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第二章

第11話『驚きの結果』

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 最後の戦いとなる。
 一華と彩夏の戦いは、矛と盾。
 この対戦表の中では一番予想が付かないとさえいえるかもしれない。

「――始め!」
 
 僕の合図が出た瞬間、一華は盾の裏に体を全て覆い隠すように構える。
 もちろんそれは予想通り、問題はここからだ。

「じゃあ、遠慮なしにいかせてもらうねー!」

 そんなことは彩夏からしても予想通りだったようだ。
 だけど、回り込んだりせず正面衝突を選ぶ当たり、彩夏の真っ直ぐな性格が出ているのかもしれない。

「ファイアタァン」

 放出系炎魔法。
 杖から放出される楕円形の炎は、一直線に一華の盾へ飛んでいく。
 この結果に関しては簡単だ。
 魔法は盾に弾かれるか受け止められ、その効力を失う。

 ――まさに、予想通りとなった。

「まーだまだ、こんなんじゃ終われないよ! ――ファイアタァン、ファイアタァン!!」

 今度は連続攻撃。
 大体の放出系魔法は一撃自体の威力は致命傷にならない。
 これは現在のクラスで放たれる攻撃限定ではあり同格の相手に対して結果は同じ。格下相手であれば、勿論この結果は覆る。

 彩夏の攻撃に対し、一華の対処は変わらず盾を正面に構えたまま。
 個人的に常套手段と思うのは、盾を斜めに構え衝撃を逃がすというのが候補としてあるけど……まだまだ始まったばかり。
 ナイトを選択しているのだから、気迫というものが違うのだろう。
 真っ向勝負、これはかなり見ものになりそうだ。

「――わーお、マジかぁ。一華もやるねっ」
「……」

 彩夏の問い掛けに返答はなかった。
 それほど防御に徹し、集中力を研ぎ澄ませているのだろう。
 康太といい、一華といい、ナイトのガッツは目を見張るものがある。
 だけど正直な意見、これは異例というか前代未聞だ。
 康太でさえ、あの強敵目の前に攻撃の衝撃を受け流しながら立ち回っていた。
 でも、一華はその素振りさえ見せない。
 これはもしかしたら、一華はナイトとしての逸材とも言えるのではないだろうか。

「その気合に、私も本気を出しちゃうよ! こんな安全が確約されている状況じゃないと使えないけど――――」

 杖の先端に先ほどより小さいものの、三つの炎が形成されていく。
 
 資料でしか見たことはない。
 あれは、メイジの放出系魔法の中でも最大火力を有する二つ中の一つ――三方向同時攻撃。
 この攻撃は文字通り、右・左・中央と同時着弾する攻撃であり、的が大きい敵もしくは敵の数が多いときに使われる。
 だけど、彩夏が口にした通り、発動までその場から動くことができず、発動までの時間もまた長い。
 しかも発動時の衝撃が大きすぎて、放出時に踏ん張っていないと後方へ自身が飛ばされてしまう。
 もちろん、熟練度の問題で慣れれば駆けながら発動したり、放出時にジャンプしてなどの対処も可能。

「回避はできないと思うけど、動かないなら――やっちゃうよーっ!」

 彩夏の忠告虚しく、一華は微動だにせず言葉も返ってこない。
 なんという気合いだ。
 このまま真っ向勝負で耐えきるつもりらしい。
 まさに漢気が溢れている。

 出会って当初から気弱で口数が少ない少女だと思っていたけど、認識を改める必要がある。
 一華はこのパーティの中で一番メンタルが強い。

(あれ……足が震えて?)
 
 彩夏の準備も整い、後は放たれるのみ。
 期待に心弾ませる中、一つの声が響いた。

「その攻撃、やめ――」

 その声は叶だった。
 だけど、そんな一瞬で止められるはずもなく――攻撃は放たれた。

 三つの炎の球はほぼ直線で一華へと飛んでいく。
 彩夏は反動により下がってしまうも、直近で聞こえた叶の声に振り向いた。

「なに、どうし――」
「きゃぁああああ!」

 その声に全員の視線が一華へ集まるも、そこには目を疑うような光景があった。

 真っ向勝負で耐えきると誰もが予想していたはずが、一華は後方へ飛ばされて床に倒れ込んでいる。

「え、一華大丈夫⁉」

 彩夏の心配する声が飛ぶが、それと同時に叶が飛び出していった。

「一華大丈夫⁉」
「あ……うん、ごめんね。ちょっと頑張り過ぎちゃったみたい」
「無茶し過ぎよ!」
「えへへ、ごめんね」

 僕たちも立ち上がり、全員が近寄る。

「あの……ごめんなさい」
「はぁ~良かったー。大丈夫そうだね、私もつい力が入っちゃって……ごめんね!」
「ううん、全然大丈夫だよ」

 その顔色と声色に嘘はない。
 彩夏の手を借りて立ち上がる様を見て一安心。

 今回の対人戦で得られたものはかなり大きい。
 パーティのバランスも良いし、戦術の幅も広がる。

 帰ってから、忙しくなりそうだ。
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