍隊級放出魔法・業火滅却であり弟であるガランの魔法であった。
そして騎士たちが無事だったのはラドルが守護魔法・守護領域を周囲にいる騎士にまでその範囲を広げたためである。
当然直撃であれば、範囲を広めたことで効果が薄まっており皆焼け死んでいただろうが、今回は相手が巨大であったため上空に向け魔法が放たれ、衝撃と放射熱程度で済んでいたため全員を守護することが出来ていた。
「今度こそ終わりだな」
巨大なシュテンは焼け焦げ体の表層は完全な灰と化していた。そして、その巨体が崩れ倒れる。
「ホルンよ。町に急ぐぞ」
「はっ」
先ほどの魔法の一撃で左翼の魔物はほぼ壊滅状態となり、ただの殲滅戦となることは明白であった。そのため煙の上がっている町に急ぎ戻り状況を見る必要があった。
「寂しいこと言うなよ。まだ殺り合おうぜ」
突然の死体からの言葉にラドルとホルンは振り向く。すると、見る見るうちに灰となったからだが修復され元の巨大な阿修羅へと姿を戻してゆく。
「馬鹿な。なんだその再生力は、どんな強力な【自己再生】持ちでも灰となれば、もう再生は起こらないはずだ」
ラドルとホルンはそのありえない再生能力に驚き震える。
「一度灰になって死んだからな、主に頼んだら【白】が俺の能力を強化してくれたんだよ」
「なんだと!、【白】とは何者だ?」
「お前に教える意味はない」
ラドルの問いをシュテンは突き放す。
「あれがお前たちの全力なら逃げたほうがいい。俺を殺したいなら灰すら残さず消さないとな。ガハハハ」
シュテンは高らかに笑い声を上げ巨大な大剣を振る。驚いていたラドルはその動きを察知できず、防御力の低い、分隊級守護魔法・大地の壁を発動するのが限界であった。
守護魔法・大地の壁は地面から壁を出す魔法である。
「ぐはぁっ」
守護魔法・大地の壁はシュテンの斬撃に耐えきれずいとも簡単に砕け、ラドルとホルンは吹き飛ばされる。その際にラドルは背骨を、ホルンは足をやられ動けなくなる。
「おお、すまない。やると言ってから振れば良かったか?」
シュテンは笑い気味の声で、重厚な足音を響かせラドルとホルンへと近づいてゆく。
「父上。立てますか?」
「すまないな。どうやらここまでのようだ。家は任せたぞ」
「何をいいますか!」
「ご無事ですか?。キオッジャ様。ホルン様」
ラドルとホルンの戦いを邪魔しないために後方で見守っていたコールが、急ぎ駆け寄ってきていた。
「コール。ホルンは足をやられただけだ。何とか動けている。ホルンを連れて逃げろ」
「父上を置いてはいけません。コール、父上を共に」
「ホルン!」
ホルンの必死の声をラドルが遮る。
「頼んだぞ」
ラドルはそういうと、コールをその強い瞳で見つめる。コールもそれにこたえるかのように、ホルンを抱え上げ走り逃げる。
「父上!。コール。おろせ」
ホルンはコールに抱え上げられながら声を飛ばす。
「おいおい、仲間に見捨てられちまったな。ラドルよ。もう一度聞く、最後の言葉はあるか?」
「王よ。先に行く私をお許しください」
シュテンを大剣がラドルを襲った。
その時だった、戦場に雷と突風が吹き荒れたのは。
父の名を叫んでいたホルンさへもその光景に言葉が一瞬言葉が出なかった。
「いやはや、危ないところでしたな。キオッジャ殿。遅れて大変申し訳ございませぬ」
「今まで役に立たなかった分だけ。挽回させていただきます。キオッジャ伯爵」
シュテンの攻撃が当たっておらず、突然の突風に目を閉じていた。しかし、その目を開き、目にした光景に対し言葉を発した。
「ようやく来たか。俺の復讐の時間が」
ラドルは助けてもらった恩人にお礼を言った。
「助かりました。ウルフリック殿」
