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第二章 ~遥かなる高みへ~
第四十一話 ~マルク領防衛戦・鬼と大地~
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神発暦3512年
「このまま結界を持続させたまま、できる限り体力を削る。魔法体用意」
シュテンを閉じ込めた魔法部隊は次の段階としてシュテンの体力減少を狙う。しかし、隊長が命令をくだそうとしたとき、シュテンを閉じ込めている結界のとなりに突如として砂煙が上がる。
その砂煙から突如として斬撃が飛び、隊長とその後方にいる魔法部隊の者達を一刀両断する。斬撃の威力はそれにはとどまらずに軍の後方にまでとどき、巨大な盾により終息する。
そして、結界に閉じ込められたシュテンの横にはもう一体のオラクル・オーガが立っていた。
「おお!。兄鬼か」
「お前はいつも相手をなめすぎだ。我らは一度敗れているのだぞ」
「す、すまねえ」
シュテンはゼストから威圧に圧されながら謝罪する。
「しかし、とは言ったものの強者は一人だけか」
「兄鬼。どこにいるんだ?。雑魚しか見えねえぞ」
「お前は近くしか見ようとしないから気付けないのだ。群れの後方にはそれを指揮する強者がいるものだ」
「ほう!」
シュテンはゼストに言われ、ゼストの目線の先を見る。そして、
「俺も見つけた!。兄鬼。あのデカい盾のとこにいるやつだろ」
「ああ。あいつが俺を殺した奴かもな」
ゼストはそういうと太刀を上にあげると再び振り下ろす。その斬撃は大地を抉り、その風圧は囲んでいる騎士達を彼方へと吹き飛ばす。
しかし、それほどの威力をもった斬撃であっても、その巨大な盾を壊すには至らない。
「なるほど」
ゼストはそういうと、今度は太刀を横に振り、シュテンを閉じ込めている結界を切り裂く。
「感謝する兄鬼」
「次はないぞ。【黒】に感謝しておけ」
「分かったよ。それとさ、俺があいつとやって良いのか?」
「好きにしろ。俺には別にやることがある」
「なんだ。兄鬼は自分を殺した奴と戦いたいんじゃなかったのか」
「あれは違う」
ゼストはそういうと、一瞬にしてその姿を消す。
「さっきので何がわかったのか俺にはさっぱりだが、まあいいさ。邪魔が消えた。
兄鬼からのお墨付きだ。すこし本気で行こう変身魔法・怒鬼」
シュテンは不敵な笑みを浮かべるとその体を肥大化し、体からは熱気が上がる。さらにその体から大きな大剣が2本、メキメキと音を立てて出てくる。
そして変身が終わると同時にその大きな2本の大剣を格子状に重ね合わせた。すると、突如そこに巨大な大剣と共に対象であるキオッジャ伯爵が突っ込んでくる。
「あぶねえな。おっさん」
「久しぶりだ。鬼狩りは」
互いに言葉を発すると高い金属を鳴らし再び距離があく。
「名はなんて言うんだ?おっさん」
「はっ!。魔物が名を聞いてくるか。珍しい。いいだろう我が名はラドル・ノストラ・キオッジャである」
「そうか、俺はシュテンだ」
そう互いに名を名乗ると一瞬にして二人の姿が消える。そして次の瞬間には互いの刃が重なり合う。そしてシュテンは1本の大剣でラドルの攻撃を止めると、残りの1本がガラ空きのラドル横腹に振るわれる。
しかし、その刃がラドルを切り裂くことはなく、ラドルの着ている鎧のすんでのところで何かに阻まれるかのように止まっている。
「面倒な魔法を使うな」
「そういうな」
ラドルはシュテンから距離をとる。
守護魔法・守護領域。それがラドルの使っている魔法で自身の周囲に目に見えない魔素による硬度の高い衣を纏っている。
*
「ホルン様。よろしいのですか?お父上の援護をしなくて」
ホルンは今、ラドルとシュテンの戦いを見守っていた。
「良い。今言っても父上の気に障るだけだ。それに私のことも気づいていらっしゃる。あの人は助けが欲しい時以外に助けに行くと不機嫌になる。いつも冷静を装っては入るが本性は生粋の戦闘狂なのだよ。弟と同じく」
ホルンはその眼に父とオラクル・オーガの戦いを焼き付ける。
「いつか私も、あれ程の力を」
*
「しかし、その巨体でこれほど動けるとは」
ラドルはシュテンの速度に驚いていた。本来あの手の魔物は速度を犠牲にして、力を増すものであるがシュテンは速度が落ちたようには見えなかった。
「なあ、ラドル良いこと教えてやろうか」
「ん?」
突然シュテンからの威圧が消えると、シュテンはにやけながらラドルに話しかける。
「俺の兄鬼どこにいったと思う?」
「何を急に」
「後ろ見てみろよ。煙が上がってるだろ」
「何!?」
ラドルはその言葉に驚き後ろを見ると町の方から煙が上がっていた。
「馬鹿め!」
