かあさんのつぶやき

春秋花壇

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49 電話止められた

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「パソコン使えないよ」

「どうして?」

「ネット接続されてないみたい」

「だから、プロバイダーのお金、

昨日、俺に払えばよかったのに」

「ええええ、お金払ってないの?」

「言ったよ」

「まさか、パソコンも電話も止まると思ってなかったもの」

かあさんは最近、俺からたばこ代を借りて返さないでいる。

記憶がなくなった2か月との後から、ずっとお金のやりくりに困っている。

そして、ついに今日、母さんの家の電話とパソコンが止まった。

だから、この小説も今、俺のマンションに来て書いている。

お金を預けている人に慌てて連絡を取ったけど、

研修旅行中で、11日にならないとお金は渡せないと言われたらしい。

訪問看護の人のスマホを借りて電話をしたんだけど、

憤懣やるかたないという顔をしていた。

昨日、1万円、預けてあるお金を取りに行ったのに、

帰りにスイカがどうしても食べたくなって

食費に使ってしまったらしい。

このままいくと、電気もガスも水道も止められてしまうのかな。

お金の管理大丈夫かな。


「オイッス!」

俺の名前は、沼田 和俊(ぬまた かずとし)43歳。

無職である。

重度の統合失調症で、毎週、病院に通っている。

母、小宮 富子(こみや とみこ)66歳。

母は、父と離婚した後、別な戸籍になり、

旧姓に戻った。

母もまた重度の精神障害者である。

二人は、子供の頃から幻覚、幻聴に悩まされていた。

( ´•̥ו̥` )


家賃は、今月から管理してもらっている人に頼んで自動支払いにしてもらった。

去年だけで、更新料も含め何度も使い込んでいるからだ。

それは、かあさんが自分で自覚してお願いした。

あとは、公共料金だよね。

アルツハイマーだか、注意欠陥障害だか、記憶障害だか、

解離性健忘だか理由はわからないけど

とにかく、おひとり様の生活ができなくなっている。

そこらへんの自覚はあるみたいなんだけど、

危機感が見ている限りでは全く感じられない。

昔から、

「宵越しの金は持たない」

みたいな使い方をして、お金の管理は子供の時から

小遣い長を付けてもできなかったみたいだ。

かあさんのおとうさん、俺にとってはおじいちゃんから

随分しつけられたみたいだけど、

その頃は、叱られてばかりいると、

家出ばかりしていたみたいだから親も途方に暮れたことだろう。

本当にはたから見てて、

「このひと、よく今まで生きてこれたな。

よく子供を育てたな。」

と、感心する。

周りがきっと、かあさんのできない部分をフォローしてきたのだろう。


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