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vanilla essence 1-5
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思わずじっと顔を見ていた所に、他の客が漏らす溜め息混じりの
「すご・・・」
という小さな歓声で我に返らされた。
珍しく、営業時間内に来てマトンカリーに食いついていたコバだけが、入り口に背中を向けていた為に店内の変化に乗り遅れた。
店内の空気の変化に気が付いてやっとキョロキョロし始めた。
「な、何すか?」
「後ろ」
とだけ教えてやると、振り返ったコバが
「う・・・ぉぉ・・・・・・あ?」
溜め息の後に奇妙な声をあげた。
何かと思ったら。
「琢美ちゃん?・・・あれ、琢美姫じゃ無いですか?!」
ガタン、と、カウンターのスツールから零れる様に降り、その美女に駆け寄って
「琢美ちゃんだ、そうだよね?俺、覚えてる?コバ!」
そうまくしたてた。
『違う』と、俺は心の中で即座に否定していた。
確かに言われて見れば、この人は琢美によく似ていた。
でも違う、本当に琢美であったなら、俺がこの距離で見て判らない訳が無い。
第一何て云うか、何かが決定的に違う気がした。
だから俺はせっかく来た一見さんに、いきなり息巻いて失礼を働いてくれている、コバの首根っこを掴んで席に戻すつもりでカウンターから飛び出したハズだった。
ケド、俺の確信を覆して、その美女はゆっくりとまばたきをしてから
「コバ君?・・・え?・・・え?なんでここに?」
と返事をした。
美女は、琢美だった・・・らしい。
コバの首根っこを掴みかけたまま固まった俺を余所に、コバが弾んだ声で話を続ける。
「そう!ここ先輩が開いてる店なんだよ!」
「優ちゃんが?」
そう言って、琢美を名乗った女は、横で固まる俺を見るなり泣きそうな顔をして、席から立った。
「すご・・・」
という小さな歓声で我に返らされた。
珍しく、営業時間内に来てマトンカリーに食いついていたコバだけが、入り口に背中を向けていた為に店内の変化に乗り遅れた。
店内の空気の変化に気が付いてやっとキョロキョロし始めた。
「な、何すか?」
「後ろ」
とだけ教えてやると、振り返ったコバが
「う・・・ぉぉ・・・・・・あ?」
溜め息の後に奇妙な声をあげた。
何かと思ったら。
「琢美ちゃん?・・・あれ、琢美姫じゃ無いですか?!」
ガタン、と、カウンターのスツールから零れる様に降り、その美女に駆け寄って
「琢美ちゃんだ、そうだよね?俺、覚えてる?コバ!」
そうまくしたてた。
『違う』と、俺は心の中で即座に否定していた。
確かに言われて見れば、この人は琢美によく似ていた。
でも違う、本当に琢美であったなら、俺がこの距離で見て判らない訳が無い。
第一何て云うか、何かが決定的に違う気がした。
だから俺はせっかく来た一見さんに、いきなり息巻いて失礼を働いてくれている、コバの首根っこを掴んで席に戻すつもりでカウンターから飛び出したハズだった。
ケド、俺の確信を覆して、その美女はゆっくりとまばたきをしてから
「コバ君?・・・え?・・・え?なんでここに?」
と返事をした。
美女は、琢美だった・・・らしい。
コバの首根っこを掴みかけたまま固まった俺を余所に、コバが弾んだ声で話を続ける。
「そう!ここ先輩が開いてる店なんだよ!」
「優ちゃんが?」
そう言って、琢美を名乗った女は、横で固まる俺を見るなり泣きそうな顔をして、席から立った。
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