スイート・スパイシースイート

鈴紐屋 小説:恋川春撒 絵・漫画:せつ

文字の大きさ
上 下
138 / 410

vanilla essence 1-5

しおりを挟む
思わずじっと顔を見ていた所に、他の客が漏らす溜め息混じりの
「すご・・・」
という小さな歓声で我に返らされた。
珍しく、営業時間内に来てマトンカリーに食いついていたコバだけが、入り口に背中を向けていた為に店内の変化に乗り遅れた。
店内の空気の変化に気が付いてやっとキョロキョロし始めた。
「な、何すか?」
「後ろ」
とだけ教えてやると、振り返ったコバが
「う・・・ぉぉ・・・・・・あ?」
溜め息の後に奇妙な声をあげた。
何かと思ったら。
「琢美ちゃん?・・・あれ、琢美姫じゃ無いですか?!」
ガタン、と、カウンターのスツールから零れる様に降り、その美女に駆け寄って
「琢美ちゃんだ、そうだよね?俺、覚えてる?コバ!」
そうまくしたてた。
『違う』と、俺は心の中で即座に否定していた。
確かに言われて見れば、この人は琢美によく似ていた。
でも違う、本当に琢美であったなら、俺がこの距離で見て判らない訳が無い。
第一何て云うか、何かが決定的に違う気がした。
だから俺はせっかく来た一見さんに、いきなり息巻いて失礼を働いてくれている、コバの首根っこを掴んで席に戻すつもりでカウンターから飛び出したハズだった。
ケド、俺の確信を覆して、その美女はゆっくりとまばたきをしてから
「コバ君?・・・え?・・・え?なんでここに?」
と返事をした。
美女は、琢美だった・・・らしい。
コバの首根っこを掴みかけたまま固まった俺を余所に、コバが弾んだ声で話を続ける。
「そう!ここ先輩が開いてる店なんだよ!」
「優ちゃんが?」
そう言って、琢美を名乗った女は、横で固まる俺を見るなり泣きそうな顔をして、席から立った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...