かあさんのつぶやき

93 障害

「すごいなー。和俊は」

何とも悲しそうにあひるのように口を尖らせてかあさんは、呟いている。

沼田 和俊（ぬまた かずとし）45歳。

小宮 富子(こみや　とみこ)68歳。

二人は親子なのだが、和俊が中学生の時に父母は離婚したので、

かあさんは旧姓に戻ってしまった。

俺達は、父の戸籍に取り残された。

子どもたちが多感な年齢だったから、姓が変わるが可哀想だとでも思ったのだろうか。

俺は、精神薬と睡眠薬を飲んでいるからちゃんと処方を飲む事ができれば、

普通に6.7時間、いや8時間くらいは眠れる。

ところが、かあさんはその睡眠薬を飲む事が出来ない。

過敏に反応してしまって、一番弱い効き目とされるものでも

3日も眠りこけてしまったり意識障害を起こして、

記憶の全くないままとんでもない事件を起こしたりして、

措置入院になったりする。

そんな事も手伝って、きっとかあさんは、おばあちゃんが身罷って

俺達の妹と弟、母さんにとっては子供も身罷った時に重症うつ病になり、

アルコールの乱用をしてしまったのだろう。

アルコール依存症は、いったん罹患するとに二度とうまくお酒を飲む事は出来ないと言われている。

で、働いていないかあさんにとって睡眠障害がどうして問題なのかというと

Twitterの通知らしい。

夜中にごそごそ起き出して、幾つもtweetするものだから

せっかくフォローしてもらっても、ミュートにされたりブロックされたり。

その度に、悲しそうな寂しそうな顔になり、姥捨て山にでも置いて行かれたように

しょぼーーんとなっている。

境界性パーソナリティ障害だから、見捨てられ不安が強いんだろうね。

俺が、ネットの人間関係で悩むと

「全員と仲良くできる訳じゃないんだから、残ってくれている人を大切に出来たら大きな〇」

と、口では言ってるけど自分に問題が起きると、感情がついていかないらしい。


「すごいなー。和俊は」

かあさんは、本を読む事がとても困難だからなかなか語彙力が増えないことで

時たま、俺をうらやましがる。

俺もかあさんも小学校も発達障害でまともに勉強できていないのだけど、

俺はアスペルガー症候群

アスペルガー症候群は発達障がいの一つで、社会性・コミュニケーション・想像力・共感性・イメージすることの障がい、こだわりの強さ、感覚の過敏などを特徴とする、自閉症スペクトラム障がいのうち、知能や言語の遅れがないものをいいます。


かあさんは、注意欠陥多動性障害

注意欠如・多動症（ADHD）とは、発達水準からみて不相応に注意を持続させることが困難であったり、順序立てて行動することが苦手であったり、落ち着きがない、待てない、行動の抑制が困難であるなどといった特徴が持続的に認められ、そのために日常生活に困難が起こっている状態です。


同じ発達障害でも、発達特性がまったく違う。

なのに、併用して二つの特性を合併していたりするから、

基本的に人に興味がなかったりする。

人間模様を書く小説において、これって致命傷だよね。

だって、売れているみんなに好まれる作品は、どれも魅力的なキャラがたくさん登場するのだから。

風景描写、情景描写をするのに、空を眺めたり花を観察したりする事は大分できるようになったから、

もう少し他の人間に興味がもてたら面白い絡み合いも出来るのかも知れない。

同じ様に、注意欠陥多動性障害だったのじゃないかと言われている太宰治先生の作品は、

『酒の追憶』を読んでも、随分、人の一挙手一投足が細かく書かれていて、

努力をされたんだろうなと感心する。

あんなふうに人物を生き生きと描き出せたらいいのにね。

本当に心から欲しければ、気を付けるだろうし、努力も出来るだろう。

いずれ手に入れられると信じて、まったりのんびり変化し、成長して行こう。