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二章 領地の特産品開発と拡張
1.ギルドとの調整
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あのセリオと結ばれた以降俺は……はあ。
「エリオス様?」
「ふえ?ああ、なんだ?」
ぼんやりしていた俺はフィトを見ると、彼はやれやれと両手を広げ呆れた様子。
「あのですね。セリオ様が愛しくて堪らないのは分かります。で、す、が!仕事して下さい!」
「うっすまん」
そう、あれから俺たちは何度も愛を確かめ、俺はセリオのうなじを噛んで正式に番になった。そしたらさ、病的に愛しくて堪らん。つい仕事中でさえ愛しさのあまり目で追っててさ。目に余る!!とディエゴにこの間叱られた。そして今フィトにも。
だ~ってかわいくてさ。セリオもそんなやり取りに頬を染めて嬉しそうで……ふふっ。そうそう、父上にも報告してな。
「そうか。いつセリオの気持ちに気がつくかと思っていたが遅かったな」
は?気がつくとは?
「あの?」
嫌な顔してによによ。
「お前があれに興味を示さないから、お見合いするかとクレメンテと相談してセッティングしたんだ」
嘘だろ?
「え~っと、城の者は気がついていたの?」
「ああ、知らぬ者はいないのではないかな」
ええ?マジで?
「はは、お前だけが気が付かなかったんだ」
セリオそんな感じは……
「そんな素振りはなかったと思いますが?」
あ~あ、セリオ可哀想にと皆は見ていたよ。無理やりお前の側仕えになってさ。私もあんなにアピールしてるのに気が付かないとは気の毒にと思ってたよと笑った。
ううっごめんセリオ。俺恋愛ごとに疎かったのかも。どうにも子供の頃の両親の秘め事を見たショックでな、どこか恋愛事を見ないようにしていたのかもな。
「まあ、番になったのはいい事だが、いつ結婚式するんだ?」
「うっ……お金もですが時間が取れません。未だに忙しく、何とか回っているって状況でして」
ふ~ん。忙しい事は悪い事ではないが、彼は上級貴族フラナガンの息子だ。三男だが国土省の大臣の息子。適当には出来ないぞ?と苦い表情で言われた。
「分かっています。あちらのご両親には、先日あいさつに伺い、二人は大喜びでした。やっと気持ちが届いたんだなと泣いていましたね」
ふふんと鼻を鳴らし、
「そうだろうとも。フラナガンはずっと息子を不憫に思ってたからな。セリオが家に帰れば幸せそうに、お前が何したあれしたと楽しそうに話してたそうだ」
「そうですか……」
ごめん……セリオ。そんなにも俺の事を好きでいてくれたのに俺は……
「落ち込むな、今更仕方あるまい。私はお前が羨ましいんだよ。好きな相手と番になれたんだからな。私は……」
うっ愚痴モードになったか?
