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第29章 広田5
第269話 故郷の味
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「あ!」
普段落ち着いている方の武井さんが控えめに声を上げた。振り向くと何かを凝視していたのでその目線を追ってみた。
「‥‥それ‥‥、もしかして醤油‥‥?」
武井さんの目線の先にあったボトルには「大豆ソース」と書かれていた。
武井さんはすぐにカウンターに向かっていった。
「あの大豆ソースを見せてください!」
「テイスティングなさいますか?」
「味見できるんですか?」
カウンターの所にいた年配の女性従業員の言葉を聞いて武井さんが目を見開いた。味見の言葉が聞こえたのか、秋山さんと岡部さんも寄って来た。
テイスティングはカウンターで行うのではないらしくて、店のフロアの隅にあるテーブルに移動させられた。
「マヨ、マヨも‥‥。」
秋山さんはマヨネーズを主張し続け、結局、大豆ソースとマヨネーズをテイスティングさせてもらう事になった。
野菜チップスみたいなものに少量塗ってくれたものを出してくれた。香りがそんなにするわけではないけれど、嗅いだ事がある香りがして、気持ちが沸き立った。
表面を少し舐めてから慎重に少しずつ齧って味わってみる。ああ、これだ。俺は思わず皆の顔を見た。うん、と武井さんが頷いた。まさか醤油があるなんて。
マヨネーズの方も、期待通りだった。やはり昨日タルタルソースに使われていたのはこれらしい。
「あの、これを作った人は?」
「こちらは商業ギルドに登録されているレシピに従って、当商会の工房で作成しております。作成者については存じ上げません。」
「ええ‥‥?この商会の関係者じゃないんですか?」
「当商会では、流行しそうな商品をいち早く販売しております。また商会所有の工房で充分に検証し安定した質の品をご提供できるように努めております。」
穏やかに微笑んで言う従業員の人は、見るからにこちらの世界の人の顔立ちをしていた。店内に居る他の従業員もそうだ。
「‥‥この商会の経営者ってどんな方なんですか?」
「ここはライアン・ツェット子爵様が経営されている商会です。」
[貴族‥‥。」
「はい。」
貴族が経営している店のわりには、狩猟ギルドで活動するような格好をしている俺達に対しても、別に高飛車な感じではない。店の前の出店でハンバーガーを売るくらいだから、貴族以外にも幅広く売っているっていうことか。
でも,雰囲気的にはこれ以上突っ込んで聞くと失礼になりそうな感じがした。
そもそも、経営者は日本人じゃなさそうだ。それを知って、少し気落ちした。
武井さんは、もう少し詳しく聞こうとしていたけれど、秋山さんは先にマヨネーズを買いたいと主張していた。
マヨネーズは、冬場以外は開封したらすぐ食べる必要があるらしい。要冷蔵ってことか。
冷蔵保存をするときは氷魔法が使える人が管理するか、氷魔法効果が付与された魔石をいれた箱に保管するらしいのだが、氷魔法など持っていないし、魔石つきの箱というのはメチャ高いうえに、魔石は消耗品らしい。
温度変化が少ないという保冷ボックスというのも見せてもらったが、ほぼクーラーボックスだった。
これも同郷の人が作っていそうなんだけどな。
保冷ボックスはあると便利なんだと思うけど、持ち歩いて旅するには大き過ぎて無理そうだし値段も高かった。
冷蔵保存が必要と知っても秋山さんは諦めた様子はなく、ちょっと上目遣いに俺達を見ている。上目遣い止めて欲しい。
「‥‥今日は結構涼しいし、明日の朝くらいまでは大丈夫じゃないか?皆で食べればそれなりに消費できるんじゃねぇ?」
秋山さんに根負けしたのか、岡部さんがボソリと言った。その言葉を聞いて秋山さんの表情がパッと明るくなった。
多少値段は高めだけど、角兎を沢山狩った後だから今はちょっと余裕があるし、良いかと思って俺も反対しなかった。ちょっと興味はあったのだ。
マヨネーズの他に大豆ソースも安くはなかったけれど、これは購入した。
料理する環境がないのにとは思うけど、秋山さんは宿の食堂の人に頼んで食事の時に使わせてもらうというので、それならと買う事にした。
無駄遣い、かもしれないが「故郷の味」のような存在に惹かれてた気がする。
