転校から始まる支援強化魔術師の成り上がり

椿紅颯

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第二章

第12話『一樹と一華』

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「それでは皆さんお疲れさまでした」

 海原先生の号令を合図に授業は終了。

 結局、先生はあちら側の士道に時間をとられていたようで、こちら側には来なかった。
 パーティ組より、そうでない人たちがクラスの大半なのだから仕方ない。
 
 これから昼休みに入る。
 後で先程感じたことをすぐに書き出さなきゃ。
 
「なあ、ちょっといいか」
「……どうかしたの?」

 みんなが更衣室へ向かう中、一樹は一華を呼び止めた。

「少し、話したいことがあるんだが……時間、良いか?」
「うん、大丈夫だよ?」

 一華からの了承を得た一樹は拳を一度強く握り、深呼吸を一度終え手を解いた。

「唐突で悪いんだけど、一華には何か目標とか夢はあるか?」
「……あんまりない、かな」

 目線を下げ、ハッキリとしない口調で一華は答えた。
 それに対して一樹は真っ直ぐに視線を向ける。
 
「そうか。俺にはある」
「そ、そうなんだ……」

 再び一樹の拳に力が入る。
 
 目線がいつも低い一華は、もはや相手の仕草が自然と目に入ってしまう。
 人は表情を上手く偽れても、仕草に現れてしまうものだ。
 そして、そんなところから相手の感情がわかってしまう一華は、これから先の話を察してしまい全身にキュッと力が入り身構えてしまった。

「人に誇れるようなものでないのは自分でもわかってる。誰かの前で宣言したって、俺の夢なんて他の人からしたらちっぽけなものだ。だが……だからこそ、こんなところで立ち止まってはられない」
「……」

 ――苛立ち。焦り。

「今回、初めてパーティを組んでまだまだわからないことはある。だけど――」
「……」
「学事祭のパーティは既に変更が利かない。こんなことをわざわざ言う必要はないとはわかってはいるが……頼む。足だけは引っ張らないでくれ」
「……うん、気を付けるね」

 先ほどの授業で、一樹は一華に対して思うことがあったようだ。
 正面衝突を選んだのが気に入らなかったのか、最後の最後で耐えきれなかったのが原因なのか。
 それは一樹にしかわからない。

 一つだけ言えるとすれば、この話を持ち出した一樹の顔には笑みはなく、ただそこには真剣な表情だけがある。

 その圧に押されるように、元々視線の低い一華は体が縮こまってしまう。

「俺にはあんまり難しいことはわからない。だから、戦術とか陣形とかは志信の意見に従う。俺は俺の精一杯でパーティに貢献する。ただそれだけだ」
「……うん、私も……頑張る、ね」
「時間をとらせて悪いな。じゃあ」

 一樹は話を終えると、出口の方へ足を進める。

 その背中を見送る一華。
 未だに残る圧を感じ、胸の前でギュッと手を握る。
 喉が絞まるような感覚に呼吸は浅く細かくなっていたことを、今となって気づいたようでまずは大きく息を吸った。

「すぅーっ――ふぁあ……どうすればいいのかな……」

 完全に一樹の背中は見えなくなった。
 自分一人しか居ない演習場。
 そして、小さくそう呟いて、一華はゆっくりと歩き出した。
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