「すみません……」
そうだった。父上は好きでもない母上と番になり、俺たちを作った。まあ、全く好きではないのだろうが、下の二人サントスとイスマエルはどちらも母が違う。父なりに好きな相手とこさえたんだろう。王族あるあるだ。
サントスの母は優しい雰囲気の社交的な方だったが、イスマエルの母は……その野心家でな。ちょっと怖い。俺はあれが若くても好みではないかな。父上の趣味は分からん。
「まあ、遅くならないうちに式はしろよ。それも観光になるだろ?」
「嫌ですよ。結婚式まで金儲けとか」
そんな事言ってたら金は増えないぞ?新規の公爵領なんだからな。初めが肝心だろ?と、父親らしいアドバイス。
「はい……資産が乏しいので頑張ります」
「そうしてくれ。そのうちそっちに別荘を構えるからよろしくな」
「ええ、お待ちしております」
そんな愚痴のない父上との面会だった。ある意味不気味でもあったな。うん。なんて思い出に浸りながらセリオを目で追っていた。
「エリオス様!し、ご、と!!手が止まってる!」
「グッ、フィト、分かってるよ!やるよ!」
「そんなだと結婚式なんて夢になりますよ!」
「うるせぇ!頑張るよ!」
頬を染めて嬉しそうに照れているセリオが目に入る……かわいくて堪んない。えへへ。
そんな日常を過ごし、なんとか半年過ぎて人の制限の効果が出て来た。その間に人員確保、街の拡張をすることにした。もう収容人数超えてて無理だと、商業ギルドからの要請があったからだ。日帰りも含めると、以前とあんまり変わらんそうだ。
「すでに街の宿屋は予約で当分先まで暇なしに稼働予定です。それにこの好景気で街の宿屋の宿泊費が高騰してます。あちらこちらで安宿はないのかと行商人たちから苦情が来ており、彼らは観光ではないですから困ると」
「そうか。城下町の門の外に宿屋とか作った方がいいか?」
商業ギルドの支部長ダリオはそうしてくれと言う。商売と観光は別にするべきだと。ここは他国からの中継地でもある領地だから、人がいなかった頃からの馴染みの者たちは、費用がかさんで売上が減ると申しておりますと渋い顔。
「ええ、今なら勧誘すればやりたい者もおるでしょうからな」
「分かった。草原の方に作るがいいか?」
「はい。最初は数軒でいいのでお願いいたします」
次は冒険者ギルドから。ガスパルが肉についての相談。
「山は禁猟になっていますので、麓の獣を狩っているのですが、獣が足りていません。他の領地からも持ち込みを可能にしていただきたい」
ほほう、国内なら関係ないかな。
「それは好きにしていいぞ?地産地消を売りにしているわけではないからな」
ガスパルは驚いた顔をした。
「え?よいので?」
「うん。肉に関してはまあいいだろう。我が国の農作物であればな。それにフェンリルの不興は買いたくない」
「そうですね。死活問題になりますから……」
彼はよかったと安堵の息を吐いて、
「かしこまりました。他領からの獣も取り扱います。もう家畜の肉だけにしなくてはならないかと、宿屋もレストランも不安がっていましたから。ジビエ料理は喜ばれますからね」
「うん、よろしく頼むな」
次は物販関係。工房ギルドのイラリオから。
「現在お土産などの製品は、この国の特産物を販売しております。ですが、せっかく新しい領地ですから、この領地特有の物を開発しとうございます。そしてこの程、農地の外れの湖とはいえぬ、沼から染料になる水草を発見いたしました。試行錯誤の結果、その染料で染めた布地がこれでございます」
イラリオは美しい深い紅の玉虫色に光る反物を見せてきた。
「ぜひお手に取って確認を」
「おう」
俺は布地を手にした。
「これは絹か」
「ええ、他に、リネン、綿なども染めてみましたが、この様に虹色に光るよう染められたのは絹のみです。他も悪くはないのですが、今までの紅色とあまり変わらぬ仕上がり。ですが、絹だけはとても美しく仕上がりました」
「ふ~ん」
自信満々の笑顔で手を揉んでいる。確かに角度により美しく輝き、見たことのない色の生地に仕上がっている。
「量産出来るのか?」
「ええ、こちらは薄く織った絹地を染めていますが、腰に結ぶ装飾の組紐など、他も応用は効くかと存じます」
まだ絹以外は研究途中ですので、良いものが出来次第確認していただきとうございますと。
「うん。この生地で上着とかシャツとか、目にも鮮やかな物が出来そうだな。よし、この紅の生地は我が領地の特産として売り出そう」
「はい、エリオス領の物として許可はよろしいという事で?」
セリオも手に取り、美しいですねと反物を眺めている。
「ああ、構わん」
そこであの~って。
「なんだ?」
「販売に関してエリオス様の家紋を使わせていただけないかと」
ん?……そうか。王国の特産物は王国の紋が焼印されてたりするな。
