70 / 204
第68話 名実共に…
しおりを挟む
「う…ん…」
どのくらい経過しただろうか…。突然ふと目が覚めた。
「え…?」
気づけばベッドの上にいた。部屋の灯りは全て消え、カーテンの隙間から差し込む月明かりが部屋を青白く照らしている。
…いつの間に眠っていたのだろう?
誰かが部屋に運んでくれたのだろうか…?
そして何気なくゴロリと身体の向きを変えた時…。
「!」
心臓が止まるのではないかと思うくらいの衝撃を受けた。驚くべきことに私の隣ではこちらを向いて静かに寝息を立てて眠っているフィリップの姿がそこにあったからだ。
フィ、フィリップ…が何故、私の部屋に…?
ドキドキする胸を押さえながら、ゆっくり身体を起こし…ここが自分の部屋では無く、フィリップの部屋であるということに気付くのは然程時間がかからなかった。
私が眠っていたのは…フィリップのベッドだったのだ。誰かが眠ってしまった私
とフィリップをベッドまで運んでくれた…?
「…」
フィリップは静かな寝息を立てて眠っている。顔つきも穏やかだし、どこも苦しそうには見えない
ここはフィリップのベッドだから、私は降りたほうがいいかもしれない…。部屋の中にはリクライニングソファもあるし、カウチソファも置いてある。
「…」
そっと上掛けのキルトをまくって、フィリップを起こさないようにベッドから降りようとした時、不意に声を掛けられた。
「何処へ行くんだい?エルザ」
「え?」
驚いてフィリップを振り返ると彼はピローに頭を乗せてじっと私を見つめていた。
「あ…ごめんなさい、フィリップ。貴方を起こしてしまったのね」
「別に気にしなくてもいいよ…。具合も今はすっかり良くなったし。それよりもまだ真夜中だよ?何処へ行こうとしていたんだい?」
穏やかな声で語りかけてくるフィリップ。その様子から今は調子が良いことが分かった。
「具合が良くなって何よりだわ。ここは貴方のベッドでしょう?だから降りようと思ったの」
「え?まさかこんな真夜中に自分の部屋へ戻るつもりだったのかい?」
「いいえ、行かないわ。フィリップのことが心配だから。ただベッドから降りるだけよ」
「何故?別に降りることは無いのに」
「だって…このベッドは貴方のベッドだもの。降りるわ」
すると彼に右手首を掴まれた。
「…エルザ。行くことは無いよ。一緒に寝よう?僕達は…夫婦なのだから」
夫婦…。
フィリップの口から改めてその言葉が出てくると、胸が熱くなってくる。
「…っ」
思わず目に涙が浮かび、ゴシゴシと目を擦った。その様子に一瞬フィリップが息を飲む気配が伝わった。
「エルザ…泣いてるの?」
フィリップが起き上がって私に尋ねてきた。
「え、ええ…。貴方に私達が夫婦と言って貰えたことが…嬉しくて…」
すると、フィリップが私を強く抱きしめてきた。
「ごめん…今迄の僕は本当に酷い人間だった。君をあんなにも追い詰めて、苦しめてしまったのだから、本当に申し訳無かったと思ってる。だけど、今ならはっきり言えるよ。エルザ、君は…僕の大切な妻だって。だからこそ、僕は君を本当は手放してあげなければいけないのに…今は、最後まで側にいて欲しいと願ってしまっているんだ」
フィリップの声はいつしか涙声になっていた。
「勿論よ。私はフィリップから離れないわ。だって貴方のことを愛しているのだもの」
「エルザ…」
フィリップは私を抱きしめていた腕を緩めると、顔を近づけてきた。
「…」
目を閉じるとフィリップの唇が重なってきた。
「「…」」
私達は少しの間、無言でキスを交わしていたけれども…やがてフィリップは唇を離すと、私に言った。
「エルザ…君と本当の夫婦になりたい…。駄目…かな…?」
フィリップの瞳が切なげに揺れる。
「ええ、私も…同じ気持ちよ」
だって…フィリップの前では口に出して言えないけれども、結婚が決まったときからずっと、私は彼との間に赤ちゃんが欲しいと思っていたから。
「ありがとう、エルザ…愛してる」
フィリップは笑みを浮かべ、私をベッドに寝かせると唇を重ねてきた。
フィリップ…。
私は彼の首に腕を回した。
そしてこの日の夜…。
私とフィリップは名実共に本当の夫婦になれた―。
どのくらい経過しただろうか…。突然ふと目が覚めた。
「え…?」
気づけばベッドの上にいた。部屋の灯りは全て消え、カーテンの隙間から差し込む月明かりが部屋を青白く照らしている。
…いつの間に眠っていたのだろう?
