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第29章 広田5
第270話 商業ギルドで情報収集
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「‥‥商業ギルドってところ、寄ってみる?」
マヨネーズと大豆ソースを買って、ツェット商会を出た後、ちらりと、店に入り口脇に鎮座したサスケイ様の銅像に目をやりながら武井さんが言った。
「商業ギルドでは制作者の情報は公表してないんじゃなかったっけ。」
「でも、何か情報があるかもしれないだろ。」
「うーん‥‥、まあダメもとか。」
オスタリコラルから逃げて来て、国境を越えるまではとにかく逃げ出すことしか考えていなかったけど、
ようやく国境を越えて、これからどうするかを考えると、やはり同郷の人がいる可能性があるならその情報は欲しい。
その人に助けを求めるとまでは考えていないけど、
今は、必死に逃げて来たばかりで、何も指針がないのだ。少しでも情報があった方が良いと思う。
ツェット商会で商業ギルドの場所を聞けばよかったな、と思いながら、キョロキョロと通りを見て回り、パン屋でパンを買うついでにパン屋に商業ギルドの場所を聞いた。
パンを買ったのはマヨネーズを付けて食べる為だ。
宿で朝夕の食事は出るし、先程肉団子パンを食べたばかりではあるけど、正直まだ腹は減っている。
粗食生活には慣れているから、肉団子パンで一食分ってことでも別に良いんだけど、屋台で調理されて売られているものに比べればパンはそんなに高くない。
そんな理由付けをしながら買ったパンの入った包みをちょっと軽く押さえてみた。ふんわりとしていて、弾力がある。
「ソーセージパンや肉団子パンの時に気付いてはいたけど、やっぱりパンが柔らかいよな。」
「あきらかに隣国のパンと違うんだよなぁ。」
パンの製法だって、もしかしてって思ったりする。
ハンバーガーだってあったし、醤油があるっていうことは、登録したのは日本からきた人だったりしないだろうか。
色々考えを廻らせながら歩いていたら、パン屋が教えてくれた辺りに、それらしい建物を見つけた。
事務所みたいな雰囲気の場所と店舗っぽい場所がある。店舗っぽい場所はツェット商会よりは無骨な感じでランプだとかが棚にぎっしり並んでいるのが、分厚いガラスがはめ込まれた小さい窓から見えた。
「ここは入って大丈夫なのかな。」
店舗っぽい場所の方は扉が閉ざされていて、ドアマンもいなかった。
事務所っぽい方にだけドアマンが居る。
「あっちで訊いて見るのがいいんじゃないか?」
何か変わった品があるかもしれない、と店舗っぽい方に興味を引かれたけど、もともと商業ギルドには話を訊きに来たわけだし、事務所のようなところに行って見ることにした。入り口近くに、サスケイ様の像があったので軽く手を合わせた。
中に入るとエキゾチックな中世の商人みたいな雰囲気の人が出迎えてくれた。質が良さそうなたっぷりの布地を使った服を着ている。
「ご用件をお伺いいたします。」
「マヨネーズと大豆ソースの製作者についての情報をお訊きすることはできますか?」
イソラさんと名乗ったギルド職員の人に、武井さんがダイレクトに質問をした。
「生憎でございますが、製法のご登録者の情報はお教えすることはできません。」
あっさりと情報提供を拒否されてしまった。
ダメだったか、と思ったけど、武井さんは質問を続けた。
「やはりそうですか。では、登録時期だけでもお教えいただけないでしょうか。登録から一定時間経つとレシピの使用料はかからなくなるのですか?」
何で登録時期?と思ったけど、口を挟まずに黙っていた。
「マヨネーズは三年前。大豆ソースはご登録から二年経っています。登録から二十年はレシピの使用料は変わりません。
二十年経ちますと、使用料が減額されますが、五十年間は使用料がかかります。」
「なるほど‥‥。最近登録されたものを教えていただく事はできますか?もしかして隣の店舗にあるのがそうかと思ったのですが。」
「はい。ご案内いたします。」
事務所のフロアの中側から、隣の店舗らしい場所へ繋がる扉があったらしい。
