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16 ヘンリーの怒りの理由
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「ま、待って・・・ヘンリー。腕が痛いから・・は、離してくれる・・?」
「・・・。」
しかし、ヘンリーは私の声が届いていないのか、無言のまま大股で歩き続けている。
今私はヘンリーに無理やり右手首を掴まれて、引っ張られるように廊下を歩かされていた。一体・・・彼は私を何所へ連れて行くつもりなのだろう?それに・・どうしてキャロルはいないのだろう?
そのまま私は人気の無い中庭へ連れて来られると、掴んでいた手首をヘンリーは乱暴に離した。ようやく手首を解放された私はそっと左手で捕まれていた右手首に触れてみると、紫色の痣が出来ている。
「・・・。」
今までこれほどまでに乱暴な扱いを受けたことが無かった私は驚いてヘンリーを見た。
「ヘンリー・・・。どうしたの?何故そんなに怒っているの・・?私、何か貴方を怒らせるような事・・してしまった?」
「ああ・・そうだ。テアッ!お前のせいでキャロルは怪我をしたんだぞっ!」
「えっ?!キャロルが・・怪我をっ?!ど、どうして・・・?!」
「お前がフリーダとレオナの3人で行ってしまったから、キャロルはお前の後を追って、走った時に転んでしまったんだ。その時に足首をくじいてしまったんだよ。」
「え・・?」
確かに私はキャロルの前からいなくなってしまったけれども・・転んで怪我をしたのは私のせいになってしまうのだろうか・・?私のそんな心の機微に気づいたのかヘンリーが言った。
「何だ?その不服そうな目は・・キャロルが怪我したのは自分には関係ないと思っているのか?」
「いいえ、そんな事無いわ。・・私がいけなかったのよ・・・。それでキャロルは何所にいるの?」
「キャロルは医務室にいる。・・お前を呼んでいるんだよ。行ってやってくれ。」
忌々し気に言うヘンリー。キャロルが私を呼んでいるのが余程気に入らないらしい。
「分ったわ・・行って来るわね。」
医務室に向かって歩き始めると、距離を空けてヘンリーも後からついて来た。
「・・・。」
私は後ろを振り返らないように歩き、医務室を目指した。歩くたびにヘンリーに掴まれた右手首がズキズキ痛む。そっとブラウスの袖をまくってみれば、さっきよりも赤黒く腫れていた。ヘンリーがついて来なければ・・ついでに右手首を診察して貰えるのだけど、彼の前で診察をして貰うのは気が引けた。・・・後で水で冷やしておこう・・・私はそう考えた。
****
医務室に辿り着いた私は左手でドアをノックした。
コンコン
すると・・・
カチャリとドアノブが回り、ドアが開いた。そこには眼鏡をかけた長い髪を後ろで結わえた白衣姿の若い男性がいた。
「患者さんかい?」
「いいえ・・こちらに足首を怪我した女子学生がいるはずなのですが・・。」
すると彼は「ああ」と頷き、ドアを大きく開け放つと言った。
「どうぞ。」
「ありがとうございます。」
頭を下げて医務室の中へ入ると、ヘンリーも続いて中に入ろうとする。すると・・。
「ストップ。君は入らないでくれ。」
先生はヘンリーが中へ入ろうとするのを止めた。
「何故ですか?」
ヘンリーはジロリと先生を睨み付けた。
「それは彼女が君は中に入らないでくれと言っているからだよ。彼女と2人きりで話がしたいそうだ。さ、どうぞ。」
先生は私を招き入れると、ヘンリーに言った。
「君はここで待っていてくれ。」
そしてバタンとドアを閉めてしまった。すると・・・・。
「テア。」
背後で声が聞こえた。振り向くとそこには椅子に座り、左足首に包帯を巻いたキャロルの姿があった。
「キャロル。ごめんなさい。私が勝手にいなくなってしまったから・・。」
キャロルの傍によると私は彼女の手を取り、謝った。
「いいのよ、だって怪我をしたのは私が悪いんだもの。テアは何も悪くはないわ。でも・・。」
キャロルは私の手をそっと握りしめると言った。
「お願い・・私から離れていかないでね?」
そう言ってニッコリ微笑んだ―。
「・・・。」
しかし、ヘンリーは私の声が届いていないのか、無言のまま大股で歩き続けている。
今私はヘンリーに無理やり右手首を掴まれて、引っ張られるように廊下を歩かされていた。一体・・・彼は私を何所へ連れて行くつもりなのだろう?それに・・どうしてキャロルはいないのだろう?
