許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

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14 2人の女友達

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 馬車の中では相変わらずの関係だった。ヘンリーとキャロルは向かい合わせに座り、2人とも窓の外を流れる景色を見ながら仲が良さげに話をしている。
キャロルの隣に座った私はまさに針の筵状態。なのでできるだけ2人から距離を開けて椅子に座り、窓の外をじっと眺めていた。
大丈夫・・・こんな関係は今日で終わり。だって今日からキャロルは寮に入るのだから、一緒に登校するのは今日限り。週末、キャロルは我が家に帰って来るけれども、その時は丁寧に断って、2人とは別々に帰ればいいのだから・・・。

 そして私は早く馬車が大学につくことをひたすら耐えていた―。


****

 それから約40分後—

馬車は大学へ到着した。1人で速やかに馬車を下りた私はここから先は2人とは別行動をとろうと思っていたのだが・・・。
ヘンリーにエスコートされて馬車を下りたキャロルが声をかけてきた。

「テア。早くクラス分けされている掲示板を見に行きましょう。」

「え、ええ・・。」

振り向いた私はヘンリーの方を見ないようにして、キャロルの傍へ寄るとキャロルが言った。

「テアと同じクラスになれていればいいのに・・。」

「でも大学はクラスはあって、無いようなものよ。同じクラスで受ける授業は1コマしかないから。残りは4年間で単位を取れるように自分で好きな講義を選んで受講すればいいだけだから・・。」

私はヘンリーの方をなるべく見ないように言った。今、こうしている間にも彼に睨まれているのではないかと錯覚しそうになってしまうから。

「キャロル。僕たちのクラスを見に行こう。」

やはり思った通り、ヘンリーはキャロルにだけ声をかける。

「ええ、そうね。行きましょう。テア。」

キャロルに声を掛けられて顔を上げた私は運悪くヘンリーと視線が合ってしまった。すると・・やはり彼は無言の圧で私を見ていた。好きな人からそのような視線で見られるのは耐えがたい。ましてやここは大学で、私とヘンリーはこの大学の付属の高校を卒業しているのだ。当然、新1年生の半分近くは知り合いと言っても過言ではない。そんな知り合いの前で冷たい視線でヘンリーに睨まれている事を・・私は知られたくなかった。
その時―

「あら、もしかしてテアじゃないの。」

不意に背後から名前を呼ばれて振り向くと、3年間同じクラスだった友人のフリーダがそこに立っていた。隣には同じく友人のレオナがいる。

「まあ、フリーダ、レオナ。卒業式以来ね。」

私はほっとした様子で2人に話しかけた。

「ええ。久しぶりね、テア。ところで・・。」

フリーダはヘンリーを見ると言った。

「ヘンリー。その人は誰なの?」

いきなりフリーダはヘンリーにキャロルの事を尋ねてきた。レオナも厳しい目つきでヘンリーとキャロルを交互に見ている。


「あ、あの。彼女はキャロルと言って、私の幼馴染なの。今日からこの大学に一緒に通うことになったのよ。」

私はとっさキャロルの前に立つと言った。

「ふ~ん・・・、テアの友人だったのね。・・ところで大事な話があるからテアを借りるわね?」

フリーダは私の手を取ると、キャロルたちから引き離してくれた。そしてその後をついてくるレオナ。



****

「ねえ・・・一体どういう事なの?ヘンリーは貴女の許嫁だったじゃない?それなのに何故テアの幼馴染とあんな風に寄り添っているの?」

フリーダが尋ねてきた。

「ええ。確かにあの2人・・・距離感が近すぎるわ。」

レオナも険しい顔つきで言う。この2人・・以前からヘンリーの事を良く思っていなかったので、あたりが強い。そこで私は正直に彼女たちに話をした。
キャロルとヘンリーは出会った途端・・惹かれあってしまったこと。そしてキャロルは私にとって大切な親友で、ヘンリーの事も好きだから・・そっと身を引こうかと思っている事を白状した。

「そ、そんな・・。テアはそれでもいいの?」

フリーダは悲し気な顔で言う。

「でも、私は・・テアに悪いけど、前からヘンリーは嫌だったわ。ちょっと顔がいいからって、えばっていて・・大体テアに対して不親切だったもの。テアには新しい恋をしてもらいたいわ。」

レオナは、はっきり物を言う。

「ありがとう・・・2人とも。正直、あの場にいるのは・・いたたまれなかったから助かったわ。」

私は2人にお礼を言った。

「なら、2人はあのままにしておいてテアは私たちと行動すればいいわよ。」

フリーダは笑顔で私を見た。

「ええ、それがいいわね。」

「ありがとう、2人とも・・・・。」

私は2人の友情に感謝し、入学式は一緒に参加することになったのだが・・・それがのちにヘンリーを激怒させてしまう事になるとは夢にも思わなかった―。







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