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第69話 幸せを噛み締めて
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翌朝…。
ベッドの中、隣で誰かの息遣いを感じて振り向くとそこにはフィリップが目を閉じて眠っていた。
そうだ…。
昨夜、私とフィリップは結婚して初めて結ばれて…。
思い出すと、恥ずかしさと嬉しさの両方がこみ上げてくる。この夜の事は決して忘れることは無いだろう。
例え、フィリップを失ってしまった後でも…。
「フィリップ…」
もっと彼の体温を感じたくて、眠っているフィリップの側にすり寄った。
すると、フィリップの腕が私を抱き寄せてきた。
「おはよう、エルザ」
フィリップが目を開けて私を見た。
「え…?フィリップ…起きていたの?」
自分から彼にすり寄ったことが恥ずかしくて、思わず顔が赤くなる。
「うん、起きていたよ。今の幸せを…噛み締めていたんだよ」
「私も…今、とても幸せよ」
フィリップの胸に顔を埋め、彼の心臓の鼓動を聞く。そんな私の髪を撫でながらフィリップが心配そうに尋ねてきた。
「エルザ…そう言えば、身体は大丈夫かな?」
途端に昨夜の事を思い出し、思わず顔が赤面する。
「え、ええ。大丈夫よ。でも…私よりも貴方の方が心配だわ。具合はどうなの?」
するとフィリップは笑みを浮かべながら尋ねてきた。
「どうだい?今の僕はエルザから見て具合が悪そうに見えるかい?」
私はフィリップをじっと見つめた。今のフィリップは顔色も良いし、元気そうに見える。
「具合…悪そうには見えないわ」
「うん、そうなんだ。自分でも不思議なんだけど…今だから言うけど、毎朝身体の痛みで目が覚めていたのに今朝はそれが無かったんだ。きっと心の負担が減ったからかも知れない。僕は君を愛しているのに冷たく、今迄散々酷い態度を取って大切な君を傷つけてきたから…」
フィリップの私を抱き寄せる腕に力が込められた。その強さが涙が出そうになるほどに嬉しかった。
「フィリップ…愛しているわ」
彼の目を見つめて、自分の素直な気持ちを告げる。
「僕も愛しているよ」
そして私達は抱き合ったまま、キスをした―。
****
「何だか2人とも、とても幸せそうだな」
仕事をする為、フィリップの書斎を尋ねてきたセシルが開口一番、言った言葉だ。
「そうだね。セシルの言う通り、僕とエルザは今とても幸せなんだよ。そうだよね?エルザ?」
フィリップが隣に座って仕事をしていた私に微笑みかけてくる。
「ええ、そうね。フィリップ」
するとセシルが肩をすくめた。
「やれやれ…ひょっとすると俺は2人のおじゃま虫か?ここで仕事をしないほうがいいかな?」
するとフィリップが真面目な顔つきになった。
「いや、それは駄目だ。セシルにはいずれ僕の仕事を全て引き継いでもらわないといけないからね」
「え?何だよ、それ。ひょっとしてその若さで引退でもするのか?」
セシルの質問にドキリとした。フィリップは…なんと答えるつもりなのだろう?
