病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向

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第21話

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盗撮乱闘騒ぎの鎮静化後。
「先生!!こっちです!!」
何人かの生徒が、教職員を引き連れやってきた。
「竹中君。ありがとう」
「いえ。僕のほうこそ騒がしくしてしまってすみません。本当はもっと穏便にする予定だったんですけど...」
俺は小さく誤った。


「君たち、一体何があったんだ?!」
駆けつけた先生が俺達に状況の説明を求めてきた。
「え、っと...」
こういう時、なんて説明するのがベストなのか...。
良い説明方法が思いつかず、躊躇している間に、清水さんが状況説明をしてくれた。
「一般参加者さんの校内カメラ持ち込み禁止をお伝えすると、取り乱してしまい、横行な態度をとられたため、文化祭実行委員が事態の鎮静化致しました」
清水さんがチラリと俺を見た。
どうやら、俺も文化祭実行委員の一員らしい。

「その際、暴力的な態度を取られたため、正当防衛として、彼があの方に....」
清水さんが丁寧に説明を加えていく。

一通りの説明を聞いた教員は、
「大体の状況は分かった。後は学校側こっちで対応を検討するよ」
と、男を連れて立ち去って行った。

俺は思った。
彼女の口からは肝心な情報が抜け落ちていたから。
「清水さん…あの…」
『清水さんが盗撮されていたって事…伝えないと…。』
俺は言い忘れているのかと思って彼女に耳打ちした。
すると、彼女は去り行く男を遠目に見ながら、首を振った。
「いいんです。私のファンの方が学校に迷惑をかけたんですから、私も一緒に責任を背負うつもりです」
私の盗撮が原因と知れば、私は今度から行事に参加できなくなるかもしれない。それは悲しいし、嫌です。
「それに、事を大げさにしたくはないですしね」
そう笑った顔は、アイドル、咲菜だった。


は、はは。
はは。はははは。なんだそれ。
心の中で、自嘲と言う名のから笑いが止まらなかった。

彼女が強くない、なんて嘘じゃないか。
1年前と同じで彼女が何も変わっていないなんて、どうして思っていたんだろうか。
逆に、願っていたのかもしれない。
自分と同じ。
何も成長していない仲間を見つけたかったのかもしれない。


彼女は俺じゃない。
俺が思っていたよりずっと、彼女は成長している。
昔は、あれだけ文句言って、怖がりで、泣きじゃくっていたのにさ。
ちゃんとアイドルやってんじゃん。


■■■■■
受付のテントに戻ると、事情を聞き、駆けつけて来た他学年の文化祭実行委員達が、変わりに受付をしてくれていた。

『取り敢えず、もう少し、場が落ち着くまで実行委員の仕事は良いから。その間、2人とも休憩してきて』
文化祭実行委員長の女の先輩が、騒動の主犯格である俺達に、持ち場を離れるように言ってきた。
「...はい。」
「分かりました」
そう言われれば、俺達は素直に従うしかない。


急に暇を出された俺達は、とぼとぼと、受付テントを離れ歩く。

休憩…しろと、言われてもなぁ…。
俺はちらりと隣にいる清水さんに目を向けた。
一応、声を掛けるだけ…。
そう思ったら、偶然、二人でハモった。
「あの、清水さん」
「あの…竹中君!」
はっ。と言う風にお互い目を見合わせる。
「えっと...、あの....ごめん」
「いえ、こちらこそ、すみません、遮ってしまって....」



「あー。清水さんからどうぞ。何を言おうとしていたんですか?」
譲り合いが永遠に続きそうだったので、俺が先に腰を折った。
すると、清水さんは一瞬、ぴくりと驚き、上目遣いで俺の様子を伺ってきた。

「っ。た、竹中君は、この後、どうされますか?」
「俺?」
驚いた。
俺が彼女にしようとしていた質問をそのままされるなんて....。
ただ、自分が質問された時の答えを用意していなかったから困る。

「そうだなぁー。どうしよう」
別に、これと言って文化祭を楽しむ予定とか無かったしな…。
だから、暇つぶしとして、清水さんの仕事を手伝っていたわけで...。


本当にどうすっかな…。
返答に頭うぃ悩ます俺に、清水さんがある提案をした。
「宜しければ、一緒に学園内、ぶらっとしませんか?」
「え?」
彼女が俺を誘ってくる事が意外すぎて、面食らった。その顔を清水さんが『聞き返しの顔』と勘違いしたらしく、もう一度言ってくれた。
「竹中君に時間の余裕があれば、これから一緒に屋台や展示、舞台を見て回りませんか?」



「私も、多分、今日は表立って文化祭実行委員の仕事はできないと思うので、そうなるとすごーく暇なんですよ」
実行委員長にも休憩を言い渡された身同士、ゆっくりするのはどうかなぁと、思いまして...。
悪意の無い笑顔が逆に胸に突き刺さる。

「まぁ、清水さんが良いなら…」
俺がそう切り出すと、パッと彼女の顔に日が差した。
「本当ですか?!」
そうして、俺達は二人で文化祭の屋台やら展示やらを練り歩くことになった。

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