誰かが部屋に運んでくれたのだろうか…?
そして何気なくゴロリと身体の向きを変えた時…。
「!」
心臓が止まるのではないかと思うくらいの衝撃を受けた。驚くべきことに私の隣ではこちらを向いて静かに寝息を立てて眠っているフィリップの姿がそこにあったからだ。
フィ、フィリップ…が何故、私の部屋に…?
ドキドキする胸を押さえながら、ゆっくり身体を起こし…ここが自分の部屋では無く、フィリップの部屋であるということに気付くのは然程時間がかからなかった。
私が眠っていたのは…フィリップのベッドだったのだ。誰かが眠ってしまった私
とフィリップをベッドまで運んでくれた…?
「…」
フィリップは静かな寝息を立てて眠っている。顔つきも穏やかだし、どこも苦しそうには見えない
ここはフィリップのベッドだから、私は降りたほうがいいかもしれない…。部屋の中にはリクライニングソファもあるし、カウチソファも置いてある。
「…」
そっと上掛けのキルトをまくって、フィリップを起こさないようにベッドから降りようとした時、不意に声を掛けられた。
「何処へ行くんだい?エルザ」
「え?」
驚いてフィリップを振り返ると彼はピローに頭を乗せてじっと私を見つめていた。
「あ…ごめんなさい、フィリップ。貴方を起こしてしまったのね」
「別に気にしなくてもいいよ…。具合も今はすっかり良くなったし。それよりもまだ真夜中だよ?何処へ行こうとしていたんだい?」
穏やかな声で語りかけてくるフィリップ。その様子から今は調子が良いことが分かった。
「具合が良くなって何よりだわ。ここは貴方のベッドでしょう?だから降りようと思ったの」
「え?まさかこんな真夜中に自分の部屋へ戻るつもりだったのかい?」
「いいえ、行かないわ。フィリップのことが心配だから。ただベッドから降りるだけよ」
「何故?別に降りることは無いのに」
「だって…このベッドは貴方のベッドだもの。降りるわ」
すると彼に右手首を掴まれた。
「…エルザ。行くことは無いよ。一緒に寝よう?僕達は…夫婦なのだから」
夫婦…。
フィリップの口から改めてその言葉が出てくると、胸が熱くなってくる。
「…っ」
思わず目に涙が浮かび、ゴシゴシと目を擦った。その様子に一瞬フィリップが息を飲む気配が伝わった。
「エルザ…泣いてるの?」
フィリップが起き上がって私に尋ねてきた。
「え、ええ…。貴方に私達が夫婦と言って貰えたことが…嬉しくて…」
すると、フィリップが私を強く抱きしめてきた。
「ごめん…今迄の僕は本当に酷い人間だった。君をあんなにも追い詰めて、苦しめてしまったのだから、本当に申し訳無かったと思ってる。だけど、今ならはっきり言えるよ。エルザ、君は…僕の大切な妻だって。だからこそ、僕は君を本当は手放してあげなければいけないのに…今は、最後まで側にいて欲しいと願ってしまっているんだ」
フィリップの声はいつしか涙声になっていた。
「勿論よ。私はフィリップから離れないわ。だって貴方のことを愛しているのだもの」
「エルザ…」
フィリップは私を抱きしめていた腕を緩めると、顔を近づけてきた。
「…」
目を閉じるとフィリップの唇が重なってきた。
「「…」」
私達は少しの間、無言でキスを交わしていたけれども…やがてフィリップは唇を離すと、私に言った。
「エルザ…君と本当の夫婦になりたい…。駄目…かな…?」
フィリップの瞳が切なげに揺れる。
「ええ、私も…同じ気持ちよ」
だって…フィリップの前では口に出して言えないけれども、結婚が決まったときからずっと、私は彼との間に赤ちゃんが欲しいと思っていたから。
「ありがとう、エルザ…愛してる」
フィリップは笑みを浮かべ、私をベッドに寝かせると唇を重ねてきた。
フィリップ…。
私は彼の首に腕を回した。
そしてこの日の夜…。
私とフィリップは名実共に本当の夫婦になれた―。
209
あなたにおすすめの小説
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる