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第7話
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シャルロットとエリックはその日以降、ルーキエ公爵邸ではなく、ミュラ侯爵邸で会うようになる。
ルーキエ公爵からエリックに教えるべきことは実はもう殆ど残っておらず、エリックは残りの細々としたことを公爵から習いつつ、シャルロットとの仲を深めているだけだ。
エリックは元々優秀な頭脳の持ち主で、その上で本人の努力によって早々と公爵が求める基準に到達した。
今日もシャルロットはミュラ侯爵邸を訪問している。
そしていつものようにエリックの部屋で過ごす。
「ねぇ、エリック。最近、新しいカフェが王都に出来たらしいのです。今度の土曜日、もしエリックの予定が空いていれば一緒に行きませんか?」
「来週の土曜日は何も予定はないから大丈夫だよ。最近、王都にも行っていないし、せっかくだから一日王都で遊ぼうか」
「ありがとう、エリック!」
エリックの返事に嬉しくなったシャルロットは思わずエリックに抱き着いてしまう。
約束の日。
シャルロットはルーキエ公爵家の馬車に乗ってミュラ侯爵邸にエリックを迎えに行き、エリックを馬車に乗せて王都へと向かった。
土曜日ということもあって、王都は賑わいを見せていた。
土曜日は学生は学園が休園日、王宮に仕官している者も基本は仕事が休みだ。
王都は商業的な娯楽が多い為、学園や仕事などが休みだから特にこれと言った目的もなしに散策しても結果としては楽しめる。
それはさておき、王都の通りで馬車が侵入することが出来ない場所は数多のお店が立ち並んでいるので、そこで二人は馬車を降りて、徒歩で散策することにした。
「さぁ、シャル。行こうか」
エリックは左手を差し出し、シャルロットは自分の右手をそっと絡ませる。
そして二人はお互いの顔を見つめて微笑み合う。
「ええ。まず、言っていたカフェからでよろしいですか?」
「シャルは今、お腹空いてる?」
「屋敷で食べてきたからそこまで空腹ではないですわ」
「それなら先にちょっと買い物して、それからカフェにしない? せっかく行くならお腹が空いている状態で行った方が美味しく感じると思うけど」
「わかりましたわ。先にお買い物をしてからにしましょう」
「ちょうど買いたいものがあってね。お店の場所もちゃんと調べてあるから、道案内は任せて」
エリックの案内で王都の通りを歩き、十分程度経過した時、一軒のレトロな雰囲気が漂う煉瓦造りの建物が二人の視界に入る。
「着いた。ここだよ」
この煉瓦造りの建物こそがエリックの目当ての店だったようだ。
二人は店内に入る。
「ここは雑貨屋さん?」
「そうだよ。日常的に使うものでシャルとお揃いのものを何か買いたいなと思ってね」
「お揃いですか……確かに持ってはおりませんわね」
「何にするか具体的に決めてはいないから、とりあえず見てみよう」
二人は店内を彷徨う。
店内にはお皿、マグカップなどの飲食時に使うアイテムから髪飾りやアクセサリー、便箋のセットや筆記用具等が数多く取り揃えてある。
このお店は貴族をメインターゲットにしたお店と言うよりも裕福な庶民向けのお店で、商品の品質も貴族が使ってもそれ程遜色のないものになっている。
店内を彷徨っているうちに二人は筆記用具を扱っているコーナーにたどり着いた。
そこには万年筆や様々な色のインク壺、ペン先などが置いてある。
「……ん? これなんかどうかな?」
エリックは万年筆を手に取る。
その万年筆はペン先のみ金色で、本体部分の色は光沢感のある黒だ。
「良さそうですわね。書き心地も悪くはないですわ」
シャルロットは同じ万年筆を手に取り、試し書き用に用意されている紙にさらさらと万年筆を滑らせた。
「じゃあこれにしよう。僕は黒にするけれど、シャルは何色にする?」
「私は赤にしますわ」
二人は万年筆を持って会計をする。
「こちら、名前をお入れすることも可能ですが、如何いたしましょうか? ただ、名入れの場合はお時間を頂きますので、後日お客様のご住所にお届けすることにはなりますが……」
「せっかくだから名入れしてもらおうか?」
「そうですわね。名入れでお願いしますわ」
「畏まりました。名入れするお名前とご住所を此方の用紙に記入お願いします」
二人は差し出された用紙に名前と住所を記入する。
