【R18/完結】転生したらモブ執事だったので、悪役令息を立派なライバルに育成します!

ナイトウ

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第3章 学園編

14 翌日

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次の朝、ユーリスの部屋の扉の前で1回深呼吸する。
そろそろ彼を起こす時間だからだ。

昨日は感情に任せて逃げてしまったけど、いつまでもそうしてはいられない。
とりあえず、ユーリスと会わないと。

それで、昨日のことを言われるようなら謝って、何も言われなかったらサボったことだけ謝って告白はなかった事にする。
そして元通り、ユーリスは俺の主人で俺はユーリスの執事でいられるはずだ。

うん。大丈夫。行くぞ。

深呼吸して扉を4回ノックする。
いつもなら起きてるはずないのでそのまま入ってユーリスを叩き起こすところからだ。

しばらく待っても返事は無くてドアノブに手をかける。
その直後、予期せず扉が開いたのでビックリして少し体が跳ねた。
開いた隙間からきちんと制服を着たユーリスが現れる。
その顔には昨日と同じように表情がない。
それを少し不安に思って初めて、いつもユーリスのいろいろな表情を見ていた事に今更気付いた。

「おはようございます、ユーリス様。ご支度はお済みのようですね。」

俺はちゃんと笑えてるだろうか。

「ああ。」

「では、朝食の準備をいたします。」

「ルコは給仕しなくていい。学園の人にやってもらって。」

「……承知いたしました。」

「ん……。」

「あ、あの……、よろしければ今日は私もお食事ご一緒しても?前から何度かお誘い頂き、断っておりましたが今日は……」

「いいわけないだろ。僕は許さないから。昨日ルコが言ったこと。」

無表情だった顔が一気に険しくなった。
その表情と言葉に、また胸が抉られるように痛くなる。

そこまで嫌だったか?俺が従者としての分を超えたのが?

「お怒りはごもっともです。ですが、私にも心があります。今までどおりお仕えいたしますので、どうか想うだけは許していただけないでしょうか。」

「じゃあ、服脱いで足開いてみせてよ。」

言われた言葉に目を見開いて見つめれば、冷たい石のような瞳がこちらを見ている。
けどそんな様子もやっぱり好きで、ちょっと末期かもしれない。
挑発だと分かっても言われたとおり脱ぐため、ネクタイの結び目に指を掛けて引っ張る。

コンコンコン

少し緩めた所でドアノックが鳴った。

「ご朝食をお持ちしました。」

フットマンの声が外から聞こえて来る。
続けるべきか迷ってユーリスに視線を移した所で、体が暖かいものに包まれた。ユーリスが俺を優しく抱き寄せている。

「ごめん、もういいから。先行って。」

声が少し震えていて、それにハッとした。
俺、ユーリスを困らせてるんだ。

体はすぐ離れていき、直後に給仕係かワゴンを押して部屋に入って来た。
俺はひったくるように自室の荷物を掴むと研究棟に向かった。

重い足取りで教室に入ると、時間が早いせいで生徒はまばらだったけど自分の席があるブロックには既にジキスが座っている。

「ガーデンシア様、おはようございます。」

案の定反応は無い。

「少しよろしいでしょうか。昨日のことで。」

声を掛けると、ジキスはこちらをチラッと見て立ち上がった。
それを承諾の合図と理解して2人で教室を出る。

人の出入りがない所と考えて不要物を保管している倉庫部屋に来てもらった。
扉を閉めた後、すぐにジキスに向かって深く頭を下げる。

「昨日は身を弁えず無礼な態度を取ってしまい大変申し訳ございませんでした。」

返事は特に無い。

「それで、私がお願いできる立場でない事は十分承知なのですが、昨日ご覧になった事はどうか黙っていて頂けませんでしょうか。」

「……言えるわけないだろ。クリスタス家の醜聞を広めるようなことはしない。」

やっと吐き捨てるような返事が返ってきた。

「ありがとうございます。」

面白半分に触れ回るタイプではないと思ってはいたけど少し安心する。

「けど、貴様が2年生の要求を安請け合いできる理由は分かった。どうせ主人に告げ口して何とかしてもらうつもりだったんだろ。」

目を細めて、蔑むようにこちらを見てくるジキス。

「そんな事はございません。」

「信じると思うか?昨日私にしたように利益のためなら誰でも誘惑するんだろ。ユーリスフレッド様がそんなものに引っかかったとは嘆かわしいが、貴様が今ここにいる十分な理由にはなる。」

言われた言葉に少し目を見張ると、ジキスは拒絶するように視線を逸らした。
そう思われても仕方がない言動をした自覚はある。

「……私はガーデンシア様と友人になりたかったのです。しかし、私のやり方は間違っていました。申し訳ありません。」

もう一度頭を下げて謝罪する。

「間に合ってる。」

ジキスはそう言って倉庫を去っていった。
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↓めちゃくちゃ世話になっている
B L ♂ U N I O N
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