そのまま私は人気の無い中庭へ連れて来られると、掴んでいた手首をヘンリーは乱暴に離した。ようやく手首を解放された私はそっと左手で捕まれていた右手首に触れてみると、紫色の痣が出来ている。
「・・・。」
今までこれほどまでに乱暴な扱いを受けたことが無かった私は驚いてヘンリーを見た。
「ヘンリー・・・。どうしたの?何故そんなに怒っているの・・?私、何か貴方を怒らせるような事・・してしまった?」
「ああ・・そうだ。テアッ!お前のせいでキャロルは怪我をしたんだぞっ!」
「えっ?!キャロルが・・怪我をっ?!ど、どうして・・・?!」
「お前がフリーダとレオナの3人で行ってしまったから、キャロルはお前の後を追って、走った時に転んでしまったんだ。その時に足首をくじいてしまったんだよ。」
「え・・?」
確かに私はキャロルの前からいなくなってしまったけれども・・転んで怪我をしたのは私のせいになってしまうのだろうか・・?私のそんな心の機微に気づいたのかヘンリーが言った。
「何だ?その不服そうな目は・・キャロルが怪我したのは自分には関係ないと思っているのか?」
「いいえ、そんな事無いわ。・・私がいけなかったのよ・・・。それでキャロルは何所にいるの?」
「キャロルは医務室にいる。・・お前を呼んでいるんだよ。行ってやってくれ。」
忌々し気に言うヘンリー。キャロルが私を呼んでいるのが余程気に入らないらしい。
「分ったわ・・行って来るわね。」
医務室に向かって歩き始めると、距離を空けてヘンリーも後からついて来た。
「・・・。」
私は後ろを振り返らないように歩き、医務室を目指した。歩くたびにヘンリーに掴まれた右手首がズキズキ痛む。そっとブラウスの袖をまくってみれば、さっきよりも赤黒く腫れていた。ヘンリーがついて来なければ・・ついでに右手首を診察して貰えるのだけど、彼の前で診察をして貰うのは気が引けた。・・・後で水で冷やしておこう・・・私はそう考えた。
****
医務室に辿り着いた私は左手でドアをノックした。
コンコン
すると・・・
カチャリとドアノブが回り、ドアが開いた。そこには眼鏡をかけた長い髪を後ろで結わえた白衣姿の若い男性がいた。
「患者さんかい?」
「いいえ・・こちらに足首を怪我した女子学生がいるはずなのですが・・。」
すると彼は「ああ」と頷き、ドアを大きく開け放つと言った。
「どうぞ。」
「ありがとうございます。」
頭を下げて医務室の中へ入ると、ヘンリーも続いて中に入ろうとする。すると・・。
「ストップ。君は入らないでくれ。」
先生はヘンリーが中へ入ろうとするのを止めた。
「何故ですか?」
ヘンリーはジロリと先生を睨み付けた。
「それは彼女が君は中に入らないでくれと言っているからだよ。彼女と2人きりで話がしたいそうだ。さ、どうぞ。」
先生は私を招き入れると、ヘンリーに言った。
「君はここで待っていてくれ。」
そしてバタンとドアを閉めてしまった。すると・・・・。
「テア。」
背後で声が聞こえた。振り向くとそこには椅子に座り、左足首に包帯を巻いたキャロルの姿があった。
「キャロル。ごめんなさい。私が勝手にいなくなってしまったから・・。」
キャロルの傍によると私は彼女の手を取り、謝った。
「いいのよ、だって怪我をしたのは私が悪いんだもの。テアは何も悪くはないわ。でも・・。」
キャロルは私の手をそっと握りしめると言った。
「お願い・・私から離れていかないでね?」
そう言ってニッコリ微笑んだ―。
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