エデンの園を作ろう

春秋花壇

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記憶の迷宮

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記憶の迷宮

薄暗い一室で、男はカレンダーを見つめていた。日付は、今日の日付ではない。数週間前のものだ。男は、何度も同じ日付を指差しては、眉をひそめる。

男の名前は、山田一郎。85歳。独り暮らし。かつては会社員として働き、妻と娘にも恵まれた。しかし、妻は数年前に他界し、娘は結婚して遠くへ嫁いでしまった。

一郎は、最近物忘れがひどい。昨日食べた晩ご飯の内容も思い出せない。昨日誰と話したのかも思い出せない。不安が、一郎の心を締め付ける。

ある日、一郎はいつものように散歩に出かけた。しかし、帰り道が分からなくなってしまった。途方に暮れていた一郎を、見知らぬ老人が助けてくれた。

老人は、一郎を自宅まで送ってくれた。そして、一郎にこう言った。「君、認知症かもしれないね。早めに病院に行った方がいいよ。」

一郎は、老人の言葉を聞き、愕然とした。認知症?まさか自分が?しかし、最近の様子を考えると、否定できない。

一郎は、病院に行った。医師の診断は、認知症だった。

一郎は、絶望した。これからどうなっていくのか?記憶がどんどん失われていく。自分らしさが失われていく。

一郎は、家に帰ると、アルバムを手に取った。そこには、妻や娘との思い出の写真が収められていた。一郎は、一枚一枚の写真を手に取り、ゆっくりと眺めた。

写真の中の妻は、いつも笑顔だった。娘は、幼い頃から活発だった。一郎は、写真の中の家族と、幸せな時間を過ごした。

一郎は、アルバムを閉じると、決心した。

「俺は、まだ諦めない。できることを、できる限りやる。」

一郎は、認知症と闘うことを決意した。

一郎は、毎日、日記をつけるようにした。今日の出来事を、少しでも記憶に残そうと努力した。また、地域のボランティア活動にも参加した。人と交流することで、脳を活性化させようと考えた。

一郎の努力は、少しずつ実を結び始めた。日記の内容は、日を追うごとに詳細になっていった。ボランティア活動も、一郎に生きがいを与えてくれた。

一郎は、認知症と闘いながら、今日も一日を生きていく。

一郎の記憶は、少しずつ失われていくかもしれない。しかし、一郎の心は、決して消えない。

一郎は、今日も家族の写真を手に取り、微笑む。

「忘れない。絶対に忘れない。」

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