シュテンは後ろを向いたラドルの不意をついて大剣を振り下ろすが、ラドルの守護魔法・守護領域を突破できず、刃がラドルの既で止まる。
「硬すぎだろ」
ラドルは自身が攻撃されたことなど意に返さずシュテンを睨みつける。
「何をした!」
「あ?。お前らがここでのんきに雑魚どもと遊んでいる間に別の群れが町に行ったってだけだよ」
「ふんっ!」
その言葉を聞いたラドルは大剣を横に振るう。シュテンはそれを後方に飛び避ける。
「なるほど、囮に釣られたということか。私もまだまだだな」
「やけに冷静だな」
「当然だ。あの街にはよくわからない覆面の小僧がいるからな」
「あ?」
「貴様には関係のないことだ」
ラドルはそう言うと、大剣を地面に突き刺した。そして、
「構成魔法・大地の剣」
ラドルが魔法を唱え、剣を大地から抜き天に掲げると、大剣に地面から砂や岩石などが張り付き、一つの巨大な剣となり、その大きさは巨大化したシュテンよりも遥かに巨大であった。
「そんなデッカイの振れんのかよ」
「良いのか?。避け始めなくて」
「は?」
「キオウ流・地砕」
ラドルは超巨大な大剣をシュテンめがけ地面に叩きつける。シュテンはその攻撃はいとも簡単に避ける。
「おいおい、真面目にやる気あるのか?」
シュテンがそう調子にのっていると、大地の剣と地面とが接触した瞬間、地面の下に空洞でもあったかのように、地面が崩れ始まる。
シュテンは足場を失い地面の中に飲み込まれてゆく。
「くそ、何しやがった」
そしてシュテンの体が完全に地面に飲まれると、ラドルは地面に手を付き魔法を唱える。
「構成魔法・岩石大地」
すると、先程まで崩れ柔らかくなっていた地面が一瞬にして固まる。
「やったか」
ラドルがそういうと、後ろから鎧を身にまとった息子であるホルンが駆け寄ってくる。
「お見事でございます。父上」
「顔を見せろ。ホルン」
ラドルはホルンの顔に生気が戻ったことを確認すると言葉を続ける。
「なぜ見ていた。援護しようとは思わなかったのか」
「父上に援護は不要のように思えましたので」
「ふっ。その生意気さが戻っただけでも良しとしてやる」
父と子が話をしていると、固くなった大地が砕けて中から体の大きさがもとに戻っているシュテンが姿を表した。
「おいおい、この程度で俺をやれると思うなよ」
シュテンの顔には見るからに怒りの色が見える。
「時間稼ぎはもうしなくて言いそうだ。ここにいる奴ら皆粉々にしてやる。変身魔法・鬼王【阿修羅】」
「このまま結界を持続させたまま、できる限り体力を削る。魔法体用意」
シュテンを閉じ込めた魔法部隊は次の段階としてシュテンの体力減少を狙う。しかし、隊長が命令をくだそうとしたとき、シュテンを閉じ込めている結界のとなりに突如として砂煙が上がる。
その砂煙から突如として斬撃が飛び、隊長とその後方にいる魔法部隊の者達を一刀両断する。斬撃の威力はそれにはとどまらずに軍の後方にまでとどき、巨大な盾により終息する。
そして、結界に閉じ込められたシュテンの横にはもう一体のオラクル・オーガが立っていた。
「おお!。兄鬼か」
「お前はいつも相手をなめすぎだ。我らは一度敗れているのだぞ」
「す、すまねえ」
シュテンはゼストから威圧に圧されながら謝罪する。
「しかし、とは言ったものの強者は一人だけか」
「兄鬼。どこにいるんだ?。雑魚しか見えねえぞ」
「お前は近くしか見ようとしないから気付けないのだ。群れの後方にはそれを指揮する強者がいるものだ」
「ほう!」
シュテンはゼストに言われ、ゼストの目線の先を見る。そして、
「俺も見つけた!。兄鬼。あのデカい盾のとこにいるやつだろ」
「ああ。あいつが俺を殺した奴かもな」
ゼストはそういうと太刀を上にあげると再び振り下ろす。その斬撃は大地を抉り、その風圧は囲んでいる騎士達を彼方へと吹き飛ばす。
しかし、それほどの威力をもった斬撃であっても、その巨大な盾を壊すには至らない。
「なるほど」
ゼストはそういうと、今度は太刀を横に振り、シュテンを閉じ込めている結界を切り裂く。
「感謝する兄鬼」
「次はないぞ。【黒】に感謝しておけ」
「分かったよ。それとさ、俺があいつとやって良いのか?」
「好きにしろ。俺には別にやることがある」
「なんだ。兄鬼は自分を殺した奴と戦いたいんじゃなかったのか」
「あれは違う」
ゼストはそういうと、一瞬にしてその姿を消す。
「さっきので何がわかったのか俺にはさっぱりだが、まあいいさ。邪魔が消えた。
兄鬼からのお墨付きだ。すこし本気で行こう変身魔法・怒鬼」
シュテンは不敵な笑みを浮かべるとその体を肥大化し、体からは熱気が上がる。さらにその体から大きな大剣が2本、メキメキと音を立てて出てくる。