「おう、使うがいい。セリオ。家紋の意匠をイラリオに渡してやれ」
「はい、かしこまりました」
セリオは執務室に取りに出て行った。
「焼印とか作るんだろ?偽物防止に魔力契約の術はかけろよ」
「はい。それなんですが、工房の職人は純血種が多く、魔力持ちは少ない。あってもそのような術は使えません。申し訳ございませんが、こちらでお願い出来ないでしょうか」
ああ、なら俺が視察で行ってやるよ。鍛冶屋の場所を教えてくれと話していると、セリオが戻り意匠を彼らに渡した。
「はい、確かに。では焼印が出来次第ご連絡し、こちらからお迎えに上がります」
「ああ、そうしてくれ」
それからと各々箱を出した。
「何だこれは?まだなにか申請したい事があるのか?」
そう聞くとみんなニヤニヤ。デミオが代表して、
「違います。この品はエリオス様がご婚約されたとお聞きいたしましたので、お祝いの品でございます。まだまだ売上がある訳ではございませんので、些細な物ですがお納めを」
うっ……もう噂になっていたか!そっとセリオを振り返ると、真っ赤になって照れていた。あはは、かわいいな。俺セリオのこの顔好き。こいつは執務の時は気を張っているだけで、すっげえかわいいんだよ。二人の時の甘えた感じは堪らんのだ。
「ありがとう。気を使わせたな」
「とんでもございません。この新たな生地で結婚式の衣装をぜひ!」
イラリオは商魂たくましい。
「あ?ああ、いいな。いい宣伝にもなるし」
「ええ!国内からの見学者も多いはずですからね。エリオス様とセリオ様がお召になればこれ以上の宣伝はございません!」
だってとセリオを見ると幸せそうに、そうですねと微笑んだ。
「ならば我ら二人分の衣装を頼む。半年後を予定しているからな」
「かしこまりました。ではデザインなとの相談に後日伺わせていただきます」
「そうしてくれ」
新しい領主がご結婚とはなんとめでたいのやらと、三人は嬉しそうにしていたが、商売にどう結びつけるかと思案してるのが目の中に見えた気がした。まあ、協力はするさ、頑張れ。
会談はいい雰囲気で終わり、皆が出ていくとセリオを膝に座られてチュッ。
「きっと素敵な衣装が出来るぞ?」
「ええ……楽しみですね」
抱き合ってキスを楽しんでいると、ノックもなくドアがガチャリ。
「ったく!そういうのは仕事終わってからね!二人とも!」
迎えにきたフィトは客間にズカズカ入って離れろーって間に入って来る。
「いいだろ?ちょっとくらい」
「ちょっとならね!だけどいつもちょっとじゃないでしょ!あと少しで仕事は終りなんだから我慢して!僕も我慢してるんだから!」
「は~い」
プリプリとフィトは怒ってて、セリオと見合ってあははと笑った。そうなんだよ、フィトも屋敷に人が増えて行くうち、番を見つけたそうだ。
彼は魔力がなく、それなのに爵位があってそこらの人ではまずくなってしまった。フィトはそんなだから番が見つからんかもと不安がっていたんだ。
だが、世の中捨てたもんじゃない。後から補充した文官の中から見つけたんだ。うちのは下級、中級貴族の者ばかりで、多少の魔力持ち。フィトの番はかわいい茶トラと白のモイセスだ。オラジオ男爵の二男で、フィトに負けないかわいさがある。
「お前も人のことは言えんだろ!」
「僕は仕事中は我慢してますぅ!……ちょっと廊下でキスするくらいですもの!」
「同じだよ!」
「違うも~ん!こ~んなねっとりとしてないもん!」
その言葉にセリオは真っ赤に。わ、私仕事に戻ります!と膝から降りて逃げてしまった。
「もう!お前が余計な事言うから」
僕悪くないもん!と言うとふふっと微笑んだ。
「でもセリオ様は本来可愛らしい方だったんですね。あんなに照れ屋さんで」
「うん、それは思ったね。俺も仕事の顔しか知らなかったんだなってさ」
うんうんと頷き、
「あんなきれいな人が照れてるとこちらまで照れますよね」
「だろ?」
はっ!惚気はいらなかった!はよ働けと背中を押されて執務室に戻った。
「エリオス様?」
「ふえ?ああ、なんだ?」
ぼんやりしていた俺はフィトを見ると、彼はやれやれと両手を広げ呆れた様子。
「あのですね。セリオ様が愛しくて堪らないのは分かります。で、す、が!仕事して下さい!」
「うっすまん」
そう、あれから俺たちは何度も愛を確かめ、俺はセリオのうなじを噛んで正式に番になった。そしたらさ、病的に愛しくて堪らん。つい仕事中でさえ愛しさのあまり目で追っててさ。目に余る!!とディエゴにこの間叱られた。そして今フィトにも。
だ~ってかわいくてさ。セリオもそんなやり取りに頬を染めて嬉しそうで……ふふっ。そうそう、父上にも報告してな。
「そうか。いつセリオの気持ちに気がつくかと思っていたが遅かったな」
は?気がつくとは?
