かあさんのつぶやき

春秋花壇

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のどかな春の日

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のどかな春の日
朝日が優しく窓を照らす。カーテンを開けると、澄んだ青空が広がっていた。まだ肌寒い早朝だが、小鳥のさえずりが心地よく響き、春の訪れを感じさせる。

庭の桜の木は、まだ蕾が固く閉じている。しかし、枝の先端にはほんのりピンク色が色づき始め、もうすぐ満開を迎えようとしている。

朝食を済ませ、庭に出ると、雀の群れが飛び交っていた。地面に落ちた虫をついばんだり、枝に止まってさえずったり、元気いっぱいに動き回っている。その姿を見ているだけで、心が軽くなるような気持ちになる。

暖かい日差しを浴びながら、庭のベンチに腰掛ける。目の前の花壇には、チューリップやスイセンが色とりどりに咲き誇っている。春の陽光を受けて、花びらがキラキラと輝いている。

遠くの方では、子どもたちの笑い声が聞こえてくる。公園で遊んでいるのだろうか、無邪気な声が春の空に溶け込んでいく。

こんなのどかな日には、何も考えずにただゆっくりと過ごしたい。鳥のさえずりを聞きながら、花の香りに包まれて、心身ともにリフレッシュする。

しばらくすると、どこからか猫が現れた。雀を追いかけて、庭を駆け回っている。猫のいたずらに、雀たちは慌てて飛び逃げていく。

猫と雀の追いかけっこを眺めていると、子供の頃の思い出が蘇ってくる。友達と野原で遊んだり、虫取りをしたり、何も考えずにただただ楽しい時間を過ごしていた。

大人になると、責任や義務に追われ、つい心が疲れてしまうこともある。しかし、こんな風に自然と触れ合い、のんびり過ごすことで、初心に返ることができるような気がする。

春は、新しい始まりの季節。冬の間の疲れを癒し、新たな気持ちでスタートするのに最適な季節だ。

息子の和俊が、アイスコーヒーに氷を入れてくれた。

「冷たいコーヒー、いいですね」

優しい息子に感謝して、柔らかな春の日を楽しもう。

「ありがとう」

いつの間にか口角も上がり、HOWEVERを口ずさむ。

暖かな日差し、小鳥のさえずり、美しい花々。今日も元気だ。

「おはようございます」

お金もない。力も名誉もない。だけど私は幸せです。

生まれてきた日を呪った日、死ねないことを恨んだ日。

「そんなこともあったね」

と、今は全部笑い話。

体の痛みも相変わらず。記憶障害はひどくなっている。

家計簿も付けられない。本も読めない。

何が違うんだろう。

私の中に起きている小さき奇跡に驚きながら神の癒しを知る。

春の訪れを五感で感じながら、心豊かに過ごしたい。
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