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第3章 学園編
15 学園
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ジキスと少しタイミングをずらして席に戻ると、ジキスの姿はなかった。
隣のブロックのミレーユもまだ来ていない。
代わりに空席のはずの俺の席の向かいに、昨日昼間に厩舎で会ったルドルスが座っていた。
「バージニスタス様、おはようございます。」
「ん。」
机に目を落としたまま、ルドルスから気の無い返事が返って来る。
視線を追うように机を見ると、メサイアが木の棒をコリコリ齧っていた。
机には色々な小枝や摘み取った植物が散乱していて、メサイアがそれらを齧る様子をルドルスが観察して記録している。
「面白いものを与えていらっしゃいますね。新たな飼料探し、には見えませんが……」
なんだか他のことを考えたくて話しかけた。
「身近なものから病気の元を取り出せるか調べている。今はメサイアに新しい病気を扱わせようと思ったらその患者を用意しないといけないからな。」
メサイアが齧った木の実をぽいっと放る。
「樫の実もダメ、と。」
ルドルスが手元の表に結果を書き込んだ。
この人、早い所取り締まった方が良いんじゃないだろうか。
じゃないと卵とかダニとか、やばい細菌が取れる素材にそのうち行き着くと思う。
ゲームだと、「なぜこんな力を持つ人物を社会が野放しにしてるんだ?」と思うような場合でも割と平和な世界だったりするから、ここもそうである事を願おう。
でも、目的はどうあれ真剣に試行錯誤している様子を見ていると昨日から沈みっぱなしな気持ちが少し安らぐ気がした。
ぼんやりルドルスとメサイアの様子を見ていたら始業時間になり、1限目からアシスタント担当のコマだったので教授と教室に向かう。
それから4限まで立て続けにアシスタントとして育成科の授業を教室の隅で聞いた。
それで、この世界の守護獣について知れたことがある。
まず、改めてノスニキやアッシュタールは一般的な守護獣のレベルと比べても桁違いだってこと。
そもそも守護獣を持てるのはほぼ貴族の血筋を引く人間に限られてるけど、貴族の中でも契約ができるのは5人に1人と言われている。
国の戦力となるような大型の獣や高度な能力を持った獣と契約できるのは更に3割くらいで、幻獣や神獣まで進化するのは本当に一握りだ。
ゲームではライバルのユーリスを倒した後に挑戦できる10人抜きってクライマックスイベントがあって、訓練試合で王立軍に所属する守護獣10体に勝ち抜いていくと主人公の守護獣ミケが最終進化して大ボスのアルネスター殿下が従えるグリフォンとの対決になる。
その対戦相手がだいたい幻獣や神獣だから、それを見慣れた俺にしてみれば公爵やユーリスの守護獣がそこまで特別だとはあまり感じてなかったけど、この数日学園で他の守護獣を見てきてやっと実感が湧いた。
実際はユーリスに散々雑魚と馬鹿にされた初期のミケくらいの守護獣しか持たない生徒が大半。入学時からフェンリルを守護獣にするユーリスは学園ではアルネスター殿下と肩を並べる化け物級の人材とみなされてるようだ。
という事実を、休み時間の生徒のお喋りでどうやらユーリスの親衛隊が出来るらしいという話を漏れ聞いて知った。
親衛隊といっても戦闘部隊とかじゃなく、聞いてる限りファンクラブのようなものみたいだ。
ファンクラブ……?あの我儘ドラ息子に?
冗談は止めてくれと言いたい。
他には、今日見ただけでも授業では画一的な育成手法しか教えていないんじゃないかと感じた。
学園の講義は対象がどんな守護獣かや主がどう育てたいかなんてお構い無しに無難な育成手法を詰め込むだけみたいだ。
育てたい姿を思い描いて育成方法を考えていくのがゲームの醍醐味だったのに。
だから、経験の浅い研究科の生徒に育成プランの添削をさせても成り立つんだろう。
けど、それって個別指導の意味ある?
そんなんで育成の面白さが伝わるか?