屈強そうな護衛みたいな人が立っていて、ちょっと厳重に警備がされているみたいだ。
マヨネーズと大豆ソースを買って、ツェット商会を出た後、ちらりと、店に入り口脇に鎮座したサスケイ様の銅像に目をやりながら武井さんが言った。
「商業ギルドでは制作者の情報は公表してないんじゃなかったっけ。」
「でも、何か情報があるかもしれないだろ。」
「うーん‥‥、まあダメもとか。」
オスタリコラルから逃げて来て、国境を越えるまではとにかく逃げ出すことしか考えていなかったけど、
ようやく国境を越えて、これからどうするかを考えると、やはり同郷の人がいる可能性があるならその情報は欲しい。
その人に助けを求めるとまでは考えていないけど、
今は、必死に逃げて来たばかりで、何も指針がないのだ。少しでも情報があった方が良いと思う。
ツェット商会で商業ギルドの場所を聞けばよかったな、と思いながら、キョロキョロと通りを見て回り、パン屋でパンを買うついでにパン屋に商業ギルドの場所を聞いた。
パンを買ったのはマヨネーズを付けて食べる為だ。
宿で朝夕の食事は出るし、先程肉団子パンを食べたばかりではあるけど、正直まだ腹は減っている。
粗食生活には慣れているから、肉団子パンで一食分ってことでも別に良いんだけど、屋台で調理されて売られているものに比べればパンはそんなに高くない。
そんな理由付けをしながら買ったパンの入った包みをちょっと軽く押さえてみた。ふんわりとしていて、弾力がある。
「ソーセージパンや肉団子パンの時に気付いてはいたけど、やっぱりパンが柔らかいよな。」
「あきらかに隣国のパンと違うんだよなぁ。」
パンの製法だって、もしかしてって思ったりする。
ハンバーガーだってあったし、醤油があるっていうことは、登録したのは日本からきた人だったりしないだろうか。
色々考えを廻らせながら歩いていたら、パン屋が教えてくれた辺りに、それらしい建物を見つけた。
事務所みたいな雰囲気の場所と店舗っぽい場所がある。店舗っぽい場所はツェット商会よりは無骨な感じでランプだとかが棚にぎっしり並んでいるのが、分厚いガラスがはめ込まれた小さい窓から見えた。
「ここは入って大丈夫なのかな。」
店舗っぽい場所の方は扉が閉ざされていて、ドアマンもいなかった。
事務所っぽい方にだけドアマンが居る。
「あっちで訊いて見るのがいいんじゃないか?」
何か変わった品があるかもしれない、と店舗っぽい方に興味を引かれたけど、もともと商業ギルドには話を訊きに来たわけだし、事務所のようなところに行って見ることにした。入り口近くに、サスケイ様の像があったので軽く手を合わせた。
中に入るとエキゾチックな中世の商人みたいな雰囲気の人が出迎えてくれた。質が良さそうなたっぷりの布地を使った服を着ている。
「ご用件をお伺いいたします。」
「マヨネーズと大豆ソースの製作者についての情報をお訊きすることはできますか?」
イソラさんと名乗ったギルド職員の人に、武井さんがダイレクトに質問をした。
「生憎でございますが、製法のご登録者の情報はお教えすることはできません。」
あっさりと情報提供を拒否されてしまった。
ダメだったか、と思ったけど、武井さんは質問を続けた。
「やはりそうですか。では、登録時期だけでもお教えいただけないでしょうか。登録から一定時間経つとレシピの使用料はかからなくなるのですか?」
何で登録時期?と思ったけど、口を挟まずに黙っていた。
「マヨネーズは三年前。大豆ソースはご登録から二年経っています。登録から二十年はレシピの使用料は変わりません。
二十年経ちますと、使用料が減額されますが、五十年間は使用料がかかります。」
「なるほど‥‥。最近登録されたものを教えていただく事はできますか?もしかして隣の店舗にあるのがそうかと思ったのですが。」
「はい。ご案内いたします。」
事務所のフロアの中側から、隣の店舗らしい場所へ繋がる扉があったらしい。
屈強そうな護衛みたいな人が立っていて、ちょっと厳重に警備がされているみたいだ。
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