かあさんのつぶやき

春秋花壇

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87 赤まんま

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神さま視点

赤まんまの可愛いお花が咲いている。

新しいお花を買えない下級老人のガーデニングをにぎやかに彩っている。

紅い小さな蕾をびっしりとつけ、今にもはじけそうな笑顔で風にそよそよ揺らいでる。

「神様は優しいね」

買わなくても寂しくない様に、紫蘇やおしろいばなや

赤まんまのお花が、植えてもいないのに勝手に自生してきて

ナチュラルガーデンのようにはなやいでいる。

富子は、息子和俊の好物である秋刀魚に塩を振り、

白い皿に並べてオーブンで塩焼きにする。

焼魚の香ばしい香りが、鼻をくすぐる。

便秘にならないように、ニンジンや小松菜、もやしの入った味噌汁を

ことことと煮込んでいる。

食慾のない息子への心からのプレゼント。

白い湯気も御馳走だ。

今日こそは一緒に、ご飯を食べられるかな?

おいしいものをおいしいねと食べられるのは至福の時だと思う。

最近は、自転車で遠方まで買い物に行き、

さまざまな食材を調理しても、

「いらない」

と、断られる事が多かった。

だからといって、一人と食べる時の味気なさ。

まるで砂を噛んでいるように楽しくない。

味も香りもしない。

宇宙食でも食べるように栄養を取り入れると作業といった感じだった。

独り暮らしで、勝手に一人で食べるよりも苦痛の時間に変わっていく。

どう説明すれば、みんなに解ってもらえるんだろう。

自分が摂食障害だった時、親にこんな思いをさせていたのだろうか。

きっとさせていたんだよね。

「男子厨房に入るべからず」

と、のたもうていた父が富子の為にキャベツを刻んでいたのだから……。

子をもって知る親の恩。

まさか、68歳になってなおそんな出来事があろうとは……。


(おかしい)

突然、富子は首をかしげる。

(だって、和俊が食欲不振になってからとうに1カ月は過ぎている)

(新型感染症や夏バテでさえ1カ月もすれば普通治るだろう)

そして、8月の末のとある出来事を想い出した。

何時もなら、月末、二人はたばこ代にも事欠くくらいお金がない。

なのに、和俊は嬉しそうにニコニコしながら、チャージして使うカードに

15000円を入金した。

和俊が食べないでためておいたお金だ。

それで、暫くはお金が持つと思っていたのだ。

ところが、富子はあっという間にそのお金を使い果たした。

味噌も醤油も砂糖も塩も全くなかったからだ。

母、富子の悪い癖。

「宵越しのお金を持つことができない」

有ればあっただけあっという間に使ってしまうのだ。

多分、母の発達障害である注意欠陥多動性障害のせいなのだろう。

子どものころ、おじいちゃんから何度も注意され小遣い帖をつけたり

度重なる指導を受けても、空財部になるとその辺に放り投げておくという

体たらくを繰り返していたようだ。

富子の回想ではその次にあった時から、和俊は病院で経腸栄養剤を処方してもらっていた。

母、富子のたばこ代を算出する為に和俊は拒食になっているんじゃないかと思うのだ。


なんてことだ。

共依存の再来だ。


共依存とは特定の相手との関係に依存しすぎる状態のこと。 恋愛関係、友人関係、親子関係など人間関係全般に現れます。 相手との関係性において自分の価値を見出すことになるため、自分自身を見失ってしまったり、危険な状況を招いたりすることも。


これじゃあまるで、毒親の為にけなげに尽す搾取子。

このままいけば、一体誰の問題でこんなことになっているのか

境を設けることもできず、以前のようにバタバタと倒れ、

毎日、救急車を呼ぶ事態になってしまう。

そして、泊まることも会うことも禁止に戻ってしまう。



やっぱり、タバコをやめるしかないんだけど。

二人ともやめる気にさえなれないでいる。

かあさんのパソコンは棺おけに片足突っ込んでいる。

今年の末にsupportも切れる。

オンラインゲームがバージョンアップしたので、楽しみに課金してインしたのに、

強制落ちに何度もなって可哀想にしょぼんとしてる。

ゲーミングパソコンが買えるお金が何処からか降ってくればいいのにな。

そうすれば、肩の痛みで夜中もうなっている母さんがほんのちょっとでも笑顔になれるのに。


赤まんまのお花はそしらぬ顔で戯れている。

花言葉は、「あなたのために役立ちたい」


こんばんは💛
おつかれさまです
今日は家族の好きな
秋刀魚の塩焼きです
発達障害の
二人でお酒を飲むのは
3年ぶりくらいかな?
この日本酒は、コンビニで
売っているものなのですが
こーい味です
旬の食べ物に負けない物を
選んでみました
笑顔同封
いつもいいね、リツイート
ありがとうございます💕 pic.twitter.com/lOAMIkSqVL
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