「あの?」
嫌な顔してによによ。
「お前があれに興味を示さないから、お見合いするかとクレメンテと相談してセッティングしたんだ」
嘘だろ?
「え~っと、城の者は気がついていたの?」
「ああ、知らぬ者はいないのではないかな」
ええ?マジで?
「はは、お前だけが気が付かなかったんだ」
セリオそんな感じは……
「そんな素振りはなかったと思いますが?」
あ~あ、セリオ可哀想にと皆は見ていたよ。無理やりお前の側仕えになってさ。私もあんなにアピールしてるのに気が付かないとは気の毒にと思ってたよと笑った。
ううっごめんセリオ。俺恋愛ごとに疎かったのかも。どうにも子供の頃の両親の秘め事を見たショックでな、どこか恋愛事を見ないようにしていたのかもな。
「まあ、番になったのはいい事だが、いつ結婚式するんだ?」
「うっ……お金もですが時間が取れません。未だに忙しく、何とか回っているって状況でして」
ふ~ん。忙しい事は悪い事ではないが、彼は上級貴族フラナガンの息子だ。三男だが国土省の大臣の息子。適当には出来ないぞ?と苦い表情で言われた。
「分かっています。あちらのご両親には、先日あいさつに伺い、二人は大喜びでした。やっと気持ちが届いたんだなと泣いていましたね」
ふふんと鼻を鳴らし、
「そうだろうとも。フラナガンはずっと息子を不憫に思ってたからな。セリオが家に帰れば幸せそうに、お前が何したあれしたと楽しそうに話してたそうだ」
「そうですか……」
ごめん……セリオ。そんなにも俺の事を好きでいてくれたのに俺は……
「落ち込むな、今更仕方あるまい。私はお前が羨ましいんだよ。好きな相手と番になれたんだからな。私は……」
うっ愚痴モードになったか?
「すみません……」
そうだった。父上は好きでもない母上と番になり、俺たちを作った。まあ、全く好きではないのだろうが、下の二人サントスとイスマエルはどちらも母が違う。父なりに好きな相手とこさえたんだろう。王族あるあるだ。
サントスの母は優しい雰囲気の社交的な方だったが、イスマエルの母は……その野心家でな。ちょっと怖い。俺はあれが若くても好みではないかな。父上の趣味は分からん。
「まあ、遅くならないうちに式はしろよ。それも観光になるだろ?」
「嫌ですよ。結婚式まで金儲けとか」
そんな事言ってたら金は増えないぞ?新規の公爵領なんだからな。初めが肝心だろ?と、父親らしいアドバイス。
「はい……資産が乏しいので頑張ります」
「そうしてくれ。そのうちそっちに別荘を構えるからよろしくな」
「ええ、お待ちしております」
そんな愚痴のない父上との面会だった。ある意味不気味でもあったな。うん。なんて思い出に浸りながらセリオを目で追っていた。
「エリオス様!し、ご、と!!手が止まってる!」
「グッ、フィト、分かってるよ!やるよ!」
「そんなだと結婚式なんて夢になりますよ!」
「うるせぇ!頑張るよ!」
頬を染めて嬉しそうに照れているセリオが目に入る……かわいくて堪んない。えへへ。
そんな日常を過ごし、なんとか半年過ぎて人の制限の効果が出て来た。その間に人員確保、街の拡張をすることにした。もう収容人数超えてて無理だと、商業ギルドからの要請があったからだ。日帰りも含めると、以前とあんまり変わらんそうだ。
「すでに街の宿屋は予約で当分先まで暇なしに稼働予定です。それにこの好景気で街の宿屋の宿泊費が高騰してます。あちらこちらで安宿はないのかと行商人たちから苦情が来ており、彼らは観光ではないですから困ると」
