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第6話
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シャルロットはエリックと共に自室へ向かう。
シャルロットの部屋はルーキエ公爵邸の二階の南側にある。
二人は部屋に入り、メイドに紅茶とお菓子の用意を頼んだ。
ソファーに二人で並んで腰かけ、メイドが淹れた紅茶を飲みながら話をする。
「シャルが早く来てくれて本当に助かったよ。こう言ってはなんだけど、早く二人きりの状況から抜け出したくてたまらなかった」
エリックがシャルロットに見せた助かったと言うような視線はやはり気のせいではなかったらしい。
エリックとシャルロットは人目がないところではお互いをシャル、エリックと呼んでいる。
先程はレジーヌに二人の親密さを匂わせる為に、敢えてシャルやエリックと呼んだ。
「私もあなたが屋敷に到着して応接室に行ったら、お姉様がいて驚いたわ。しかも私よりも早く来ているなんて。私が来るまでの間、どんなお話をしていたの?」
「ひたすら自分の売り込みと僕への媚び売りだよ。自分の好物や趣味とかね。この情報が役に立つなんてあまり思えなかったから話半分にしか聞いていなかったけれど」
「やっぱり碌なことしなかったわね。エリック、あなたを巻き込んで本当に申し訳ないわ」
「どういうこと?」
「お姉様がダミアン王太子殿下に婚約破棄されたのはもう知っているわよね?」
「うん、知っているよ。僕もシャルと同じく生徒会活動のお手伝いであの現場にいたしね」
「ダミアン王太子殿下と子爵令嬢は二人とも家から勘当されて、平民落ち。そして二人は平民として強制的に結婚させられ、何があっても離縁は認められないという処断を下されたの。そちらはそういうことで話は決まったようなのだけれど、問題はお姉様よ」
「この話の続き、嫌な予感がするのだけれど……」
「あなたの嫌な予感は多分的中していると思うわ。王太子殿下に婚約破棄されたお姉様は婚約者がいない状態になった。それでお姉様は新しい婚約者を決めることになるという話をお父様が告げたら、お姉様はひどく憤慨したのよ。ほら、婚約は条件の良い人から決まるから、今から決めようとしても多少は妥協しないと決まらないじゃない? それが嫌だったみたいで、私にエリックを譲れと仰いましたの」
「ああ、やっぱりそう言ったんだ。でも、君は言わずもがな公爵閣下や公爵夫人も勿論そんな馬鹿な話、認めなかったよね?」
「勿論、お父様もお母様も認めないと仰っていたわ。私もお姉様にお譲りする理由はございません。これはお姉様が失敗したことで私が失敗したことではありません。何もしていない私から取り上げようなんて横暴が過ぎますわ」
「それで今日、僕が屋敷に来たから早速アプローチという訳なんだね。周りが反対しても当人の僕がシャルと婚約解消して彼女と新たに婚約すると言えば、公爵閣下も夫人も強くは言えなくなってしまうから。彼女はそれに賭けようとしたんだね」
「恐らくはそういうことだと思いますわ。周囲の反対を覆す唯一の方法です」
「もう公爵閣下から習うことは殆ど習得したから、これからはミュラ侯爵邸で会うようにする?」
「そうした方が良いかもしれませんわね。エリックはあまりこの公爵邸に来ない方が良いのかも。勿論、エリックが私を裏切らないと信じていますわ。でも、お姉様が何をしてくるかわかったものではありません。私、心配なのです」
不安げなシャルロットをエリックはぎゅっと力強く抱きしめる。
「心配しなくても僕はシャルを裏切らない」
シャルロットはその温もりに安心して身を委ねた。
シャルロットの部屋はルーキエ公爵邸の二階の南側にある。
二人は部屋に入り、メイドに紅茶とお菓子の用意を頼んだ。
ソファーに二人で並んで腰かけ、メイドが淹れた紅茶を飲みながら話をする。
「シャルが早く来てくれて本当に助かったよ。こう言ってはなんだけど、早く二人きりの状況から抜け出したくてたまらなかった」
エリックがシャルロットに見せた助かったと言うような視線はやはり気のせいではなかったらしい。
エリックとシャルロットは人目がないところではお互いをシャル、エリックと呼んでいる。
先程はレジーヌに二人の親密さを匂わせる為に、敢えてシャルやエリックと呼んだ。
「私もあなたが屋敷に到着して応接室に行ったら、お姉様がいて驚いたわ。しかも私よりも早く来ているなんて。私が来るまでの間、どんなお話をしていたの?」
「ひたすら自分の売り込みと僕への媚び売りだよ。自分の好物や趣味とかね。この情報が役に立つなんてあまり思えなかったから話半分にしか聞いていなかったけれど」
「やっぱり碌なことしなかったわね。エリック、あなたを巻き込んで本当に申し訳ないわ」
「どういうこと?」
「お姉様がダミアン王太子殿下に婚約破棄されたのはもう知っているわよね?」
「うん、知っているよ。僕もシャルと同じく生徒会活動のお手伝いであの現場にいたしね」
「ダミアン王太子殿下と子爵令嬢は二人とも家から勘当されて、平民落ち。そして二人は平民として強制的に結婚させられ、何があっても離縁は認められないという処断を下されたの。そちらはそういうことで話は決まったようなのだけれど、問題はお姉様よ」
「この話の続き、嫌な予感がするのだけれど……」
「あなたの嫌な予感は多分的中していると思うわ。王太子殿下に婚約破棄されたお姉様は婚約者がいない状態になった。それでお姉様は新しい婚約者を決めることになるという話をお父様が告げたら、お姉様はひどく憤慨したのよ。ほら、婚約は条件の良い人から決まるから、今から決めようとしても多少は妥協しないと決まらないじゃない? それが嫌だったみたいで、私にエリックを譲れと仰いましたの」
「ああ、やっぱりそう言ったんだ。でも、君は言わずもがな公爵閣下や公爵夫人も勿論そんな馬鹿な話、認めなかったよね?」
「勿論、お父様もお母様も認めないと仰っていたわ。私もお姉様にお譲りする理由はございません。これはお姉様が失敗したことで私が失敗したことではありません。何もしていない私から取り上げようなんて横暴が過ぎますわ」
「それで今日、僕が屋敷に来たから早速アプローチという訳なんだね。周りが反対しても当人の僕がシャルと婚約解消して彼女と新たに婚約すると言えば、公爵閣下も夫人も強くは言えなくなってしまうから。彼女はそれに賭けようとしたんだね」
「恐らくはそういうことだと思いますわ。周囲の反対を覆す唯一の方法です」
「もう公爵閣下から習うことは殆ど習得したから、これからはミュラ侯爵邸で会うようにする?」
「そうした方が良いかもしれませんわね。エリックはあまりこの公爵邸に来ない方が良いのかも。勿論、エリックが私を裏切らないと信じていますわ。でも、お姉様が何をしてくるかわかったものではありません。私、心配なのです」
不安げなシャルロットをエリックはぎゅっと力強く抱きしめる。
「心配しなくても僕はシャルを裏切らない」
シャルロットはその温もりに安心して身を委ねた。
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