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第29章 広田5
第268話 ツェット商会に行く
しおりを挟む「ほい。サスケイ様の祝福があらんことを。」
お店の人が肉団子パンを渡してくれるときに、何か祝福のメッセージをくれた。
[サスケイ様?」
「ああ、サスケイ様の祝福があると商売繁盛、旨い物をもたらしてくれるって言われているんだぞ。」
そう言って店員さんは、店の入り口近くに設置されている銅像を指差した。高めの台座の上に小さい銅像があった。なんとなくお地蔵さんっぽい雰囲気だ。
「商売の神様かなにか?」
「そんな感じだね。」
「へえ。」
「旨いもんをもたらしてくれるっていうなら祈っとこ!」
秋山さんがパンパンと柏手を打った。
「ちょ、目立つだろ。」
岡部さんが周囲を気にして見回したが、特に注目が集まった様子はなかった。
なんとなく俺も手を合わせておいた。
少なくともこの肉団子パンに巡り会わせてくれた気がするし。
混んでいるので、その場にあまり立ち止まらずに、買ったものを持って店から少し離れた。手にしている包みから熱が伝わって来る。
早く食べてみたい。
「旨!ハンバーガー!ハンバーガーだよ!やっぱり!」
座るところか、せめて落ち着けそうな軒下を探そうとしていたのに、秋山さんは歩きながら包みを開けて食べ始めてしまった。
「やっぱりそうなのか。」
キョロキョロと見回して、人がいない建物の壁際に寄った。
スリだっているかもしれないから、さすがに道の真ん中に立ったまま暢気に食べているのはよくない。
壁を背にしてようやく、「肉団子パン」の包みを開けた。
ふわっと香るのは、よく知っている香りだ。懐かしさすら感じる。
一口齧ったら期待通りの味だった。シンプルなハンバーガーだ。バンズの間にケチャップがかかったハンバーグが挟まっている。ピクルスも入っていた。
部活の帰りに、友達と買い食いをした記憶がふと蘇った。一緒にハンバーガーを食べたやつら‥‥。同じクラスの奴は、今でも[人形」なのだろうか。
色んな感情が浮かび上がって少し鼻の奥がツンとした。でも、食べるのを止められない。
最後まで一気に食べてしまった。
既に食べ終わった秋山さんは、まだ食べたりないのか出店の方をチラチラとみていた。
武井さんは食べ終わった包みを丁寧に畳んでから、ツェット商会の建物を見上げた。
「ハンバーガーまで販売しているとなると、やっぱり同郷の人が経営しているのかな。‥‥食べ終わったし、店の中に入ってみるか。」
「おう!そうだよ!マヨネーズ!」
「マヨはあるかわからんて。」
店の前にある出店に集まっている人達を避けながら、ツェット商会の少し立派な入り口に向かった。重厚そうな扉の前にドアマンらしき人が立っていて
ちょっとハードルが高い雰囲気だ。一瞬躊躇したけど、ドアマンがにこやかに扉を開けてくれた。
日本で暮らしていた頃からすれば、際立って高級そうというわけじゃないけれど、この世界に来てからだと、明らかに落ち着いていて上品な雰囲気の店内だ。
壁際の高い位置に棚があり、商品の見本が飾られていて、奥にカウンターがある。
見本のものが欲しければカウンターでその旨を告げて出してもらうシステムのようだ。
「あった!マヨ!マヨ!」
「ほんとだ‥‥マスタードもあるな‥‥。」
棚の上配置された陶器のボトルに書かれているラベルを指差して秋山さんがちょっと大きめの声を発し、
秋山さんが指差した先を見た岡部さんが、さらにその隣のボトルを見て言った。
「ケチャップも‥‥。」
ケチャップという名前ではないが、スパイシートマトソースと書かれたボトルがあったのでそうだろうと思う。
肉団子パンに塗ってあったくらいだから、あるかなとは思っていたけれど,期待通りのものが揃っていると気持ちが浮き立つ。
