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第8話
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「いいものが買えて良かったね」
「そうですわね。届いて使うのが待ち遠しいですわ」
「僕も。届いたら屋敷で勉強や執務をする時に使おう。学園に持って行ってなくしたり、盗まれたり、壊されたりするのは嫌だしね」
学園は貴族の令息や令嬢の大半と一部の裕福で優秀な平民が通っているが、残念ながら私物の盗難・破壊はままあることだった。
気に入らない者の私物を盗んだり、壊して困らせるなどちょっとした嫌がらせ目的だ。
本当に大切なものは学園には持って行かないのが暗黙の了解にまでなっている。
「私も使うのは屋敷だけにしますわ。今日のお出かけの思い出の品でもあるので、リスクを負ってまで学園では使いたくありませんわ」
「買い物も終わったし、次はカフェに行こう。お昼には少し早いかも知れないけれど、お昼時はどこの飲食店も混雑するから。今から行ってちょうどいいくらいだと思うよ」
二人はカフェに向かう。
雑貨屋から目的のカフェはそれ程離れておらず、また、どこにどのお店があるのか記された道案内用の地図が通りに掲示されていたので、その情報も使いながら二人は迷うことなくたどり着いた。
そのカフェは店頭に行列こそは出来ていなかったが、店内をちらりと覗いただけでも盛況ぶりが伝わってくる。
二人は早速入店し、店員の誘導に従って案内されたテーブルに着く。
テーブルと椅子は温かみを感じる木製で、テーブルには赤と白のギンガムチェックのクロスが掛かっている。
「新しくオープンしたばかりとあってやっぱりお客さんも沢山ですわね」
「僕はシャルと一緒でなければカフェは行くことがないけれど、新しいお店はこんなに人が多いんだね。来てる子も女の子ばかりだ」
「カフェは友人付き合いで行くことも多いですわね。ゆっくり座って甘いものを食べながらお話に花を咲かせる。そんな場にぴったりですもの。新しいお店は”もう行きました”という自慢がしたい子も少なからずいるので、こんな状況なのは頷けますわ」
「店員さんがメニューを置いて行ってくれたけれど、シャルはどれにする? このカフェは何が有名なの?」
「このカフェはチーズケーキに力を入れているらしいですわ。私も詳しいことはわからないので、とりあえずメニューを見て食べたいものにしましょう」
二人はメニューを一緒に捲りつつ、どれを注文するか頭を悩ませる。
「このベイクドチーズケーキが食べたいけれど、レアチーズケーキも捨てがたいですわね。あと、チョコレート味も美味しそう……」
絞り切れないシャルロットを微笑ましく見守りつつ、エリックは提案する。
「じゃあシャルはベイクドチーズケーキを注文して、僕がレアチーズケーキを注文しよう。そして半分ずつ交換しよう。そうすれば両方とも楽しめるよ。チョコレート味はまた次の機会に」
シャルロットはエリックの提案にぱあっと顔を輝かせる。
「ありがとう、エリック! じゃあそうしましょう」
決まったところでエリックが手を挙げ、店員を呼ぶ。
店員はすぐに気づき、足早に二人がいるテーブルまでやって来た。
「ご注文は?」
「ベイクドチーズケーキと紅茶のセットとレアチーズケーキと紅茶のセットをお願いします」
「はい、畏まりました! 少々お待ち下さい」
二人はわくわくしながら注文したセットがテーブルに運ばれてくるのを待つ。
「そうですわね。届いて使うのが待ち遠しいですわ」
「僕も。届いたら屋敷で勉強や執務をする時に使おう。学園に持って行ってなくしたり、盗まれたり、壊されたりするのは嫌だしね」
学園は貴族の令息や令嬢の大半と一部の裕福で優秀な平民が通っているが、残念ながら私物の盗難・破壊はままあることだった。
気に入らない者の私物を盗んだり、壊して困らせるなどちょっとした嫌がらせ目的だ。
本当に大切なものは学園には持って行かないのが暗黙の了解にまでなっている。
「私も使うのは屋敷だけにしますわ。今日のお出かけの思い出の品でもあるので、リスクを負ってまで学園では使いたくありませんわ」
「買い物も終わったし、次はカフェに行こう。お昼には少し早いかも知れないけれど、お昼時はどこの飲食店も混雑するから。今から行ってちょうどいいくらいだと思うよ」
二人はカフェに向かう。
雑貨屋から目的のカフェはそれ程離れておらず、また、どこにどのお店があるのか記された道案内用の地図が通りに掲示されていたので、その情報も使いながら二人は迷うことなくたどり着いた。
そのカフェは店頭に行列こそは出来ていなかったが、店内をちらりと覗いただけでも盛況ぶりが伝わってくる。
二人は早速入店し、店員の誘導に従って案内されたテーブルに着く。
テーブルと椅子は温かみを感じる木製で、テーブルには赤と白のギンガムチェックのクロスが掛かっている。
「新しくオープンしたばかりとあってやっぱりお客さんも沢山ですわね」
「僕はシャルと一緒でなければカフェは行くことがないけれど、新しいお店はこんなに人が多いんだね。来てる子も女の子ばかりだ」
「カフェは友人付き合いで行くことも多いですわね。ゆっくり座って甘いものを食べながらお話に花を咲かせる。そんな場にぴったりですもの。新しいお店は”もう行きました”という自慢がしたい子も少なからずいるので、こんな状況なのは頷けますわ」
「店員さんがメニューを置いて行ってくれたけれど、シャルはどれにする? このカフェは何が有名なの?」
「このカフェはチーズケーキに力を入れているらしいですわ。私も詳しいことはわからないので、とりあえずメニューを見て食べたいものにしましょう」
二人はメニューを一緒に捲りつつ、どれを注文するか頭を悩ませる。
「このベイクドチーズケーキが食べたいけれど、レアチーズケーキも捨てがたいですわね。あと、チョコレート味も美味しそう……」
絞り切れないシャルロットを微笑ましく見守りつつ、エリックは提案する。
「じゃあシャルはベイクドチーズケーキを注文して、僕がレアチーズケーキを注文しよう。そして半分ずつ交換しよう。そうすれば両方とも楽しめるよ。チョコレート味はまた次の機会に」
シャルロットはエリックの提案にぱあっと顔を輝かせる。
「ありがとう、エリック! じゃあそうしましょう」
決まったところでエリックが手を挙げ、店員を呼ぶ。
店員はすぐに気づき、足早に二人がいるテーブルまでやって来た。
「ご注文は?」
「ベイクドチーズケーキと紅茶のセットとレアチーズケーキと紅茶のセットをお願いします」
「はい、畏まりました! 少々お待ち下さい」
二人はわくわくしながら注文したセットがテーブルに運ばれてくるのを待つ。
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