闇夜の星 暗闇の燈火(やみよの ほし くらやみの ともしび)

アッシュレアの敵討ち

◆◆◆◆１７

「二年だぞ、あの三人がミレニアに嫌がらせをするようになって二年だ。ミレニアはな、市場でも評判の良いドラゴンの世話係で有名だったんだ。三人がミレニアにちょっかいを掛け始めた事は直ぐにどの親にも伝わったよ。
　竜騎士相手じゃ一般人は怖くて直接は言えねぇしな。どの親も自分の子供を正そうとしなかった。それどころかオルクの母親はな、面白がってけしかけていたんだよ。あの日の夜もミレニアの死について全く悔いる事も無くただ自分の息子が危険な任務に着かされた事を憤っていたんだ！殺さないでどうする？許されるわけ無いだろうが！少なくとも俺は絶対に許せなかった。畜生！ゴブリンだぞ！たった一人であのこがどれだけ、どんなにか・・・」
タヨタは真っ直ぐルメラの目を見てそう言いきった。
その、迷いの無い憤怒に染まった光を宿す目を見て、ルメラ知らずに生唾を飲み込んだ。
今までこんな真っすぐな怒りの籠もった視線を、ルメラは受け止めた事が無かった。
人とは、ここまで怒る事が出来るものなのかと、圧倒された。
しかし、ルメラもこの町で一番と言われる医師だ。命を助けるのが仕事の自分が、殺人を、こんな酷い人殺しを絶対に認める事は出来ない。
「正義の鉄槌でも下したつもりなの？タヨタ。こんなの、正しい事じゃないわ。全然正義じゃない」
ルメラはどうしようもない気持ちに駈られていた。
殺人とは、絶対に許してはならないものだとルメラは思っている。今度のミレニアの一件は本当に酷かった。
ルメラだって三人は許せない、だから旨い反論が浮かばない、浮かばないけれどもやはり殺人はしてはいけない事なのだ。