「いえ、こちらこそでございます。付与魔法・支え風」
ラドルは魔法をかけられると、先ほどまで立ち上がることのできなかった体が自身の意思で浮き上がった。付与魔法・支え風は体を動かさずに自身の意思で浮遊して動くことが出来るようにする魔法である。
そして、ラドルはその魔法を使い後方へと去っていく。
「あとは頼みます」
「もちろんでございます」
ラドルを見届けた後、ウルフリックはシュテンを見る。
「はてさて、なかなか骨のありそうな魔物ですな。ドナー殿」
「ええ、とても。この今にも湧き出そうな自身に対する怒りのすべてをあれにぶつけましょう。ウルフリック殿」
ドナーとウルフリックは互いに声を掛け合うと魔法を唱えた。
「付与魔法・風魔の鎧、付与魔法・風魔の剣」
「付与魔法・雷精の鎧、付与魔法・雷精の剣」
シュテンの体は怒鬼化の時の比ではないほど巨大化する。その大きさは優に10メートルはあろう程である。そして、変化はそれだけにとどまらずシュテンの顔の横に鬼の顔が二つ出現し、両肩からは新たに2本ずつ計4本の腕が出現し、3つの顔と6本の腕を持つ超巨大な異形のオーガがそこに顕著する。
「ああ。力がみなぎってくる。死ぬ前に言いたいことはあるか?」
シュテンの体から6本の巨大な大剣を生み出される。
「悪いな。シュテンよ。あいにく私の命は陛下のためにあるのでな、このような所で死ぬつもりはないのだよ」
「そうか」
シュテンの一番上の右腕がラドルとホルンのいる場所に振るわれる。そのひと振りで大地に大きな亀裂が入る。ラドルはその攻撃を守護魔法・王の盾で防いでいた。
「いつまでも、持つと思うなよ」
シュテンはそう言うと、6本の腕に握られている大剣を盾に対して何度も振り下ろす。
「ホルンよ」
「何でしょうか父上」
「持ってきてはいるのか?」
「......はい」
返事を返すのに少しの間が空く。
「使ってよいぞ」
「いいのですか?」
「相手がこれだけ巨大な敵だ、他の被害など考えてはいられない。それに私がいる」
「はっ」
ラドルの言葉を受け、ホルンは鎧の中から一つの巻物を取り出す。
「おらおら、どうしたぁ」
シュテンの連撃についに盾が砕ける。
「少しは楽しめたぞ。じゃあな」
シュテンはそう言うと最後の一撃とばかりにラドルとホルンのいる場所に大剣を振り下ろす。その時だった。ホルンは巻物をシュテンの方に向け開く、するとそこから巨大な業火が発生しシュテンの巨大な体を飲み込む。
その業火で一瞬にして焼け野原とかすが、騎士たちに被害はなかったが、周囲にいた魔物たちは一瞬にして焼け死んでいた。
ホルンの出した魔法は、召喚魔法であり、召喚もとは巻物に封印してあった軍隊級放出魔法・業火滅却であり弟であるガランの魔法であった。
そして騎士たちが無事だったのはラドルが守護魔法・守護領域を周囲にいる騎士にまでその範囲を広げたためである。
当然直撃であれば、範囲を広めたことで効果が薄まっており皆焼け死んでいただろうが、今回は相手が巨大であったため上空に向け魔法が放たれ、衝撃と放射熱程度で済んでいたため全員を守護することが出来ていた。
「今度こそ終わりだな」
巨大なシュテンは焼け焦げ体の表層は完全な灰と化していた。そして、その巨体が崩れ倒れる。
「ホルンよ。町に急ぐぞ」
「はっ」
先ほどの魔法の一撃で左翼の魔物はほぼ壊滅状態となり、ただの殲滅戦となることは明白であった。そのため煙の上がっている町に急ぎ戻り状況を見る必要があった。
「寂しいこと言うなよ。まだ殺り合おうぜ」
突然の死体からの言葉にラドルとホルンは振り向く。すると、見る見るうちに灰となったからだが修復され元の巨大な阿修羅へと姿を戻してゆく。
「馬鹿な。なんだその再生力は、どんな強力な【自己再生】持ちでも灰となれば、もう再生は起こらないはずだ」
ラドルとホルンはそのありえない再生能力に驚き震える。
「一度灰になって死んだからな、主に頼んだら【白】が俺の能力を強化してくれたんだよ」
「なんだと!、【白】とは何者だ?」
「お前に教える意味はない」
ラドルの問いをシュテンは突き放す。
「あれがお前たちの全力なら逃げたほうがいい。俺を殺したいなら灰すら残さず消さないとな。ガハハハ」
シュテンは高らかに笑い声を上げ巨大な大剣を振る。驚いていたラドルはその動きを察知できず、防御力の低い、分隊級守護魔法・大地の壁を発動するのが限界であった。
守護魔法・大地の壁は地面から壁を出す魔法である。
「ぐはぁっ」
守護魔法・大地の壁はシュテンの斬撃に耐えきれずいとも簡単に砕け、ラドルとホルンは吹き飛ばされる。その際にラドルは背骨を、ホルンは足をやられ動けなくなる。
「おお、すまない。やると言ってから振れば良かったか?」
シュテンは笑い気味の声で、重厚な足音を響かせラドルとホルンへと近づいてゆく。
「父上。立てますか?」
「すまないな。どうやらここまでのようだ。家は任せたぞ」
「何をいいますか!」
「ご無事ですか?。キオッジャ様。ホルン様」
ラドルとホルンの戦いを邪魔しないために後方で見守っていたコールが、急ぎ駆け寄ってきていた。
「コール。ホルンは足をやられただけだ。何とか動けている。ホルンを連れて逃げろ」
「父上を置いてはいけません。コール、父上を共に」
「ホルン!」
ホルンの必死の声をラドルが遮る。
「頼んだぞ」
ラドルはそういうと、コールをその強い瞳で見つめる。コールもそれにこたえるかのように、ホルンを抱え上げ走り逃げる。
「父上!。コール。おろせ」
ホルンはコールに抱え上げられながら声を飛ばす。
「おいおい、仲間に見捨てられちまったな。ラドルよ。もう一度聞く、最後の言葉はあるか?」
「王よ。先に行く私をお許しください」
シュテンを大剣がラドルを襲った。
その時だった、戦場に雷と突風が吹き荒れたのは。
父の名を叫んでいたホルンさへもその光景に言葉が一瞬言葉が出なかった。
「いやはや、危ないところでしたな。キオッジャ殿。遅れて大変申し訳ございませぬ」
「今まで役に立たなかった分だけ。挽回させていただきます。キオッジャ伯爵」
シュテンの攻撃が当たっておらず、突然の突風に目を閉じていた。しかし、その目を開き、目にした光景に対し言葉を発した。
「ようやく来たか。俺の復讐の時間が」
ラドルは助けてもらった恩人にお礼を言った。
「助かりました。ウルフリック殿」
「いえ、こちらこそでございます。付与魔法・支え風」
ラドルは魔法をかけられると、先ほどまで立ち上がることのできなかった体が自身の意思で浮き上がった。付与魔法・支え風は体を動かさずに自身の意思で浮遊して動くことが出来るようにする魔法である。
そして、ラドルはその魔法を使い後方へと去っていく。
「あとは頼みます」
「もちろんでございます」
ラドルを見届けた後、ウルフリックはシュテンを見る。
「はてさて、なかなか骨のありそうな魔物ですな。ドナー殿」
「ええ、とても。この今にも湧き出そうな自身に対する怒りのすべてをあれにぶつけましょう。ウルフリック殿」
ドナーとウルフリックは互いに声を掛け合うと魔法を唱えた。
「付与魔法・風魔の鎧、付与魔法・風魔の剣」
「付与魔法・雷精の鎧、付与魔法・雷精の剣」
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