「そうか。城下町の門の外に宿屋とか作った方がいいか?」
商業ギルドの支部長ダリオはそうしてくれと言う。商売と観光は別にするべきだと。ここは他国からの中継地でもある領地だから、人がいなかった頃からの馴染みの者たちは、費用がかさんで売上が減ると申しておりますと渋い顔。
「ええ、今なら勧誘すればやりたい者もおるでしょうからな」
「分かった。草原の方に作るがいいか?」
「はい。最初は数軒でいいのでお願いいたします」
次は冒険者ギルドから。ガスパルが肉についての相談。
「山は禁猟になっていますので、麓の獣を狩っているのですが、獣が足りていません。他の領地からも持ち込みを可能にしていただきたい」
ほほう、国内なら関係ないかな。
「それは好きにしていいぞ?地産地消を売りにしているわけではないからな」
ガスパルは驚いた顔をした。
「え?よいので?」
「うん。肉に関してはまあいいだろう。我が国の農作物であればな。それにフェンリルの不興は買いたくない」
「そうですね。死活問題になりますから……」
彼はよかったと安堵の息を吐いて、
「かしこまりました。他領からの獣も取り扱います。もう家畜の肉だけにしなくてはならないかと、宿屋もレストランも不安がっていましたから。ジビエ料理は喜ばれますからね」
「うん、よろしく頼むな」
次は物販関係。工房ギルドのイラリオから。
「現在お土産などの製品は、この国の特産物を販売しております。ですが、せっかく新しい領地ですから、この領地特有の物を開発しとうございます。そしてこの程、農地の外れの湖とはいえぬ、沼から染料になる水草を発見いたしました。試行錯誤の結果、その染料で染めた布地がこれでございます」
イラリオは美しい深い紅の玉虫色に光る反物を見せてきた。
「ぜひお手に取って確認を」
「おう」
俺は布地を手にした。
「これは絹か」
「ええ、他に、リネン、綿なども染めてみましたが、この様に虹色に光るよう染められたのは絹のみです。他も悪くはないのですが、今までの紅色とあまり変わらぬ仕上がり。ですが、絹だけはとても美しく仕上がりました」
「ふ~ん」
自信満々の笑顔で手を揉んでいる。確かに角度により美しく輝き、見たことのない色の生地に仕上がっている。
「量産出来るのか?」
「ええ、こちらは薄く織った絹地を染めていますが、腰に結ぶ装飾の組紐など、他も応用は効くかと存じます」
まだ絹以外は研究途中ですので、良いものが出来次第確認していただきとうございますと。
「うん。この生地で上着とかシャツとか、目にも鮮やかな物が出来そうだな。よし、この紅の生地は我が領地の特産として売り出そう」
「はい、エリオス領の物として許可はよろしいという事で?」
セリオも手に取り、美しいですねと反物を眺めている。
「ああ、構わん」
そこであの~って。
「なんだ?」
「販売に関してエリオス様の家紋を使わせていただけないかと」
ん?……そうか。王国の特産物は王国の紋が焼印されてたりするな。
「おう、使うがいい。セリオ。家紋の意匠をイラリオに渡してやれ」
「はい、かしこまりました」
セリオは執務室に取りに出て行った。
「焼印とか作るんだろ?偽物防止に魔力契約の術はかけろよ」
「はい。それなんですが、工房の職人は純血種が多く、魔力持ちは少ない。あってもそのような術は使えません。申し訳ございませんが、こちらでお願い出来ないでしょうか」
ああ、なら俺が視察で行ってやるよ。鍛冶屋の場所を教えてくれと話していると、セリオが戻り意匠を彼らに渡した。