「そうじゃないよ。セシルに仕事を引き継いだら僕はエルザと一緒に長期休暇を取って世界一周の船旅に出る予定だからだよ。そうだよね?エルザ?」
「え、ええ。そうなのよ、セシル」
私はとっさにフィリップの嘘に合わせた。
「そうか…なるほどな。だから新婚旅行に行っていなかったのか。納得したよ」
セシルは笑いながら私を見た。
新婚旅行…。
言われてみれば私とフィリップは新婚旅行に行っていない。毎日が必死で…そんな事を考える余裕すらなかった。
けれど…。
私は仕事をしているフィリップをチラリと見た。
病に身体を蝕まれているフィリップと新婚旅行に行くのは不可能だ。
そう。
例え新婚旅行の思い出が無くても…フィリプの側にいられるだけで私は今、幸せなのだから―。
ベッドの中、隣で誰かの息遣いを感じて振り向くとそこにはフィリップが目を閉じて眠っていた。
そうだ…。
昨夜、私とフィリップは結婚して初めて結ばれて…。
思い出すと、恥ずかしさと嬉しさの両方がこみ上げてくる。この夜の事は決して忘れることは無いだろう。
例え、フィリップを失ってしまった後でも…。
「フィリップ…」
もっと彼の体温を感じたくて、眠っているフィリップの側にすり寄った。
すると、フィリップの腕が私を抱き寄せてきた。
「おはよう、エルザ」
フィリップが目を開けて私を見た。
「え…?フィリップ…起きていたの?」
自分から彼にすり寄ったことが恥ずかしくて、思わず顔が赤くなる。
「うん、起きていたよ。今の幸せを…噛み締めていたんだよ」
「私も…今、とても幸せよ」
フィリップの胸に顔を埋め、彼の心臓の鼓動を聞く。そんな私の髪を撫でながらフィリップが心配そうに尋ねてきた。
「エルザ…そう言えば、身体は大丈夫かな?」
途端に昨夜の事を思い出し、思わず顔が赤面する。
「え、ええ。大丈夫よ。でも…私よりも貴方の方が心配だわ。具合はどうなの?」
するとフィリップは笑みを浮かべながら尋ねてきた。
「どうだい?今の僕はエルザから見て具合が悪そうに見えるかい?」
私はフィリップをじっと見つめた。今のフィリップは顔色も良いし、元気そうに見える。
「具合…悪そうには見えないわ」
「うん、そうなんだ。自分でも不思議なんだけど…今だから言うけど、毎朝身体の痛みで目が覚めていたのに今朝はそれが無かったんだ。きっと心の負担が減ったからかも知れない。僕は君を愛しているのに冷たく、今迄散々酷い態度を取って大切な君を傷つけてきたから…」
フィリップの私を抱き寄せる腕に力が込められた。その強さが涙が出そうになるほどに嬉しかった。
「フィリップ…愛しているわ」
彼の目を見つめて、自分の素直な気持ちを告げる。
「僕も愛しているよ」
そして私達は抱き合ったまま、キスをした―。
****
「何だか2人とも、とても幸せそうだな」
仕事をする為、フィリップの書斎を尋ねてきたセシルが開口一番、言った言葉だ。
「そうだね。セシルの言う通り、僕とエルザは今とても幸せなんだよ。そうだよね?エルザ?」
フィリップが隣に座って仕事をしていた私に微笑みかけてくる。
「ええ、そうね。フィリップ」
するとセシルが肩をすくめた。
「やれやれ…ひょっとすると俺は2人のおじゃま虫か?ここで仕事をしないほうがいいかな?」
するとフィリップが真面目な顔つきになった。
「いや、それは駄目だ。セシルにはいずれ僕の仕事を全て引き継いでもらわないといけないからね」
「え?何だよ、それ。ひょっとしてその若さで引退でもするのか?」
セシルの質問にドキリとした。フィリップは…なんと答えるつもりなのだろう?
「そうじゃないよ。セシルに仕事を引き継いだら僕はエルザと一緒に長期休暇を取って世界一周の船旅に出る予定だからだよ。そうだよね?エルザ?」
「え、ええ。そうなのよ、セシル」
私はとっさにフィリップの嘘に合わせた。
「そうか…なるほどな。だから新婚旅行に行っていなかったのか。納得したよ」
セシルは笑いながら私を見た。
新婚旅行…。
言われてみれば私とフィリップは新婚旅行に行っていない。毎日が必死で…そんな事を考える余裕すらなかった。
けれど…。
私は仕事をしているフィリップをチラリと見た。
病に身体を蝕まれているフィリップと新婚旅行に行くのは不可能だ。
そう。
例え新婚旅行の思い出が無くても…フィリプの側にいられるだけで私は今、幸せなのだから―。
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