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第二章 ~遥かなる高みへ~
第四十三話 ~マルク領防衛戦・雷神と風神~
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神発暦3512年
ドナーとウルフリックがキオッジャ伯爵の救援に駆けつける少し前。
硬化している二人の体が徐々に動くようになっていく。
「良かった。あなたが二人を避難させておいてくれていたお陰です」
「お礼なら私よりも、もっと的確な人物がいるわ」
「どういう意味でしょうか?」
「本人から言わないのであれば、私が言うことはなにもないわ」
「かはっ。はぁっ、はぁっ、」
完全に二人の体の硬直が溶け、息を吹き返した。そんな二人にマーシャが語りかける。
「大丈夫?。ドナー?ウル?」
「ああ、助かったよ。マーシャ」
「全く、あのような攻撃は初めてでした。マーシャ殿はあの魔物をご存知で?」
ウルフリックの質問にマーシャは首を横に振り答える。
「いいえ。でも、あの魔物は最後に自分がジャヴェスト神殿のダンジョンマスターだと語ったは」
「なんと!。して、その魔物はまさか」
「倒せてるわけ無いでしょ。私の一族でも禁忌になっている場所の王よ」
「では何があったので」
「突然、勇者が来たとかで帰っていったわ」
「どういうことですかな?」
「それは私も」
マーシャが答えようとしたとき、割って入る人物がいた。
「目的はただの時間稼ぎだそうよ」
「パレス殿!」
「パレスさん!。なぜここに?」
「なぜ、そうね。私がここに来てあなた達二人を戦えるようにするのが役目なのだそうよ」
「どういう」
ドナーが質問しようとしたとき、パレスが液体の入った瓶の蓋を開け、ドナーとウルフリックに無理やり飲ませた。
「今のは?」
「魔法薬よ。どう?。体調は」
「おお!、すごい。さっきまでの疲労感が嘘のようだ」
「それだけでなく、魔力が上がってる?」
「当たり前よ。だれが作ったと思っているの。ほら、もう十分動けるでしょ。急いで戦場に戻りなさい二人共。今ならまだ間に合うそうよ」
「先程から誰かからなにか言われたような口調ですが」
「今はそんなことは気にせずに急ぎなさい。私とマーシャは街に戻らないといけないの」
「え?」
ドナーとウルフリックはその言葉の真意を知るため、街の方角を見ると煙が上がっていた。
「そんな、私達も急いで街に」
「ドナー。その必要はないわ。逃げ切れてなかった人たちはちゃんと守られているから」
「?」
「それに、私とマーシャが行くの、あなた達はこの戦場を終わらせに行きなさい。任せたわよ」
「任されました」
「それと、一つ忠告があるわ」
「?」
*
そして現在。ドナーとウルフリックは全身に魔法の鎧を見に纏い、手に持った剣には魔法の付与がかかっている。
ウルフリックの姿は風で作り上げた西洋の鎧のような見た目をしている。それに対しドナーの姿は鎧というにはあまりに軽装で全身に電気が走っているのはわかるが、背には蝶のような羽を生やし、尻尾が生えた。まさに精霊を具現化した妖精のような見た目をしている。
「ウルフリック殿。急ぎあのデカブツを蹴散らしますぞ」
「ええ、残りはあれだけですからな」
ウルフリックが行ったように、すでにこの戦場にいる魔物はただ一匹【鬼王シュテン】だけであった。ドナーとウルフリックの二人でこの戦場にいる魔物を一層していたのだった。
「さすがパレス殿の魔法薬ですな。まだまだ、魔力が余っておる」
「ええ」
「おい。お前ら覚えてるぞ。あのときの二人だろ?」
シュテンが話しかけてくる。
「ん?」
「そうか。確かになあの時とは姿が違いすぎるか、再び名乗ろう我が名はシュテン。復讐者だ!」
「シュテンだと!。あの時確かに消滅したはずだ」
「ああ、だが、こうしてさらなる力を得て蘇ったのだ。今度こそ貴様ら二人の息の根を止めてやろう」
シュテンはその巨体とは思えないほどの速い速度で手に持った武器を振る。そのいくつもの常人では反応できない速度の斬撃がドナーとウルフリックのもとに飛んでいく。
しかし、その斬撃がまるで意に返さず華麗に避けながらシュテンのまで高速で移動し反撃をする。
「ゲビィター流・鎌鼬」
「ゲビィター流・雷突」
風の最上位付与を受けたウルフリックの剣はいとも簡単にシュテンの横に切断する。そして、ドナーの雷の最上位付与を受けた剣による突きは、シュテンの真上から突き刺され、シュテンの巨体を貫通する。
「くそがっ!」
シュテンは罵声を飛ばしながら、すぐに動かせる上半身の腕で二人を斬りつけるが、二人のあまりの速さに当てることができない。そして、シュテンは自己再生能力で体を再生していくが、ドナーとウルフリックの追撃が襲う。
「ゲビィター流・千刃風」
ウルフリックの無数の斬撃がシュテンを細切れにする。そして、
「精霊よ我に答えよ」
ドナーは魔法陣を展開し精霊を呼び出す。
(やあやあ、今回は随分と感覚が短いじゃないか)
(ああ、最近治安が悪くてな)
ドナーは契約を唱える。
「神域より来たりし、雷の上位精霊よ、我に敵を殲滅せし真槍を与えよ」
(【力を授けし我が名は】)
(【ライプツィヒ】)
「精霊魔法・神槍雷皇」
雷で来た巨大な槍が細切れのシュテンに止めの一撃を放つ。そして雷の轟音が戦場に響き渡る。
あと残ったのは完全な灰と化したシュテンの成れの果てのみであった。
「これで終わりだといいのだが」
「ですな」
戦いに勝利したはずのドナーとウルフリックはなぜか魔装を解除せずに灰の山を見つめる。すると、灰が生きているかのように一つに収束してゆく。
「パレス殿の言うとおりでしたな」
「ああ、あれは間違いなく。【鬼神】だ」
二人の目の先には、二人よりも小さくなった阿修羅姿のシュテンがいた。しかし、その体から発せられる気迫は今までの比ではないほどに膨れ上がっていた。
「話が確かなら。あれが最後の復活。しかし」
「果たして二人でやれるか疑問ですな」
ドナーとウルフリックがキオッジャ伯爵の救援に駆けつける少し前。
硬化している二人の体が徐々に動くようになっていく。
「良かった。あなたが二人を避難させておいてくれていたお陰です」
「お礼なら私よりも、もっと的確な人物がいるわ」
「どういう意味でしょうか?」
「本人から言わないのであれば、私が言うことはなにもないわ」
「かはっ。はぁっ、はぁっ、」
完全に二人の体の硬直が溶け、息を吹き返した。そんな二人にマーシャが語りかける。
「大丈夫?。ドナー?ウル?」
「ああ、助かったよ。マーシャ」
「全く、あのような攻撃は初めてでした。マーシャ殿はあの魔物をご存知で?」
ウルフリックの質問にマーシャは首を横に振り答える。
「いいえ。でも、あの魔物は最後に自分がジャヴェスト神殿のダンジョンマスターだと語ったは」
「なんと!。して、その魔物はまさか」
「倒せてるわけ無いでしょ。私の一族でも禁忌になっている場所の王よ」
「では何があったので」
「突然、勇者が来たとかで帰っていったわ」
「どういうことですかな?」
「それは私も」
マーシャが答えようとしたとき、割って入る人物がいた。
「目的はただの時間稼ぎだそうよ」
「パレス殿!」
「パレスさん!。なぜここに?」
「なぜ、そうね。私がここに来てあなた達二人を戦えるようにするのが役目なのだそうよ」
「どういう」
ドナーが質問しようとしたとき、パレスが液体の入った瓶の蓋を開け、ドナーとウルフリックに無理やり飲ませた。
「今のは?」
「魔法薬よ。どう?。体調は」
「おお!、すごい。さっきまでの疲労感が嘘のようだ」
「それだけでなく、魔力が上がってる?」
「当たり前よ。だれが作ったと思っているの。ほら、もう十分動けるでしょ。急いで戦場に戻りなさい二人共。今ならまだ間に合うそうよ」
「先程から誰かからなにか言われたような口調ですが」
