上 下
15 / 77

15 クラス分けと入学式

しおりを挟む
 フリーダとレオナの3人で私はクラス分け発表を見に行くと、残念ながら2人とはクラスが別れてしまっていた。その代り・・・・。
私は自分の表情が曇るのを感じた。
私の所属はCクラス。そしてキャロルとヘンリーと同じクラスだったのだ。ひょっとすると大学側の配慮があったのかもしれないが・・・正直に言うと、嫌な気分になってしまった。こんな言い方をするのは良くないかもしれないが、これから1年間・・平凡な大学生活を送るには、キャロルとヘンリー・・出来ればこの2人とは違うクラスになりたかった。

「あ~あ・・・テアとクラスが離れてしまったわ・・・。」

フリーだが残念そうに言う。

「そうね・・・私とフリーダは同じクラスになれたのに・・。」

レオナは溜息をついた。

「それなのに・・・よりにもよって幼馴染とヘンリーとは同じクラスになってしまったのね・・・?」

フリーダはクラス分けの掲示板を見ながら眉をしかめた。

「ええ・・仕方ないわ・・・。きっと大学側が配慮してくれたのね・・。」

「かもね・・。でもはっきりいえばいい迷惑よね?」

レオナは腕組みしながら言う。

「でも大丈夫よ。あの2人とは別々に行動すればいいのだから。大学は高校と違って、好きなカリキュラムを選択すればいいのだしね。オリエンテーリングの後、教室に迎えに行くから、学食で受講する科目を皆で選びましょうよ。」

フリーダの申し入れは・・・とてもありがたかった。そうだ・・こうやって私が2人から自然に少しずつ距離を空けていけば・・・ヘンリーの機嫌を損ねる事も無く、両片思いの関係も解消されて行くはずだ。

「ありがとう、フリーダ、レオナ。2人と同じ大学に進学して本当に良かったわ。」

私は2人の手を取り、感謝を述べた。

「フフ・・大げさね。」

「それじゃ、入学式が行われる講堂に急ぎましょう。」

フリーダとレオナに促され、私は頷いた。

「ええ、行きましょう。」

そして私達は3人で一緒に講堂へ向かった。

良かった・・・2人のお陰で、楽しい大学生活を送れそうだ・・・。
少なくとも、この時までの私はそう考えていた―。


****

 講堂には既に多くの新入生が集まって入学式が始まるのを椅子に座って待っていた。辺りをキョロキョロ見渡していると、隣に座っているレオナが小声で声を掛けてきた。

「どうしたの?テア?」

「あ・・ううん。ヘンリーとキャロルはどうしたかと思って・・。今探してみたのだけど、見当たらないわ。」

「無理も無いわよ。だって新入生だけで500人はいるのだから・・そう簡単には見つからないわよ。それに・・あの2人はほおって置いた方がいいわ。一緒にいるとテアが傷つくだけよ。」

フリーダが言う。

「・・・そうね・・。」

私は曖昧に微笑むしか出来なかった―。


 
****
 
 入学式終了後、それぞれのクラスへ3人で一緒に向かい、私はCクラスの前で2人とは別れた。フリーダとレオナはEクラスなのだ。

「それじゃ、またね。テア。」

「後で迎えに行くわ。」

「ありがとう、又後でね。」

フリーダとレオナに手を振って一旦別れた私はカバンを抱きかかえ、ゴクリと息を飲んで教室を覗き込んだ。するとまだキャロルとヘンリーは講堂から戻って来ていないのか、姿が見えない。

安心したような、不安な気持ちを抱えながら私は階段教室となっている一番窓際の比較的目立たない席に座った途端、背後から声を掛けられた。

「おい、テア。」

その、苛立ちを押さえたような低い声は・・・。

恐る恐る振り返ると、そこには私の事をまるで睨み付けるように立っているヘンリーの姿があった―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「わかれよう」そうおっしゃったのはあなたの方だったのに。

友坂 悠
恋愛
侯爵夫人のマリエルは、夫のジュリウスから一年後の離縁を提案される。 あと一年白い結婚を続ければ、世間体を気にせず離婚できるから、と。 ジュリウスにとっては亡き父が進めた政略結婚、侯爵位を継いだ今、それを解消したいと思っていたのだった。 「君にだってきっと本当に好きな人が現れるさ。私は元々こうした政略婚は嫌いだったんだ。父に逆らうことができず君を娶ってしまったことは本当に後悔している。だからさ、一年後には離婚をして、第二の人生をちゃんと歩んでいくべきだと思うんだよ。お互いにね」 「わかりました……」 「私は君を解放してあげたいんだ。君が幸せになるために」 そうおっしゃるジュリウスに、逆らうこともできず受け入れるマリエルだったけれど……。 勘違い、すれ違いな夫婦の恋。 前半はヒロイン、中盤はヒーロー視点でお贈りします。 四万字ほどの中編。お楽しみいただけたらうれしいです。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

私との婚約は政略ですか?恋人とどうぞ仲良くしてください

稲垣桜
恋愛
 リンデン伯爵家はこの王国でも有数な貿易港を領地内に持つ、王家からの信頼も厚い家門で、その娘の私、エリザベスはコゼルス侯爵家の二男のルカ様との婚約が10歳の時に決まっていました。  王都で暮らすルカ様は私より4歳年上で、その時にはレイフォール学園の2年に在籍中。  そして『学園でルカには親密な令嬢がいる』と兄から聞かされた私。  学園に入学した私は仲良さそうな二人の姿を見て、自分との婚約は政略だったんだって。  私はサラサラの黒髪に海のような濃紺の瞳を持つルカ様に一目惚れをしたけれど、よく言っても中の上の容姿の私が婚約者に選ばれたことが不思議だったのよね。  でも、リンデン伯爵家の領地には交易港があるから、侯爵家の家業から考えて、領地内の港の使用料を抑える為の政略結婚だったのかな。  でも、実際にはルカ様にはルカ様の悩みがあるみたい……なんだけどね。   ※ 誤字・脱字が多いと思います。ごめんなさい。 ※ あくまでもフィクションです。 ※ ゆるふわ設定のご都合主義です。 ※ 実在の人物や団体とは一切関係はありません。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

処理中です...