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vanilla essence 1―4

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結局、コバはブーブー言いながらも出したカレーも平らげ、忙しく夜の営業の下拵えをする俺を眺めながら店の中でウダウダして、暫く過ごした後フラリと出て行った。
帰り際、何のつもりなのか、ためらいがちに琢美の事を聞いて来た。
「先輩の所ってさ、今でも琢美さんがどうしているのかとか情報入って来るの?」
何で今更そんな事聞いて来るのかとは思ったケド、別に隠す事でも無いので答えるだけ答える。
「いいや、何も?」
「俺さ、二人が離れて保たないのって琢美姫の方だと思ってた・・・だってあの人息をするのと同じ位先輩を必要としてる様に俺には見えたから、今でもその内ヒョッコリ帰って来る様な気がすんすよね~」
そんな事をボソボソと言って誰かさんに良く似た後頭部を掻く癖を見せながら出て行った。
「・・・何だよラブラブじゃねぇか」
今日あった事を高岡刑事に教えたらさぞや喜ぶに違いねえ。
その日は夕方気温がかなり高くなり、アイスクリームとビールがが飛ぶ様に捌けた。

事が起こったのはそれから半月後の事だった。
8月の二週目の事だった。
その日の営業も終わりに差し掛かった頃、珍しく女が一人でフラリと入って来た。
うちの店は場所柄と店構えのおかげで、お一人様で来る女のお客は珍しくねぇケド、この時間帯に来るのはスゲェ珍しい。しかも、かなりの美女だ。
細い腰、小さな肩、線の細さに対して少し大きすぎる柔らかそうなバスト。
大きな鳶色の瞳に扇げそうな位の長い睫が印象的だった。
・・・何処か見覚えの有る顔な気がした。
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