秋山さんは食欲だけかもしれないけど。
普段落ち着いている方の武井さんが控えめに声を上げた。振り向くと何かを凝視していたのでその目線を追ってみた。
「‥‥それ‥‥、もしかして醤油‥‥?」
武井さんの目線の先にあったボトルには「大豆ソース」と書かれていた。
武井さんはすぐにカウンターに向かっていった。
「あの大豆ソースを見せてください!」
「テイスティングなさいますか?」
「味見できるんですか?」
カウンターの所にいた年配の女性従業員の言葉を聞いて武井さんが目を見開いた。味見の言葉が聞こえたのか、秋山さんと岡部さんも寄って来た。
テイスティングはカウンターで行うのではないらしくて、店のフロアの隅にあるテーブルに移動させられた。
「マヨ、マヨも‥‥。」
秋山さんはマヨネーズを主張し続け、結局、大豆ソースとマヨネーズをテイスティングさせてもらう事になった。
野菜チップスみたいなものに少量塗ってくれたものを出してくれた。香りがそんなにするわけではないけれど、嗅いだ事がある香りがして、気持ちが沸き立った。
表面を少し舐めてから慎重に少しずつ齧って味わってみる。ああ、これだ。俺は思わず皆の顔を見た。うん、と武井さんが頷いた。まさか醤油があるなんて。
マヨネーズの方も、期待通りだった。やはり昨日タルタルソースに使われていたのはこれらしい。
「あの、これを作った人は?」
「こちらは商業ギルドに登録されているレシピに従って、当商会の工房で作成しております。作成者については存じ上げません。」
「ええ‥‥?この商会の関係者じゃないんですか?」
「当商会では、流行しそうな商品をいち早く販売しております。また商会所有の工房で充分に検証し安定した質の品をご提供できるように努めております。」
穏やかに微笑んで言う従業員の人は、見るからにこちらの世界の人の顔立ちをしていた。店内に居る他の従業員もそうだ。
「‥‥この商会の経営者ってどんな方なんですか?」
「ここはライアン・ツェット子爵様が経営されている商会です。」
[貴族‥‥。」
「はい。」
貴族が経営している店のわりには、狩猟ギルドで活動するような格好をしている俺達に対しても、別に高飛車な感じではない。店の前の出店でハンバーガーを売るくらいだから、貴族以外にも幅広く売っているっていうことか。
でも,雰囲気的にはこれ以上突っ込んで聞くと失礼になりそうな感じがした。
そもそも、経営者は日本人じゃなさそうだ。それを知って、少し気落ちした。
武井さんは、もう少し詳しく聞こうとしていたけれど、秋山さんは先にマヨネーズを買いたいと主張していた。
マヨネーズは、冬場以外は開封したらすぐ食べる必要があるらしい。要冷蔵ってことか。
冷蔵保存をするときは氷魔法が使える人が管理するか、氷魔法効果が付与された魔石をいれた箱に保管するらしいのだが、氷魔法など持っていないし、魔石つきの箱というのはメチャ高いうえに、魔石は消耗品らしい。
温度変化が少ないという保冷ボックスというのも見せてもらったが、ほぼクーラーボックスだった。
これも同郷の人が作っていそうなんだけどな。
保冷ボックスはあると便利なんだと思うけど、持ち歩いて旅するには大き過ぎて無理そうだし値段も高かった。
冷蔵保存が必要と知っても秋山さんは諦めた様子はなく、ちょっと上目遣いに俺達を見ている。上目遣い止めて欲しい。
「‥‥今日は結構涼しいし、明日の朝くらいまでは大丈夫じゃないか?皆で食べればそれなりに消費できるんじゃねぇ?」
秋山さんに根負けしたのか、岡部さんがボソリと言った。その言葉を聞いて秋山さんの表情がパッと明るくなった。
多少値段は高めだけど、角兎を沢山狩った後だから今はちょっと余裕があるし、良いかと思って俺も反対しなかった。ちょっと興味はあったのだ。
マヨネーズの他に大豆ソースも安くはなかったけれど、これは購入した。
料理する環境がないのにとは思うけど、秋山さんは宿の食堂の人に頼んで食事の時に使わせてもらうというので、それならと買う事にした。
無駄遣い、かもしれないが「故郷の味」のような存在に惹かれてた気がする。
秋山さんは食欲だけかもしれないけど。
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
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