「ありがとうございます。代金はお届けした時にお願い致します」
こうして、二人は雑貨屋を後にした。
ルーキエ公爵からエリックに教えるべきことは実はもう殆ど残っておらず、エリックは残りの細々としたことを公爵から習いつつ、シャルロットとの仲を深めているだけだ。
エリックは元々優秀な頭脳の持ち主で、その上で本人の努力によって早々と公爵が求める基準に到達した。
今日もシャルロットはミュラ侯爵邸を訪問している。
そしていつものようにエリックの部屋で過ごす。
「ねぇ、エリック。最近、新しいカフェが王都に出来たらしいのです。今度の土曜日、もしエリックの予定が空いていれば一緒に行きませんか?」
「来週の土曜日は何も予定はないから大丈夫だよ。最近、王都にも行っていないし、せっかくだから一日王都で遊ぼうか」
「ありがとう、エリック!」
エリックの返事に嬉しくなったシャルロットは思わずエリックに抱き着いてしまう。
約束の日。
シャルロットはルーキエ公爵家の馬車に乗ってミュラ侯爵邸にエリックを迎えに行き、エリックを馬車に乗せて王都へと向かった。
土曜日ということもあって、王都は賑わいを見せていた。
土曜日は学生は学園が休園日、王宮に仕官している者も基本は仕事が休みだ。
王都は商業的な娯楽が多い為、学園や仕事などが休みだから特にこれと言った目的もなしに散策しても結果としては楽しめる。
それはさておき、王都の通りで馬車が侵入することが出来ない場所は数多のお店が立ち並んでいるので、そこで二人は馬車を降りて、徒歩で散策することにした。
「さぁ、シャル。行こうか」
エリックは左手を差し出し、シャルロットは自分の右手をそっと絡ませる。
そして二人はお互いの顔を見つめて微笑み合う。
「ええ。まず、言っていたカフェからでよろしいですか?」
「シャルは今、お腹空いてる?」
「屋敷で食べてきたからそこまで空腹ではないですわ」
「それなら先にちょっと買い物して、それからカフェにしない? せっかく行くならお腹が空いている状態で行った方が美味しく感じると思うけど」
「わかりましたわ。先にお買い物をしてからにしましょう」
「ちょうど買いたいものがあってね。お店の場所もちゃんと調べてあるから、道案内は任せて」
エリックの案内で王都の通りを歩き、十分程度経過した時、一軒のレトロな雰囲気が漂う煉瓦造りの建物が二人の視界に入る。
「着いた。ここだよ」
この煉瓦造りの建物こそがエリックの目当ての店だったようだ。
二人は店内に入る。
「ここは雑貨屋さん?」
「そうだよ。日常的に使うものでシャルとお揃いのものを何か買いたいなと思ってね」
「お揃いですか……確かに持ってはおりませんわね」
「何にするか具体的に決めてはいないから、とりあえず見てみよう」
二人は店内を彷徨う。
店内にはお皿、マグカップなどの飲食時に使うアイテムから髪飾りやアクセサリー、便箋のセットや筆記用具等が数多く取り揃えてある。
このお店は貴族をメインターゲットにしたお店と言うよりも裕福な庶民向けのお店で、商品の品質も貴族が使ってもそれ程遜色のないものになっている。
店内を彷徨っているうちに二人は筆記用具を扱っているコーナーにたどり着いた。
そこには万年筆や様々な色のインク壺、ペン先などが置いてある。
「……ん? これなんかどうかな?」
エリックは万年筆を手に取る。
その万年筆はペン先のみ金色で、本体部分の色は光沢感のある黒だ。
「良さそうですわね。書き心地も悪くはないですわ」
シャルロットは同じ万年筆を手に取り、試し書き用に用意されている紙にさらさらと万年筆を滑らせた。
「じゃあこれにしよう。僕は黒にするけれど、シャルは何色にする?」
「私は赤にしますわ」
二人は万年筆を持って会計をする。
「こちら、名前をお入れすることも可能ですが、如何いたしましょうか? ただ、名入れの場合はお時間を頂きますので、後日お客様のご住所にお届けすることにはなりますが……」
「せっかくだから名入れしてもらおうか?」
「そうですわね。名入れでお願いしますわ」
「畏まりました。名入れするお名前とご住所を此方の用紙に記入お願いします」
二人は差し出された用紙に名前と住所を記入する。
「ありがとうございます。代金はお届けした時にお願い致します」
こうして、二人は雑貨屋を後にした。
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