そして変身が終わると同時にその大きな2本の大剣を格子状に重ね合わせた。すると、突如そこに巨大な大剣と共に対象であるキオッジャ伯爵が突っ込んでくる。
「あぶねえな。おっさん」
「久しぶりだ。鬼狩りは」
互いに言葉を発すると高い金属を鳴らし再び距離があく。
「名はなんて言うんだ?おっさん」
「はっ!。魔物が名を聞いてくるか。珍しい。いいだろう我が名はラドル・ノストラ・キオッジャである」
「そうか、俺はシュテンだ」
そう互いに名を名乗ると一瞬にして二人の姿が消える。そして次の瞬間には互いの刃が重なり合う。そしてシュテンは1本の大剣でラドルの攻撃を止めると、残りの1本がガラ空きのラドル横腹に振るわれる。
しかし、その刃がラドルを切り裂くことはなく、ラドルの着ている鎧のすんでのところで何かに阻まれるかのように止まっている。
「面倒な魔法を使うな」
「そういうな」
ラドルはシュテンから距離をとる。
守護魔法・守護領域。それがラドルの使っている魔法で自身の周囲に目に見えない魔素による硬度の高い衣を纏っている。
*
「ホルン様。よろしいのですか?お父上の援護をしなくて」
ホルンは今、ラドルとシュテンの戦いを見守っていた。
「良い。今言っても父上の気に障るだけだ。それに私のことも気づいていらっしゃる。あの人は助けが欲しい時以外に助けに行くと不機嫌になる。いつも冷静を装っては入るが本性は生粋の戦闘狂なのだよ。弟と同じく」
ホルンはその眼に父とオラクル・オーガの戦いを焼き付ける。
「いつか私も、あれ程の力を」
*
「しかし、その巨体でこれほど動けるとは」
ラドルはシュテンの速度に驚いていた。本来あの手の魔物は速度を犠牲にして、力を増すものであるがシュテンは速度が落ちたようには見えなかった。
「なあ、ラドル良いこと教えてやろうか」
「ん?」
突然シュテンからの威圧が消えると、シュテンはにやけながらラドルに話しかける。
「俺の兄鬼どこにいったと思う?」
「何を急に」
「後ろ見てみろよ。煙が上がってるだろ」
「何!?」
ラドルはその言葉に驚き後ろを見ると町の方から煙が上がっていた。
「馬鹿め!」
シュテンは後ろを向いたラドルの不意をついて大剣を振り下ろすが、ラドルの守護魔法・守護領域を突破できず、刃がラドルの既で止まる。
「硬すぎだろ」
ラドルは自身が攻撃されたことなど意に返さずシュテンを睨みつける。
「何をした!」
「あ?。お前らがここでのんきに雑魚どもと遊んでいる間に別の群れが町に行ったってだけだよ」
「ふんっ!」
その言葉を聞いたラドルは大剣を横に振るう。シュテンはそれを後方に飛び避ける。
「なるほど、囮に釣られたということか。私もまだまだだな」
「やけに冷静だな」
「当然だ。あの街にはよくわからない覆面の小僧がいるからな」
「あ?」
「貴様には関係のないことだ」
ラドルはそう言うと、大剣を地面に突き刺した。そして、
「構成魔法・大地の剣」
ラドルが魔法を唱え、剣を大地から抜き天に掲げると、大剣に地面から砂や岩石などが張り付き、一つの巨大な剣となり、その大きさは巨大化したシュテンよりも遥かに巨大であった。
「そんなデッカイの振れんのかよ」
「良いのか?。避け始めなくて」
「は?」
「キオウ流・地砕」
ラドルは超巨大な大剣をシュテンめがけ地面に叩きつける。シュテンはその攻撃はいとも簡単に避ける。
「おいおい、真面目にやる気あるのか?」
シュテンがそう調子にのっていると、大地の剣と地面とが接触した瞬間、地面の下に空洞でもあったかのように、地面が崩れ始まる。
シュテンは足場を失い地面の中に飲み込まれてゆく。
「くそ、何しやがった」
そしてシュテンの体が完全に地面に飲まれると、ラドルは地面に手を付き魔法を唱える。
「構成魔法・岩石大地」
すると、先程まで崩れ柔らかくなっていた地面が一瞬にして固まる。
「やったか」
ラドルがそういうと、後ろから鎧を身にまとった息子であるホルンが駆け寄ってくる。
「お見事でございます。父上」
「顔を見せろ。ホルン」
ラドルはホルンの顔に生気が戻ったことを確認すると言葉を続ける。
「なぜ見ていた。援護しようとは思わなかったのか」
「父上に援護は不要のように思えましたので」
「ふっ。その生意気さが戻っただけでも良しとしてやる」
父と子が話をしていると、固くなった大地が砕けて中から体の大きさがもとに戻っているシュテンが姿を表した。
「おいおい、この程度で俺をやれると思うなよ」
シュテンの顔には見るからに怒りの色が見える。
「時間稼ぎはもうしなくて言いそうだ。ここにいる奴ら皆粉々にしてやる。変身魔法・鬼王【阿修羅】」
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