転生令嬢の推しは王子様の側近ですが、なぜか王子様が私を誘惑してきます…

3.第二幕

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私たちが会場に入ると、たちまち人々がざわめき始めました。

「あのお堅いエイデン侯爵が、いつの間にギルバート男爵令嬢に？」

「あの成金風情の男爵令嬢には不釣り合いですわ」

　確かに私の父は、元貿易商人でその功績を認められて男爵の爵位を賜りました。

　そして、この舞踏会に招待されてる人のほとんどは由緒正しき貴族の家柄の人ばかりです。

　それにノクタム王国のルイ王子の従兄弟にあたるのがエイデン侯爵です。

　確かにそんな人物が、成り上がりの家柄の娘をエスコートするなんて、面白くないでしょう。

　（成金と言われても仕方ないのかしら）

　そう思いながら、私はエイデン侯爵にエスコートされるままに、ある人物のところまでやってきました。

　考えに耽っていたので、私はエイデン侯爵が私に声をかけてくれるまで、私は目の前の人物には気づきませんでした。

「ギルバート男爵令嬢」

　エイデン侯爵の声で、ハッと我に返った私が紹介されたのは、ノクタム王国、王位継承第一位のルイ王子その方だったのです。

　私は慌てて最敬礼をとり、ルイ王子に挨拶を交わします。

　この煌びやかな舞踏会の会場でも、ひときわ目立つ珍しい銀髪のルイ王子は、

「この前は、僕の婚約者のリリーが面倒をかけたみたいだね」

　と申し訳なさそうに言いました。

「いえいえ、わたくしの不徳の致すところです」

　私はそう言って、深々とお辞儀をしました。

　（そういえば、リリー伯爵令嬢は今日は来てないのかしら）

　そう思った矢先、

「もう、ルイったら、どこにいるのかとおもえば」

　そう甘ったるい声が聞こえたかと思えば、リリー伯爵令嬢がこちらへとやってきました。

「リリーが、少し夜風にあたってくると言って僕から離れていったんだろう？」

　ルイ王子は優しくリリー公爵令嬢をなだめます。

　(ルイ王子はほんとにリリー公爵令嬢のことがお好きなのね）

　そう思いながら、こちらへきたリリー伯爵令嬢にも最敬礼をして、さっとその場を立ち去ろうとしました。

　けれども、

「あら、この前の令嬢ね」

　とリリー伯爵令嬢が目ざとく私が立ち去ろうとしたのに気づいて声をかけてきます。

　(また面倒事に巻き込まれるのはごめんだわ)

　私はそう思い、さっと傍にいたエイデン侯爵の方をみます。

　すると、エイデン侯爵は私からの合図に気づいてくれたのか、

「リリー伯爵令嬢、以前の昼食会で渡し忘れた婚約祝いがあるのですが」

　と、彼女の気を引くような発言をしてくれたのでした。