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3.第二幕
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その後、控えの間で騒動を聞いたのか、オロオロしながら私のことを心配してくれたアデールに着替えを手伝ってもらいました。
私は着替えた後、そのまま昼食会には戻らず、体調不良を理由に自分の屋敷へと帰ったのでした。
――その日の夜――
「ローズ、なかなか利発な娘へと育ってくれたようだな」
父親がすでに昼食会での出来事を聞いたのか、夕食時にそう言いました。
「とんでもないですわ、お父様。アデールいてこそです」
私はそっと父に返事をしました。
「そういえば、今回の件でおまえに興味を持ったのか、エイデル侯爵から次の日の満月の夜に、エイデル家で開かれる舞踏会に招待されたぞ」
「光栄ですわね、お嬢様」
まるで、自分のことかのようにアデールがにこやかに私に微笑みかけてくれます。
私はそんなアデールに微笑みながらも、毒素を含む宝石の件もあり、その時一抹の不安が胸をよぎったのでした……。
そして、私は夕食を食べ終えて自室への道すがら、私はアデールに王立図書館で、隣国――ノクタム王国――の鉱物に関する資料を借りてくるように頼んだのでした。
――――――――――――
「お嬢様、今宵はほんとに綺麗な満月ですわね」
馬車に揺られながら、ノクタム王国のエイデン侯爵屋敷に向かう途中で、アデールが私にそう呟きます。
私はそんなアデールに頷きながら、指先に念入りに赤や朱色の染料を塗りこんでいました。
「あの、お嬢様」
そんな私を何か言いたげに見つめるアデールに、私は安心してと微笑みかけます。
「そのうちわかるから、ね、アデール」
もともと美術は結構得意だった私は、揺れる馬車の中で月明かりを頼りに手に細工を施したのでした。
そして、染料が乾いたのを確認すると手袋をはめて、馬車のドアを開けたのでした。
「お待ちしておりました、ギルバート男爵令嬢」
そう言って私を出迎えたくれたのは、以前エイデン侯爵のそばに控えていた侍従でした。
彼に案内されて入った大きな白い屋敷は、満月の光を浴びて、さながらその屋敷自体が発光しているような気さえしてきます。
(間に合わせの材料で作られた私の屋敷とは比べ物にならないわ)
そう思いながら、大きな大理石で作られた階段を登っていきます。
「遠路はるばる来てくれてありがとう、ギルバート男爵令嬢」
階段を登り切ったところには、月光にきらめく美しい金髪持ち主、エイデン侯爵その人がいたのでした。
私は彼に一礼すると、差し出された手を取って舞踏会の会場へと入っていきます。
私は着替えた後、そのまま昼食会には戻らず、体調不良を理由に自分の屋敷へと帰ったのでした。
――その日の夜――
「ローズ、なかなか利発な娘へと育ってくれたようだな」
父親がすでに昼食会での出来事を聞いたのか、夕食時にそう言いました。
「とんでもないですわ、お父様。アデールいてこそです」
私はそっと父に返事をしました。
「そういえば、今回の件でおまえに興味を持ったのか、エイデル侯爵から次の日の満月の夜に、エイデル家で開かれる舞踏会に招待されたぞ」
「光栄ですわね、お嬢様」
まるで、自分のことかのようにアデールがにこやかに私に微笑みかけてくれます。
私はそんなアデールに微笑みながらも、毒素を含む宝石の件もあり、その時一抹の不安が胸をよぎったのでした……。
そして、私は夕食を食べ終えて自室への道すがら、私はアデールに王立図書館で、隣国――ノクタム王国――の鉱物に関する資料を借りてくるように頼んだのでした。
――――――――――――
「お嬢様、今宵はほんとに綺麗な満月ですわね」
馬車に揺られながら、ノクタム王国のエイデン侯爵屋敷に向かう途中で、アデールが私にそう呟きます。
私はそんなアデールに頷きながら、指先に念入りに赤や朱色の染料を塗りこんでいました。
「あの、お嬢様」
そんな私を何か言いたげに見つめるアデールに、私は安心してと微笑みかけます。
「そのうちわかるから、ね、アデール」
もともと美術は結構得意だった私は、揺れる馬車の中で月明かりを頼りに手に細工を施したのでした。
そして、染料が乾いたのを確認すると手袋をはめて、馬車のドアを開けたのでした。
「お待ちしておりました、ギルバート男爵令嬢」
そう言って私を出迎えたくれたのは、以前エイデン侯爵のそばに控えていた侍従でした。
彼に案内されて入った大きな白い屋敷は、満月の光を浴びて、さながらその屋敷自体が発光しているような気さえしてきます。
(間に合わせの材料で作られた私の屋敷とは比べ物にならないわ)
そう思いながら、大きな大理石で作られた階段を登っていきます。
「遠路はるばる来てくれてありがとう、ギルバート男爵令嬢」
階段を登り切ったところには、月光にきらめく美しい金髪持ち主、エイデン侯爵その人がいたのでした。
私は彼に一礼すると、差し出された手を取って舞踏会の会場へと入っていきます。
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