「今はそんなことは気にせずに急ぎなさい。私とマーシャは街に戻らないといけないの」
「え?」
ドナーとウルフリックはその言葉の真意を知るため、街の方角を見ると煙が上がっていた。
「そんな、私達も急いで街に」
「ドナー。その必要はないわ。逃げ切れてなかった人たちはちゃんと守られているから」
「?」
「それに、私とマーシャが行くの、あなた達はこの戦場を終わらせに行きなさい。任せたわよ」
「任されました」
「それと、一つ忠告があるわ」
「?」
*
そして現在。ドナーとウルフリックは全身に魔法の鎧を見に纏い、手に持った剣には魔法の付与がかかっている。
ウルフリックの姿は風で作り上げた西洋の鎧のような見た目をしている。それに対しドナーの姿は鎧というにはあまりに軽装で全身に電気が走っているのはわかるが、背には蝶のような羽を生やし、尻尾が生えた。まさに精霊を具現化した妖精のような見た目をしている。
「ウルフリック殿。急ぎあのデカブツを蹴散らしますぞ」
「ええ、残りはあれだけですからな」
ウルフリックが行ったように、すでにこの戦場にいる魔物はただ一匹【鬼王シュテン】だけであった。ドナーとウルフリックの二人でこの戦場にいる魔物を一層していたのだった。
「さすがパレス殿の魔法薬ですな。まだまだ、魔力が余っておる」
「ええ」
「おい。お前ら覚えてるぞ。あのときの二人だろ?」
シュテンが話しかけてくる。
「ん?」
「そうか。確かになあの時とは姿が違いすぎるか、再び名乗ろう我が名はシュテン。復讐者だ!」
「シュテンだと!。あの時確かに消滅したはずだ」
「ああ、だが、こうしてさらなる力を得て蘇ったのだ。今度こそ貴様ら二人の息の根を止めてやろう」
シュテンはその巨体とは思えないほどの速い速度で手に持った武器を振る。そのいくつもの常人では反応できない速度の斬撃がドナーとウルフリックのもとに飛んでいく。
しかし、その斬撃がまるで意に返さず華麗に避けながらシュテンのまで高速で移動し反撃をする。
「ゲビィター流・鎌鼬」
「ゲビィター流・雷突」
風の最上位付与を受けたウルフリックの剣はいとも簡単にシュテンの横に切断する。そして、ドナーの雷の最上位付与を受けた剣による突きは、シュテンの真上から突き刺され、シュテンの巨体を貫通する。
「くそがっ!」
シュテンは罵声を飛ばしながら、すぐに動かせる上半身の腕で二人を斬りつけるが、二人のあまりの速さに当てることができない。そして、シュテンは自己再生能力で体を再生していくが、ドナーとウルフリックの追撃が襲う。
「ゲビィター流・千刃風」
ウルフリックの無数の斬撃がシュテンを細切れにする。そして、
「精霊よ我に答えよ」
ドナーは魔法陣を展開し精霊を呼び出す。
(やあやあ、今回は随分と感覚が短いじゃないか)
(ああ、最近治安が悪くてな)
ドナーは契約を唱える。
「神域より来たりし、雷の上位精霊よ、我に敵を殲滅せし真槍を与えよ」
(【力を授けし我が名は】)
(【ライプツィヒ】)
「精霊魔法・神槍雷皇」
雷で来た巨大な槍が細切れのシュテンに止めの一撃を放つ。そして雷の轟音が戦場に響き渡る。
あと残ったのは完全な灰と化したシュテンの成れの果てのみであった。
「これで終わりだといいのだが」
「ですな」
戦いに勝利したはずのドナーとウルフリックはなぜか魔装を解除せずに灰の山を見つめる。すると、灰が生きているかのように一つに収束してゆく。
「パレス殿の言うとおりでしたな」
「ああ、あれは間違いなく。【鬼神】だ」
二人の目の先には、二人よりも小さくなった阿修羅姿のシュテンがいた。しかし、その体から発せられる気迫は今までの比ではないほどに膨れ上がっていた。
「話が確かなら。あれが最後の復活。しかし」
「果たして二人でやれるか疑問ですな」
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