前世の学校も結果を出す奴は努力出来たり才能のある奴で、落ちぶれる奴に対して救済がない面はあったけど、教育機関って世界が変わってもそんな感じなのかな。
俺は、週末までに出来るだけ支援対象者のいるクラスの授業を回って各生徒の守護獣育成方針を考えることにした。
何かあった時にトラブルになるからという理由で自分が担当だとは支援対象には伝えられないことになってる。
けど、側から生徒の様子や連れている守護獣を見るだけでも参考にはなる。
自分は少なくとも知ってる知識で出来るだけ生徒を手助けしてやりたい。
中には、昔のユーリスみたいに独りで悩んでる奴もいるかもしれないから。
授業の後は書庫に行って棚の配置や本の状況を確認し、今日はと早めに寮の部屋に戻った。
隣のブロックのミレーユもまだ来ていない。
代わりに空席のはずの俺の席の向かいに、昨日昼間に厩舎で会ったルドルスが座っていた。
「バージニスタス様、おはようございます。」
「ん。」
机に目を落としたまま、ルドルスから気の無い返事が返って来る。
視線を追うように机を見ると、メサイアが木の棒をコリコリ齧っていた。
机には色々な小枝や摘み取った植物が散乱していて、メサイアがそれらを齧る様子をルドルスが観察して記録している。
「面白いものを与えていらっしゃいますね。新たな飼料探し、には見えませんが……」
なんだか他のことを考えたくて話しかけた。
「身近なものから病気の元を取り出せるか調べている。今はメサイアに新しい病気を扱わせようと思ったらその患者を用意しないといけないからな。」
メサイアが齧った木の実をぽいっと放る。
「樫の実もダメ、と。」
ルドルスが手元の表に結果を書き込んだ。
この人、早い所取り締まった方が良いんじゃないだろうか。
じゃないと卵とかダニとか、やばい細菌が取れる素材にそのうち行き着くと思う。
ゲームだと、「なぜこんな力を持つ人物を社会が野放しにしてるんだ?」と思うような場合でも割と平和な世界だったりするから、ここもそうである事を願おう。
でも、目的はどうあれ真剣に試行錯誤している様子を見ていると昨日から沈みっぱなしな気持ちが少し安らぐ気がした。
ぼんやりルドルスとメサイアの様子を見ていたら始業時間になり、1限目からアシスタント担当のコマだったので教授と教室に向かう。
それから4限まで立て続けにアシスタントとして育成科の授業を教室の隅で聞いた。
それで、この世界の守護獣について知れたことがある。
まず、改めてノスニキやアッシュタールは一般的な守護獣のレベルと比べても桁違いだってこと。
そもそも守護獣を持てるのはほぼ貴族の血筋を引く人間に限られてるけど、貴族の中でも契約ができるのは5人に1人と言われている。
国の戦力となるような大型の獣や高度な能力を持った獣と契約できるのは更に3割くらいで、幻獣や神獣まで進化するのは本当に一握りだ。
ゲームではライバルのユーリスを倒した後に挑戦できる10人抜きってクライマックスイベントがあって、訓練試合で王立軍に所属する守護獣10体に勝ち抜いていくと主人公の守護獣ミケが最終進化して大ボスのアルネスター殿下が従えるグリフォンとの対決になる。
その対戦相手がだいたい幻獣や神獣だから、それを見慣れた俺にしてみれば公爵やユーリスの守護獣がそこまで特別だとはあまり感じてなかったけど、この数日学園で他の守護獣を見てきてやっと実感が湧いた。
実際はユーリスに散々雑魚と馬鹿にされた初期のミケくらいの守護獣しか持たない生徒が大半。入学時からフェンリルを守護獣にするユーリスは学園ではアルネスター殿下と肩を並べる化け物級の人材とみなされてるようだ。
という事実を、休み時間の生徒のお喋りでどうやらユーリスの親衛隊が出来るらしいという話を漏れ聞いて知った。
親衛隊といっても戦闘部隊とかじゃなく、聞いてる限りファンクラブのようなものみたいだ。
ファンクラブ……?あの我儘ドラ息子に?
冗談は止めてくれと言いたい。
他には、今日見ただけでも授業では画一的な育成手法しか教えていないんじゃないかと感じた。
学園の講義は対象がどんな守護獣かや主がどう育てたいかなんてお構い無しに無難な育成手法を詰め込むだけみたいだ。
育てたい姿を思い描いて育成方法を考えていくのがゲームの醍醐味だったのに。
だから、経験の浅い研究科の生徒に育成プランの添削をさせても成り立つんだろう。
けど、それって個別指導の意味ある?
そんなんで育成の面白さが伝わるか?
前世の学校も結果を出す奴は努力出来たり才能のある奴で、落ちぶれる奴に対して救済がない面はあったけど、教育機関って世界が変わってもそんな感じなのかな。
俺は、週末までに出来るだけ支援対象者のいるクラスの授業を回って各生徒の守護獣育成方針を考えることにした。
何かあった時にトラブルになるからという理由で自分が担当だとは支援対象には伝えられないことになってる。
けど、側から生徒の様子や連れている守護獣を見るだけでも参考にはなる。
自分は少なくとも知ってる知識で出来るだけ生徒を手助けしてやりたい。
中には、昔のユーリスみたいに独りで悩んでる奴もいるかもしれないから。
授業の後は書庫に行って棚の配置や本の状況を確認し、今日はと早めに寮の部屋に戻った。
14
↓めちゃくちゃ世話になっている
B L ♂ U N I O N
B L ♂ U N I O N
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