お店の人が肉団子パンを渡してくれるときに、何か祝福のメッセージをくれた。
[サスケイ様?」
「ああ、サスケイ様の祝福があると商売繁盛、旨い物をもたらしてくれるって言われているんだぞ。」
そう言って店員さんは、店の入り口近くに設置されている銅像を指差した。高めの台座の上に小さい銅像があった。なんとなくお地蔵さんっぽい雰囲気だ。
「商売の神様かなにか?」
「そんな感じだね。」
「へえ。」
「旨いもんをもたらしてくれるっていうなら祈っとこ!」
秋山さんがパンパンと柏手を打った。
「ちょ、目立つだろ。」
岡部さんが周囲を気にして見回したが、特に注目が集まった様子はなかった。
なんとなく俺も手を合わせておいた。
少なくともこの肉団子パンに巡り会わせてくれた気がするし。
混んでいるので、その場にあまり立ち止まらずに、買ったものを持って店から少し離れた。手にしている包みから熱が伝わって来る。
早く食べてみたい。
「旨!ハンバーガー!ハンバーガーだよ!やっぱり!」
座るところか、せめて落ち着けそうな軒下を探そうとしていたのに、秋山さんは歩きながら包みを開けて食べ始めてしまった。
「やっぱりそうなのか。」
キョロキョロと見回して、人がいない建物の壁際に寄った。
スリだっているかもしれないから、さすがに道の真ん中に立ったまま暢気に食べているのはよくない。
壁を背にしてようやく、「肉団子パン」の包みを開けた。
ふわっと香るのは、よく知っている香りだ。懐かしさすら感じる。
一口齧ったら期待通りの味だった。シンプルなハンバーガーだ。バンズの間にケチャップがかかったハンバーグが挟まっている。ピクルスも入っていた。
部活の帰りに、友達と買い食いをした記憶がふと蘇った。一緒にハンバーガーを食べたやつら‥‥。同じクラスの奴は、今でも[人形」なのだろうか。
色んな感情が浮かび上がって少し鼻の奥がツンとした。でも、食べるのを止められない。
最後まで一気に食べてしまった。
既に食べ終わった秋山さんは、まだ食べたりないのか出店の方をチラチラとみていた。
武井さんは食べ終わった包みを丁寧に畳んでから、ツェット商会の建物を見上げた。
「ハンバーガーまで販売しているとなると、やっぱり同郷の人が経営しているのかな。‥‥食べ終わったし、店の中に入ってみるか。」
「おう!そうだよ!マヨネーズ!」
「マヨはあるかわからんて。」
店の前にある出店に集まっている人達を避けながら、ツェット商会の少し立派な入り口に向かった。重厚そうな扉の前にドアマンらしき人が立っていて
ちょっとハードルが高い雰囲気だ。一瞬躊躇したけど、ドアマンがにこやかに扉を開けてくれた。
日本で暮らしていた頃からすれば、際立って高級そうというわけじゃないけれど、この世界に来てからだと、明らかに落ち着いていて上品な雰囲気の店内だ。
壁際の高い位置に棚があり、商品の見本が飾られていて、奥にカウンターがある。
見本のものが欲しければカウンターでその旨を告げて出してもらうシステムのようだ。
「あった!マヨ!マヨ!」
「ほんとだ‥‥マスタードもあるな‥‥。」
棚の上配置された陶器のボトルに書かれているラベルを指差して秋山さんがちょっと大きめの声を発し、
秋山さんが指差した先を見た岡部さんが、さらにその隣のボトルを見て言った。
「ケチャップも‥‥。」
ケチャップという名前ではないが、スパイシートマトソースと書かれたボトルがあったのでそうだろうと思う。
肉団子パンに塗ってあったくらいだから、あるかなとは思っていたけれど,期待通りのものが揃っていると気持ちが浮き立つ。
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