「はい、確かに。では焼印が出来次第ご連絡し、こちらからお迎えに上がります」
「ああ、そうしてくれ」
それからと各々箱を出した。
「何だこれは?まだなにか申請したい事があるのか?」
そう聞くとみんなニヤニヤ。デミオが代表して、
「違います。この品はエリオス様がご婚約されたとお聞きいたしましたので、お祝いの品でございます。まだまだ売上がある訳ではございませんので、些細な物ですがお納めを」
うっ……もう噂になっていたか!そっとセリオを振り返ると、真っ赤になって照れていた。あはは、かわいいな。俺セリオのこの顔好き。こいつは執務の時は気を張っているだけで、すっげえかわいいんだよ。二人の時の甘えた感じは堪らんのだ。
「ありがとう。気を使わせたな」
「とんでもございません。この新たな生地で結婚式の衣装をぜひ!」
イラリオは商魂たくましい。
「あ?ああ、いいな。いい宣伝にもなるし」
「ええ!国内からの見学者も多いはずですからね。エリオス様とセリオ様がお召になればこれ以上の宣伝はございません!」
だってとセリオを見ると幸せそうに、そうですねと微笑んだ。
「ならば我ら二人分の衣装を頼む。半年後を予定しているからな」
「かしこまりました。ではデザインなとの相談に後日伺わせていただきます」
「そうしてくれ」
新しい領主がご結婚とはなんとめでたいのやらと、三人は嬉しそうにしていたが、商売にどう結びつけるかと思案してるのが目の中に見えた気がした。まあ、協力はするさ、頑張れ。
会談はいい雰囲気で終わり、皆が出ていくとセリオを膝に座られてチュッ。
「きっと素敵な衣装が出来るぞ?」
「ええ……楽しみですね」
抱き合ってキスを楽しんでいると、ノックもなくドアがガチャリ。
「ったく!そういうのは仕事終わってからね!二人とも!」
迎えにきたフィトは客間にズカズカ入って離れろーって間に入って来る。
「いいだろ?ちょっとくらい」
「ちょっとならね!だけどいつもちょっとじゃないでしょ!あと少しで仕事は終りなんだから我慢して!僕も我慢してるんだから!」
「は~い」
プリプリとフィトは怒ってて、セリオと見合ってあははと笑った。そうなんだよ、フィトも屋敷に人が増えて行くうち、番を見つけたそうだ。
彼は魔力がなく、それなのに爵位があってそこらの人ではまずくなってしまった。フィトはそんなだから番が見つからんかもと不安がっていたんだ。
だが、世の中捨てたもんじゃない。後から補充した文官の中から見つけたんだ。うちのは下級、中級貴族の者ばかりで、多少の魔力持ち。フィトの番はかわいい茶トラと白のモイセスだ。オラジオ男爵の二男で、フィトに負けないかわいさがある。
「お前も人のことは言えんだろ!」
「僕は仕事中は我慢してますぅ!……ちょっと廊下でキスするくらいですもの!」
「同じだよ!」
「違うも~ん!こ~んなねっとりとしてないもん!」
その言葉にセリオは真っ赤に。わ、私仕事に戻ります!と膝から降りて逃げてしまった。
「もう!お前が余計な事言うから」
僕悪くないもん!と言うとふふっと微笑んだ。
「でもセリオ様は本来可愛らしい方だったんですね。あんなに照れ屋さんで」
「うん、それは思ったね。俺も仕事の顔しか知らなかったんだなってさ」
うんうんと頷き、
「あんなきれいな人が照れてるとこちらまで照れますよね」
「だろ?」
はっ!惚気はいらなかった!はよ働けと背中を押されて執務室に戻った。
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