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第三章
5違和感
しおりを挟むここ最近、エリーの様子がおかしかった。
表面上は普通だけど、何かを気にしているような気がした。
「エリー?」
「はいお嬢様」
「どうしたの?」
仕事は完璧であるけど、ふとした時に何かを気にしているようだった。
「具合でも悪いの?」
「そのようなことは…」
付き合いは長いのだから変化ぐらいは解る。
特に最近は同じ時間にうろちょろしている。
その時間は――。
「また手紙を気にしているの」
「何を…」
「昼と夕方…手紙が届く時間ね」
「お嬢様!」
顔色が変わったわね。
最近私宛の手紙を気にしているのが明白だった。
「私は貴女を信用している。だから言いたくないなら聞く気はない」
「私は…」
「でも、私が原因で貴女にそんな顔をさせているなら別よ。私宛の手紙に貴女を悩ませる何かがあるのね」
「お嬢様はなんでもお見通しなのですね」
エリーは私を買いかぶり過ぎだわ。
何でも解っていたら、こんな苦労はしないわ。
「すべてを解る人間はいないわ。私なんて何も解っていなかったんだもの」
解っていれば、こんなことにならなかった。
でも人は自分の価値観でしか考えらえないのだから。
「お許しください…お嬢様」
「エリー、貴方の笑顔を曇らせる原因を教えなさい」
悩んだ末にエリーはすべてを打ち明けてくれた。
ここ最近悩んでいたのは、私に宛てられた手紙だった。
「これは…」
箱に入っているのは手紙の束だった。
差出人はフォーカス家からだった。
詫びの手紙というわけではない。
手紙はロイドだけでなくフォーカス夫人からも来ている。
「当初は相手にしなかったのですが…最近は一日に何通も…中には」
明らかに脅迫に近い手紙だろう。
内容は見ていなかったが、偶然届いた届け物を見ざる得ない状況になったのだろう。
「婚約した女性にこのような」
「あの男は頭がおかしくなったのかしら?」
恋人に送るような封筒や、贈り物中には婚約者に送るような花までも。
ブリザードフラワーにして一輪の薔薇や百合の花。
その意味を考えるとぞっとする。
社交界で一輪の薔薇を、ブリザードフラワーにして送る意味は。
『君は永遠の僕のもの』
気持ち悪すぎて吐き気がする。
「お嬢様、大丈夫ですか」
「薬を…気持ち悪くて吐きそうだわ」
本当にありえない。
婚約者がいる身で私を――。
ありえないわ!
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